中小企業診断士の難易度と合格率

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ここでは、中小企業診断士の試験の難易度や合格率、科目免除の是非などをお話します。

なお、この記事にあるグラフのデータは全て下記のサイトのデータに基づきます。

中小企業診断士試験|中小企業診断協会HP

– 目次 –

  1. 試験の難易度
  2. 合格基準
  3. 合格率
  4. 科目別難易度
  5. 科目免除の是非

試験の難易度

超難 激難 やや難 普通

中小企業診断士試験は経済産業省が管轄する国家試験で、次の日程で年に1度3段階式の試験により実施されています。

  • 1次-択一式・・・8月初旬
  • 2次-筆記式・・・10月中旬
  • 2次-口述式・・・12月中旬

1次試験では7科目が択一式で問われ、2次試験では4科目が論述式で問われます。

この論述式試験の合格者に対し、口述試験が実施されますが、口述試験はほぼ100%の合格率であるため、実質的には2段階式の試験となっています。

肝心の試験の難易度ですが、資格くらぶの中の分類としては、に分類されます(理由は下記)

最終合格率 約5%と低い
試験科目 7科目と多く、また、各科目の範囲が広く、分かりにくい
試験形式 マークシート式+筆記式口述式の3段階形式
試験実施回数 年に1度きり
勉強時間 1,000時間~1,500時間とそこまで長くない

同じような難易度の試験には「社労士」や「行政書士」、「ITストラテジスト」などがあります。

最近はAIに代替されにくい仕事・資格として人気の資格になっています。

診断士試験の合格基準

● 1次試験の合格基準

1次試験では、1次試験の合否の判定と科目合格者の合否の判定が行われます。

1次試験の合否判定

中小企業診断士の1次試験は、7科目の総得点が60%以上であり、かつ、1科目でも40%に満たない科目がないことが、合格基準となります。

したがって、1次試験の突破のカギは、得意科目で得点を伸ばし、不得意科目は足切りを受けない程度に頑張るということになります。

なお、この「1次試験の合格の権利」は翌年1年間のみ繰り越すことができます。

つまり、今年1次試験に合格をした人は、たとえ今年の2次試験に不合格であったとしても、翌年は1次試験をパスすることができ、2次試験から受験をすることができます。

ただし、繰越可能期間1年間なので、翌年に2次試験を受けなくても、翌々年は免除申請をすることができないので注意しましょう。

科目合格者の合否判定

先の通り、1次試験では科目合格者の判定も行われます。この科目合格者の判定は、1次試験に合格できなかった人に対して行われます。

具体的には、1次試験不合格者の受験した科目の中で6割以上の得点をした科目が科目合格となります。

科目合格をすると、次年度から2年間、科目免除を受けることができる権利を取得します。

科目免除者・科目合格者の取り扱い

中小企業診断士試験の1次試験では、科目免除制度があります。

例えば、税理士情報処理技術者などの一部の国家資格者や前年度以前の科目合格者については、一部の科目につき科目免除の申請をすることができます。(任意)

なお、この科目免除の申請をした場合には、その科目については60%の得点をしたものとして1次試験の合否の判定が行われます。

2種類の合格方法

上記からも分かるかもしれませんが、1次試験合格には2種類の合格方法があることになります。(下記)

