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ここでは、中小企業診断士の1次試験につき、筆者の経験から独学と予備校についてお話をします。
なお、筆者の受験時の状況(保有資格や経験値など)については、次の記事を見てもらったらと思います。
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– 目次 –
学習スタイルの選択
中小企業診断士の1次試験の学習スタイルには、大きく分けて次の4つの勉強スタイルがあります。
- 独学:3万円~5万円
→ 市販のテキストと問題集と過去問 - web予備校 + 過去問:7万円
→ スタディング + 市販問題集 - 通信講座:9万円
→ ユーキャン - 大手予備校:25~40万円
→ TAC or 大原 or LEC
その上で、筆者の経験上、学習スタイルは、次のフローチャートに沿って決めるのが良いと思っています。
ちなみに筆者は、2科目免除+得意科目1科目でしたが「スティディング+市販テキスト・過去問+中古ユーキャン」で行きました。
選択した細かな理由は私の診断士1次試験を見てもらうと良いですが、端的に言えば、次の2点に集約されます。
- スタディングは体系的に勉強ができる割に、他と比べて圧倒的に安かった
- 応用力は他のテキストや問題集で付ける必要があった
とは言え、今振り返ってみれば独学という選択もありだったなという思いもあります。
他方で、独学を友人に勧めても、結局「大手予備校」を選択したり、「スタディング」を選択したりしています。
そこで、次からはそれぞれの学習スタイルの特徴をご紹介したいと思います。
独学という選択
まずは「独学」からですが、はっきり言って、診断士の1次試験は独学で行けます。(言ってしまえば2次試験も独学で行けます。)
なぜなら、中小企業診断士の1次試験はマークシート形式の問題であり、内容が浅く、合格率もそこそこ高く、また、市販テキストと市販問題集の出来がそれなりに良いからです。
したがって、既に勉強をしたことがある科目(特に簿記)が2科目以上あるようであれば、独学の選択も考えて良いと思います。
1. 市販テキストと問題集
得意不得意、科目の別によって購入すべき市販テキストと問題集が若干変わりますが、基本は次のTACの「スピードテキスト」と「過去問集」で十分です。
スピード問題集は、時間に余裕のある人(だいたい本試験まで1年以上ある人)は購入した方が良いですが、余裕の無い人は手が回らないので購入しなくて良いと思います。
以下に、各科目のテキストや問題集について、もう少し細かく説明をしていきます。
(1) 経済学・経済政策
経済学・経済政策は、一般的な名称で言うと、ミクロ経済とマクロ経済のことです。この科目は、暗記というより、理解に重きを置いた勉強が必要です。
それには感覚的に内容を理解ができるテキストが向いているので、下記のテキストが良いでしょう。(もし下記のテキストを購入するなら、スピードテキストの購入は不要です。)
これをよく読んで理解ができていれば、本試験で70点は固く、年によっては80点以上も狙えるでしょう。
筆者も不動産鑑定士試験でお世話になったものであり、公認会計士試験、不動産鑑定士試験、公務員試験の受験生に絶賛されている経済学入門の最強テキストです。
(2) 財務・会計
財務・会計を大別すれば、「簿記」と「ファイナンス・投資理論」の2つです。出題の割合としては4:6くらいでしょう。
まず、ファイナンス理論・投資理論は、範囲が狭く、過去問と同じ内容の問題が繰り返し問われる傾向にあるため、極論を言えば、過去問だけでも学習はできます。
ですが、スピードテキストを利用して学習をした方が、理解に繋がり学習効率が高いでしょう。
一方、簿記は非常に範囲が広いため、5年分の過去問を解いただけでは、本試験で善戦できるレベルにはなりません。
基本的に、1次試験の問題は浅いですが、範囲は広く、問題によっては簿記1級レベルの知識も求められています。そのため、未学習者が簿記の完全攻略を目指すのは得策ではありません。
したがって、ある程度割り切って「スピード問題集」と次の問題集を解き、簿記はコンスタントに5割~6割の得点が取れるようにし、ファイナンス・投資理論で得点を稼ぎ、全体で70点以上を目指すと言うのが現実的な目標になるでしょう。
なお、日商簿記のテキストや問題集は、深い学習に適したものであり、広く、浅い知識が必要とされる診断士試験とは相性が良くありません。
一緒に勉強をしても良いですが、簿記初学者が簿記2級まで勉強すると、だいたい2~3ヵ月はかかりますから、日商簿記の同時並行は、学習期間が1年半程度ある人がするものだとお伝えしておきます。
(3) 企業経営理論・運営管理・経営法務