  1. 一度の1次試験で合格をする方法
  2. ② 科目合格(+科目免除)積み重ねて合格をする方法

ただし、毎年、いずれか1~3科目の合格率が5%前後非常に低いことから、科目合格の積み重ねは全科目1発合格より難易度が高いと思います。

この辺は、この記事の一番下の方で書いている「科目合格の是非」の箇所を呼んでもらうと分かると思います。

● 2次試験の合格基準

中小企業診断士試験の2次試験は「筆記試験」と「口述試験」から構成されています。

筆記試験の合格基準

筆記試験の合格基準は、基本的には1次試験と同様です。

すなわち、4科目総得点60%以上であり、かつ、そのうち1科目でも40%未満の科目がない場合に、筆記試験の合格となります。

なお、筆記試験については、合格の繰越し制度はありませんので注意しましょう。

口述試験の合格基準

口述試験の合格基準は「採点官における評定が60%以上」で合格となります。

次の合格率を見てもらえば分かりますが、ほぼ100%合格するため、実質的に筆記試験が最後の試験と言えます。

合格率の推移

● 1次試験について

全科目合格者の合格率の推移

次のグラフは1次試験の全科目合格者直近10年間の合格率の推移になります。

直近10年間の平均合格率は約21.4%となっていますが、年によって上下5%前後のブレがあります。

ちなみに、3年に1度くらいの間隔で合格率が下がる傾向があるため、2019年は厳しい年になる可能性があります。

全科目合格者の年齢別合格率の推移

次のグラフは、1次試験の全科目合格者の年齢別の合格率の推移です。

※ 合格率 = 試験合格者数 ÷ 申込者数

年齢は30代~50代の合格率が高く、次いで20代60代と続きます。なお、10代と70代の合格率は他の年代と比べると特に低くなっています。

中小企業診断士試験では、社会人生活を通じて学んだ知識で解ける問題も多いため、現役の社会人(30~50代)の合格率が高くなっているように思います。

科目合格者の合格率の推移

次の表は、各科目の科目合格者直近10年間の合格率の推移をマトリックス(表)にしたものになります。

年度 経済 財務・会計 経営理論 運営管理 経営法務 システム 中小企業
H30年
2018年
26.4% 7.3% 7.1% 25.8% 5.1% 22.9% 23.0%
H29年
2017年
23.4% 25.7% 9.0% 3.1% 8.4% 26.6% 10.9%
H28年
2016年
29.6% 21.6% 29.6% 11.8% 6.3% 8.5% 12.5%
H27年
2015年
15.5% 36.9% 16.7% 20.5% 11.4% 6.4% 12.2%
H26年
2014年
19.4% 6.1% 13.4% 17.8% 10.4% 15.0% 31.1%
H25年
2013年
2.1% 16.6% 6.8% 10.5% 21.1% 51.8% 16.9%
H24年
2012年
24.8% 3.8% 12.5% 19.4% 18.1% 25.8% 17.4%
H23年
2011年
8.6% 10.7% 13.1% 13.9% 23.3% 36.1% 5.1%
H22年
2010年
6.1% 11.3% 19.9% 18.2% 12.7% 25.8% 24.2%
H21年
2009年
38.9% 19.5% 18.8% 29.9% 10.5% 3.8% 2.9%

上記の表から、中小企業診断士試験の1次試験には、2つの傾向があることが分かります。

1つ目は、中小企業診断士固有の科目である企業経営理論運営管理経営法務中小企業政策については、毎年の合格率が低いという傾向があります。

2つ目は、一般教養科目である経済学・経済政策財務・会計経営情報システムについては、毎年どれかが難しく、逆にどれかが簡単という傾向があります。

中小企業診断士試験では、この傾向・特徴を理解した上で、試験対策を行うことが重要になってきます。

● 2次試験について

2次試験の筆記試験と口述試験の直近10年間の合格率の推移は次の通りです。

筆記試験の合格率の推移

合格率 = 口述試験を受験する資格を得た者の数 ÷ 受験者数

筆記試験の直近10年間の平均合格率は約20.2%となっています。

2012年と2014年で合格率が25%前後と例年に比べて高い水準にありましたが、基本的には20%前後の合格率と考えて良いと思います。

筆記試験の年齢別合格率の推移

次のグラフは、直近6年間の筆記試験の年齢別の合格率の推移です。

合格率 = 最終合格者数 ÷ 受験者数

グラフを見ると分かると思いますが、2次試験では、若い人ほど合格しやすい傾向にあります。

若い人ほど時間に余裕があり、試験対策ができると思いますので、2次試験では経験よりも、勉強量が重要ということが言えるでしょう。

口述試験の合格率の推移

合格率 = 合格者数 ÷ 口述試験を受験する資格を得た者の数

口述試験は、実質的に100%の合格率です。よほどのこと(例えば欠席)が無い限り合格をします。

各科目の難易度

(1) 経済学・経済政策

直近10年間の平均合格率:19.5%
科目合格率の推移

平均合格率が19.5%と、経営情報システムに次ぐ合格率の高い科目です。

2013年に6.1%と非常に低い合格率の年もありますが、合格率が20%を超える年も多く、年によっては合格率が30%を超える年もあり、積極的に勉強をすべき科目です。

科目難易度
超難 激難 やや難 普通

経済学・経済政策の単一科目としての難易度は「普通」です。学習量や学習難易度を考えると、簿記3級と2級の間くらいの難易度だと思います。

内容はミクロとマクロの経済学の問題が中心ですが、基本的なことを理解していれば、ほとんどの年で7割から8割くらいは取れる科目です。

なお、次の人にとっては難易度は「」になると思います。

  • 行政事務系の公務員試験の経験者
  • 公認会計士試験で経済学を学習した人
  • 不動産鑑定士試験で経済学を学習した人
  • 経済学部出身者

(2) 財務・会計

直近10年間の平均合格率:16.0%
科目合格率の推移

平均合格率が16.0%と、一般教養科目(経済・会計・情報システム)の中では一番合格率の低い科目となっています。

ここ最近は合格率が20%を超える高い年もありましたが、基本的には合格率が15%未満の年が多いです。

科目難易度
超難 激難 やや難 普通

財務・会計の単一科目としての難易度は「普通」です。学習量や学習難易度を考えると、簿記2級よりやや難しいくらいの難易度だと思います。

内容は商業簿記、工業簿記、法人税法、財務分析から構成されていて、幅広い会計知識が求められます。ただし、個々の論点自体の難易度は低いため、範囲は広いですが基礎的なことを理解していれば高得点が狙えます。

なお、次の人にとっては難易度は「」になると思います。

  • 簿記2級合格者
  • 公認会計士試験の経験者
  • 税理士試験の経験者

(3) 企業経営理論

直近10年間の平均合格率:14.7%
科目合格率の推移

平均合格率が14.7%と、経営法務に次ぐ合格率の低い科目です。

2016年に合格率29.6%と異常に高い年がありましたが、基本的には合格率は15%未満と低い年が多いです。

3年に1度くらいのペースで合格率が10%を下回るため、この科目だけ残して全科目合格を目指すのは難しいと言えます。

科目難易度
超難 激難 やや難 普通

企業経営理論の単一科目としての難易度は「普通」です。

企業経営理論は、理論の内容自体はそれなりに分かりやすいものだと思いますが、試験では「何を言ってるの?」というような問題が多いため、問題の読み取りが難しい科目だと思います。

なお、この科目は社会人経験が活きる科目だと思いますので、社会人にとっては易よりの普通だと思いますが、学生にとっては初耳の内容が多いと思いますので、やや難よりの普通だと思います。

企業経営理論については、下記の人は若干だとは思いますが優位性があります。

  • 社労士試験の合格者
  • 経営学部出身

(4) 運営管理

直近10年間の平均合格率:17.1%
科目合格率の推移

平均合格率が17.1%と、中小企業診断士特有の科目の中では一番合格率の高い科目となっています。

この科目は合格率が15%~20%で比較的安定をしていますが、たまに大きく合格率がブレます。

科目難易度
超難 激難 やや難 普通

運営管理の単一科目としての難易度は学習量や学習難易度を考えると、「普通」です。

内容はマーチャンダイジングに関する問題が多く、日常的に関わりのある内容(例えば商品の陳列方法など)が対象となる学習科目のため、学生であっても、社会人であっても比較的馴染みを持てる科目だと思います。