企業経営理論と運営管理は、中小企業診断士特融の科目であり、日常のビジネスや店舗、工場などで行われている内容をアカデミック化した内容の学問です。
経営学のMBA取得者などは得意になる科目ではあります。
これらの科目の特徴は、簿記論のように、たくさんの問題を解いたからと言って実力があがるわけではないという点です。むしろ、毎年同じような理論構築のもと、出し方を変えた問題が出題されるため、1冊のテキストと問題集でじっくりと学習をした方が結果的に実力の向上へと繋がります。
また経営法務は、会社法と知的財産権法をメインとした法律科目で、範囲はかなり広いものの、類似論点が繰り返し問われているので、過去問で出題された内容やその周辺知識を補完するだけで十分戦えます。
したがって、この3科目については「スピードテキスト」と「過去問」で十分事足ります。
(4) 経営情報システム
経営情報システムも財務・会計と同様に、広く、浅い内容の問題が出題されます。
財務・会計と違うのは、トレンドを意識した問題が出題されるという点です。経営情報システムでは、過去問が繰り返し問われるというより、近時のITパスポート試験で出題されるような問題が出題されています。
したがって、テキストはITパスポートのテキストを利用し、余裕があれば、ITパスポートの問題集を解くのが良いでしょう。(経済学と同様に、もし下記のテキストを購入するなら、スピードテキストの購入は不要です。)
なお、経営情報システムの問題は毎年マニアックな問題が出題されるため、IT知識に長けている人やプログラミングスキルのある人であっても、90点付近を取るのはなかなか難しいと思います。
(5) 中小企業経営・中小企業政策
中小企業診断士試験では、過去のテキストや問題集が使い回せます。
経営情報システムは最近のトレンドが重要だったりするので、直近2~3年までが使えるレベルですが、それ以外の科目はたとえ10年前のものであっても結構使えたりします。
実際に、財務・会計、経済学・経済政策、企業経営理論、運営管理の4科目は、5年前のテキストと見比べてもほとんど変わりありません。
しかしながら、診断士試験で唯一、最新年度のテキストと問題集を購入しなければならないのが、この「中小企業経営・中小企業政策」です。
理由は、中小企業経営で出題される内容が前年度の中小企業白書から出題されるためです。(例えば2019年の問題は、2018年度版の中小企業白書の内容から出題されています。)
また、中小企業政策は、中小企業の助成制度に関する問題がメインですが、結構これが1~2年という単位で制度改定されるため、過年度のテキストが使いづらいのです。
したがって、この科目については最新のテキストと問題集が必須になります。
とすれば、過去問は意味ないのでは?と思うかもしれませんが、問題の出題傾向を把握することも重要なので、過去問を購入する意義は十分にあります。
出版社(予備校)について
市販テキストと問題集は、TAC一択で大丈夫です。
理由は、TACのテキストの内容が一番理論的かつ説明が詳細だからです。
辞書的に使う必要のあるテキストは、少し細かすぎるというレベルが良いので、TAC一択で間違いありません。
2. 独学に向いている人・向いていない人
(1) 向いている人
独学に向いている人は、「既習科目」又は「免除科目」が複数ある人です。
基本的に、他の高難易度試験と比較して、診断士の1次試験のレベルは低いです。税理士試験や不動産鑑定士試験を受けた筆者からすれば、完成度がかなり低いと自分では思っているのに、普通に合格できてしまいます。
それは合格率が20%前後と高いことと、得意科目でアドバンテージを取れるという診断士1次試験の特殊性があるからです。
したがって、会計士や税理士、弁護士、不動産鑑定士などのように既習科目や免除科目の多い人は独学に向いていると思います。
(2) 向いていない人
向いていない人の代表格は「学生」です。
診断士試験では、社会人経験が5年もあれば、当たり前の内容も結構本試験で出題されます。経営法務や財務・会計をはじめとして、全ての科目に対して社会人は耐性があります。
一方、学生は社会人経験が無いので、企業経営理論や経営法務、運営管理などを1人で理解するのはなかなか困難です。(というかほぼ不可能です。)
web予備校という選択
web予備校には色々ありますが、値段と使い勝手を考えれば「スタディング一択」で間違いありません。
かくいう私もスタディング受講生ですし、受験会場にもスタディング受講生を多く見かけました。
1. 学習教材・学習の内容
スタディングは、web予備校というだけあって、テキスト、講義、問題が全てwebで完結しています。
例えば一番メジャーな「1次2次合格コース」では、次の講義と問題が内包されています。
- 講義
- 1次基礎講座:動画による基礎講義
- 実践フォローアップ講座:動画による応用講義
- 問題
- スマート問題集:1次基礎講座をベースとした問題集
- 過去問セレクト講座:過去問の中からいくつか問題をピックアップした問題集
- 教材
- テキスト:PDF形式のテキスト
- 学習マップ:キーワードを線で結んだもの(いわゆるマインドマップ)
2. スタディングの特徴
講義は「1次基礎講座」と「実践フォローアップ講座」の2つから構成されていますが、はっきり言って微妙です。
なぜ微妙かと言えば、講義は黒板などを使って講師が説明するようなものではなく、下記のような学習マップを投影しながら、講師がテキストの内容を朗読するというような講義内容のため、講義を受けている感覚が薄く、集中力が途切れやすいためです。(正直、筆者は講義を聴講したことはほとんどありません。)
出典:スタディング
また、内容も物足りず、この講義で得る知識だけでは、本試験では戦えません。
スタディング受講生は十中八九、TACの過去問集を購入することになります。
さらに、個人的にスタディングの最大の欠点であると思うのが「テキストの作り込みの未熟さ」です。
テキストはほとんど文字だけで構成されているため、とにかくイメージがし辛く、説明も不十分で、理論的な説明も少ないので、正直、読んでいてイライラします。(誤字や間違いもそれなりにあります。)
スタディングはこの点を改善する必要があると、個人的には思います。なにせ、予備校の一番のコアな部分ですから。
また、オプションでこの「テキスト」を紙媒体にしたものを購入できますが、それを購入するくらいなら、TACの「スピードテキスト」を購入した方が100倍良いです。
加えて、「学習マップ」もやたらと推していますが、不要です。この程度の内容はテキストと問題を行き来していれば自然と身に付きます。
そんなスタディングを勧める理由?
上記の通り、スタディングは欠点が多いのに、筆者がなぜスタディングを勧めるのか?その理由は次の4つです。
- 7科目を一通り、体系的に学習することができる
- 受講料が破格的に安い
- 受講生サイトが使いやすい
- 勉強仲間機能(受講生のコミュニティサイト)が悪くない
この4つがスタディングの売りであり、全てであると言って良いでしょう。特に1つ目がとても重要です。
中小企業診断士試験の勉強を始めると、範囲の広さに驚きます。論点の深さはたいしたことがないのですが、範囲がとにかく広いのです。
一方で、前述している通り、診断士試験では深い知識よりも、広い知識が必要です。
したがって、全科目の全カリキュラムをざっと学び、細かな論点は過去問を解きながら学んでいく、というのが1次試験対策のセオリーなのです。
そして、それが完全マッチしているのがスタディングというわけです。
確かに、TACの「スピードテキスト」やユーキャンの「テキスト」は良くできているのですが、初学にとってはボリュームがあり過ぎます。そのため、1日2~3時間程度の勉強をしたとしても、1周するのに10ヶ月前後かかり非効率で、結果的に合格しにくくなります。
したがって、短期合格にはスタディングが最適ということなのです。
2. スタディングに向いている人・向いていない人
(1) 向いている人
基本的にスタディングに向いている人は「社会人」です。
社会人は勉強ができる時間的制約が大きいため、効率的な勉強が求められます。また、社会人であれば、未熟なスタディングのテキストや講義であっても何となく理解ができます。
したがって、社会人がとっかかりにスタディングを選択するのは良い選択です。
(2) 向いていない人
向いていない人の代表格は「学生」です。
社会人経験の無い知識不足な学生が社会人に勝てるのは「勉強時間の多さ」だけです。
この勉強時間の優位性を確保するためには、良質なテキストや講義で学習を進めると同時に、講師に質問をバンバンして理解を深めていくことが重要です。
これには、大手予備校の教室講座が一番良く、逆にスタディングは全く向いていません。
通信講座という選択
1. ユーキャンの特徴
3つ目の紹介はユーキャンですが、ユーキャンの中小企業診断士の通信講座はお世辞に抜きで良いです。ある意味コスパ最強でしょう。
10万円弱の受講料の割に、テキストがかなり充実していて、質問のフォローアップもしっかりしていて、2次対策の添削付きと、普通に良いです。
テキストの転売について
ユーキャンのテキストは人気があるため、状態が良く、出版年度が新しいもの(目安は1~2年内)であれば、中古サイトで比較的高く転売できます。
5年以上前のもので5千円前後、最近のものであれば1万円~2万円で転売されています。
2. ユーキャンに向いている人・向いていない人
(1) 向いてる人
ユーキャンに向いている人は「意志の強い人」です。
基本的に、ユーキャンのテキストは予備校・市販の中でもNo.1に作りが良く、間違いなく良書です。