なお、運営管理については、「販売士2級」以上あると、優位性を感じると思います。

(5) 経営法務

直近10年間の平均合格率:12.7%
科目合格率の推移

平均合格率が12.7%と、全7科目中、一番合格率の低い科目であり、直近3回の合格率は10%を超えていません。

(6) 経営情報システム

直近10年間の平均合格率:22.3%
科目合格率の推移

平均合格率が22.3%と、全7科目の中で一番合格率の高い科目となっています。

ただし、合格率が10%を下回る年も多いため、当たり年と外れ年がしっかりと別れる科目と言えます。

科目難易度
超難 激難 やや難 普通

経営情報システムの単一科目としての難易度は「普通」です。

ITに詳しい人の場合は、学習もスムーズにできるでしょうし、内容も理解しやすいでしょうから、易に近い難易度に感じると思います。

一方、IT嫌いの人にとっては、横文字がたくさん並ぶ分かりにくい科目だと思います。

なお、経営情報システムについては、情報処理技術者試験の合格者にとっては高得点が狙える科目です。

(7) 中小企業経営・中小企業政策

直近10年間の平均合格率:15.6%
科目合格率の推移

直近10年間の平均合格率は15.6%と低いですが、過去を振り返ると、高い年では合格率が20%を超えてきて、低いときは5%を下回るなど、年によって難易度が大きく変化する科目です。

科目免除の是非

前述の通り、中小企業診断士試験の1次試験では、一部の国家資格者(または合格者)は、科目免除を受けることができます。

したがって、科目免除を受けるべきか、受けないべきかに悩むと思います。

個人的な見解になりますが、上記の各科目の難易度、1次試験の合格基準などを考えると、筆者は「基本的に科目免除はしない方が良い」と考えています。

なぜなら、科目免除を受けてしまうと、せっかくの得点源となるその科目が、「一律60点として換算」されてしまい、一発合格の可能性を低める結果になると考えているからです。

もちろん、年によっては、難易度の高い問題が出題され、60点すら取れないという可能性もあります。

しかしながら、そもそも科目免除を受けることができるということは、「その科目について一定以上の知識がある」ということですから、その科目に対しての勉強量は少なくて済みます。

つまり、科目免除者が科目免除を受けないとしても、負担は少なくて済むはずですし、多くの場合、得点源になる科目に成長します

したがって、科目免除の申請をすべきではないというのが、色々考えた末、最終的に私がたどり着いた結論です。

特に、税理士や会計士の方にとっての「財務・会計」は免除申請をしない方が良いと思います。

なぜなら、財務・会計では、簿記や財務諸表論、原価計算以外にも、財務分析ファイナンス資本コストの考え方などを学習しますが、これらの内容は、会計士試験や税理士試験では学びません。

また、この財務・会計の知識は2次試験対策としても重要ですので、1次試験から学習をしておくのがベターです。

ただし、弁護士の方が免除申請ができる「経営法務」は例外で、免除をした方が良いと考えています。

理由は2つあります。1つは2次試験で出題されないため。もう1つは、経営法務の問題は「知識問題」であり、弁護士の方が受験をした「司法試験」とは毛色が異なるため、必ずしも得点源になるとは限らないからです。

さいごに

中小企業診断士試験は、最終合格率は5%程度と低いですが、1次試験と2次試験の合格率がともに20%前後と、他の独占業有のある国家資格の試験と比較しても、合格率は高く、また、各科目の試験問題の難易度もそこまで高くないため、比較的合格しやすい試験と言えます。

一方、中小企業診断士は近年ではAIに代替されにくい資格・職業として脚光を浴びており、独占業務は無いものの、収入が比較的安定をしていて、高収入も期待でき、かつ、独立もできる夢のような資格です。(もちろん、誰でも簡単に高収入が手に入るわけではありません。)

私も長い間資格業界に身を置き、色々な国家資格を取得し、また、周りにもたくさんの国家資格者がいますが、中小企業診断士のコストパフォーマンスは、明らかに群を抜いています(むしろ、なぜこの資格に今まで見向きもしなかったのか?と思うほどです。)

もちろん、今後も資格取得者が増えるでしょうし、一方で、少子高齢化により中小企業の数が減るでしょうから、中小企業診断士の仕事も他の侍業と同じく、長期的には徐々に減っていくと思います。

しかしながら、差別化をすることが難しい他の士業と比べると「人による差別化」が可能な業務・業界だと思いますので、経営力、企画力、分析力、コミュニケーション能力などのスキルの高い人は、まだまだ成功する業界ではないかと思います。

概要 難易度 独学と予備校 勉強方法 報酬・年収