ただし、ボリュームがあり過ぎる面もあるので、その良質なテキストを使いきれる「意志の強い人」以外は、お金払って終わってしまう可能性が高いでしょう。
(2) 向いていない人
ユーキャンは、大手予備校のような「受験生仲間」やスタディングでいう「コミュニティサイト」が無いため、感覚的には独学に近い状態であり、モチベーション維持が難しいです。
したがって「意志の弱い人」は基本的に向いていません。
大手予備校という選択
1. 大手予備校を選ぶ理由
私なんかはお金があまりなかったので、受講料が30万弱という時点で大手予備校は選択肢にすら挙がりませんでした。
しかしながら、周りの友人で一番多いのが、この「大手予備校」です。選んだ理由で多いのが次の3点です。
- 他の資格で受講経験があるで、割引が効く
- 講師に教えてもらう方が安心だし、分かりやすい
- 1人だとモチベーションを維持できない ← かなり重要に考えている人が多い
2. 予備校の種類
中小企業診断士試験を取り扱う予備校は結構多いです。色々な予備校がありますが、大手予備校を選択するのならば、個人的にはTAC一択で間違いないと思います。
予備校 | 講座 | 料金 | 教育給付金 | 受講形態 | 予備校の特徴 |
---|---|---|---|---|---|
KEC | 1次・2次ストレート合格パーフェクトコース | 368,000円 | 〇 | 通学 | 中小企業診断士に特化した予備校 |
クレアール | 1次2次セパレート全力投球モデル冬コース | 280,000円 | – | Web | 公認会計士試験に強い予備校 |
LEC | 1次2次プレミアム1年合格コース | 270,000円 | – | Web | 弁護士や司法書士など法律系に強い予備校。 |
資格の大原 | 1次直前対策・2次対策セットコース | 242,400円 | – | Web | 大手の予備校。手厚いサービスと充実したテキストが売り。 |
TAC | 1.5年本科生 | 278,400円 | 〇 | Web | 公認会計士や税理士など多様な資格を取り扱う業界最大手の予備校。合格実績も高い。 |
受講料は定価・税込で表示をしていますが、各種の割引(例えば他の資格を受講したことがある人に対する割引など)は考慮していません。
また、受講形態(通学・DVD・WEBなど)によっても受講料が変わるため、実際にはもっと安くなると思います。
3. 大手予備校の特徴
大手予備校の特徴は、総合力がNo.1ということです。
特に「講義後の講師への質問」や「自習室の利用」などは、大手予備校生しか享受できないメリットでしょう。
学生や社会人経験の少ない人は、企業経営理論や運営管理、経営法務のイメージを掴むのは難しいでしょうし、ITに疎い人の場合は、AjaxとかPHPとか言われたらチンプンカンプン。SQL文なんて呪文のように見えるでしょう。
そんな時に強い味方が「講師」であったり、「受講生仲間」です。分からないことも聴けて、モチベーションも維持できる。
学生などは積極的に大手予備校を検討すべきと思います。
4. TACを推す理由
TACを推すのは、主に次の2点が優れていると思うからです。
- テキストの内容が理論的
- 一般教養科目(経済学、財務・会計、経営法務)が強い
診断士の1次試験の突破のカギは、得点が取れる科目(経済、財務会計)で点を伸ばし、難しい科目(経営法務、企業経営理論、中小企業)で足切りを受けない、という点にあります。
この点、経済学は、TACは公認会計士試験や不動産鑑定士試験で確固たる実績があり、財務会計も同じく公認会計士試験や税理士試験で実績があります。
そのため、TACは一般教養科目につき、他の予備校と比較し一日の長があり、したがって選択をする価値があると言えるのです。
5. 大手予備校に向いている人・向いていない人
(1) 向いている人
大手予備校に向いている人は「お金に余裕のある人」または「学生」です。
はっきり言って、大手予備校は受講料以外欠点は無いので、お金に余裕があるなら大手予備校一択で間違いありません。
また、ビジネスの経験が無く、かつ、時間的余裕がある学生は大手予備校向きです。半年くらい頑張ってアルバイトして30万円くらい稼ぎ、1年半勉強に没頭しましょう。
(2) 向いていない人
基本的に向いていない人はないです。お金に余裕が無ければ選択肢に挙がらないというだけです。
最後に
基本的に、学習スタイルの良し悪しは人によります。独学向きな人もいれば、大手予備校向きな人もいます。
重要なのは、自分に合った学習スタイルを選択するということです。それは安ければ良いというものではありません。
独学を2周したら、ウェブ予備校1回と同じです。3周も、4周もするくらいなら大手予備校を1度利用し、その後独学という方が良いでしょう。
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