不動産鑑定士の魅力と将来性

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ここでは不動産鑑定士の魅力と将来性についてお話をします。最後には今注目の「AI」との関わりについてもご紹介したいと思います。

目次

不動産鑑定士の魅力

1. 仕事の専門性とヤリガイ

不動産鑑定士は不動産系の資格の中では最高峰の資格です。仕事内容も専門性が高く、責任感が必要とされる仕事です。

場所によっては「○○先生」と呼ばれることもあり、他の業界よりも「自分がプロフェッショナルである」ということを強く意識するかもしれません。

また、仕事はデスクワーク中心ですが、現地調査をしに全国各地、果ては海外まで行くことがあります。色々な地域の「町並み」や「歴史的建造物」を見るのは仕事と同時に観光をしているようで、仕事の中にも楽しみがあります。

デスクワークと出張、顧客への専門家としての対応など、仕事にメリハリがあり、責任感もあるため、好きな人にとっては本当に楽しく、ヤリガイのある仕事になります。

2. 独立しやすく、年収UPで転職も可能

資格業として独立をした場合は、たいていゼロからのスタートとなります。もちろん、前職から引き継ぐ顧客がいるという人もいますが、それだけでは満足な収入にはならないことも多く、またやり過ぎは人として問題でしょう。

しかしながら不動産鑑定士の場合は、独立した場合も国や地方自治体から仕事の依頼があるため、他の資格と比べて独立後も安定した収入が期待できます

所属する不動産鑑定士協会にもよりますが、最低でも年収200万円くらいにはどう転んでもなるでしょう。(絶対に入ってくるお金があるというのは開業当初は本当に助かるものです。)

また、独立する以外にも、最近では不動産鑑定士事務所に数年間働いた後に、他の業界・企業に転職する人も多く、たいていの場合、年収をUPさせて転職を成功させています

転職後に年収1千万円オーバーという例もたくさんありますし、仮に同程度の年収であったとしても、福利厚生が良くなることが多いでしょう。

3. ダブルライセンスによる相乗効果

不動産鑑定士とのダブルライセンスとして相乗効果を発揮する資格には、税理士(公認会計士)があります。

税理士の大きな収入源の1つに「相続税対策業務」がありますが、この相続税対策業務と蜜月の関係にあるのが「不動産鑑定評価」になります。

信義則・利益相反などの関係から税理士自身が不動産鑑定評価を行うことはありませんが、不動産鑑定評価の知識がある場合には有効なコンサルティングができることが多いでしょう。

4. 女性の不動産鑑定士

女性の社会進出

以前は女性の不動産鑑定士はとても少なかったのですが、最近は少しずつ増えてきています。

また女性の社会進出を後押しするためなのか、女性は男性よりも、独立後の初動がスムーズに行くという話を色々なところで聞きます。

最終的にはその人の能力、努力次第のところはありますが、男女による差はほとんどない業界と言って良いと思います。

不動産鑑定士の将来性

1. 市場規模からみた将来性

不動産鑑定士の登録者数は平成29年1月1日時点において、全国で3,500人弱しかおらず、一般の人は資格の存在すら知らないことが多いのが現状です。

一方で、これほどまでに資格保持者が少ないにも関わらず、リーマンショック後の不況時には、100人程度の試験合格者すら満足に就職先がありませんでした。

つまり、それほどまでに不動産鑑定業界というものは、もともとの市場規模が小さいのです。

そのため、政治力や交渉力、発言力により仕事が増える(または維持される)ことは少なく、現に国や地方公共団体から発注される「公的評価」の件数や報酬額は年々減少傾向にあります。

しかしながら、これを逆に考えれば、新しい市場ができた場合には、1つのパイを少ない人数で分け合うことができるので、そのような状況に直面した場合は猛烈に儲かるような資格とも言えます。

証券化評価業務や相続業務などはその典型です。

2. 将来的な高収入

不動産鑑定士は比較的独立しやすい資格ですが、他の専門資格(弁護士や会計士、税理士)などと比べて超高収入を得るのが非常に困難です。そのため、年収数千万円を超えるような高収入は期待できません

また、資格業界全体の大きな流れでもありますが、事務所の大規模化が進んでいます。

高額な報酬の案件は大規模な事務所に発注されることがほとんどで、個人事務所には低額報酬の案件しか配分されていないような現状です。

そのため、指をくわえていても年収1千万円オーバーという時代は終わりつつあります。

一方で相続案件という、今までにないほど大きな市場もあります。

経営力、営業力、交渉力、コネクションなどの本来的な能力のある人にとっては、大幅な収益増加につなげることができる状況にもあり、実際にそういう人が何人かいます。

不動産鑑定士とAI(人工知能)

最近は新聞やWebで、AIによって2030年までに現在の2~3割の人が仕事を奪われるといった記事をよく目にします。

不動産鑑定士も例外ではなく、ある研究機関の発表では、不動産鑑定士の仕事の約8割はAIに取って代わられると言います。

では、実際のところどうなのか?と言われると、個人的な感想になりますが、10~20年という単位では、まずなくなることは無いと思っています。

以下に理由を列挙します。

1. 不動産情報をデータベース化するのは不可能

一般的に、不動産市場の流通性(売り買いがされるスピード)は低く、売買が完了するまでには通常の商品よりも長い時間がかかります。

つまり正常な価格で売買が成立するまでには、それなりの時間がかかるのが普通なのです。早ければ1週間以内に買い手がつくこともあれば、遅いと1年以上市場に滞留することもあります。

そんな折、例えば、売主が「お金に困っているため早く売りたい」といった事情があるとします。(これを不動産業界では「売り急ぎ」と言います。)

不動産取引の情報は隠されている

このような場合には、売主は一般的な市場価格より少し安い価格で売りに出すことがよくあります。価格を下げることで需要者が増えるため、早く売りさばける可能性が高くなるからです。

ですが、このような事情は通常ほとんど開示されません。

なぜなら、金銭に絡む話は、人はその情報を開示したがらないからです。

このような特殊な事情はレアケースかもしれませんが、不動産情報というのはとにかく情報化するのが難しく、また、プライバシーの情報も多いため、情報が手に入りにくいものなのです。

そもそも論になりますが、不動産情報というのは、多くの人がインターネット上で目にする「最寄り駅からの距離」や「築年数」などの数値として測定をすることが可能定量的な情報以外にも、「地域の環境や治安」「隣人や近隣住民のタイプ」「感情や動機」など、数値として測定をすることが難しい定性的も情報が多分に含まれています。

また、仮にこのような情報を数値化できたとしても、いったい誰が入力するのか?という問題も出てきます。

個人情報を渡すのが嫌いな個人が入力するのでしょうか?売主が嫌がることを不動産仲介業者がするのでしょうか?答えはノーです。そういったことはしたがりません。(特に日本人は。)

したがって、不動産の価格を算出するAIのベースとなる不動産情報のデータベース化というのはとても難しいことなのです。

2. AIは理由(過程)を説明できない

まずそもそもAI(人工知能)とは何かをご存知でしょうか?

AIとは「人間の脳のように活動をすることができる仕組み(プログラム)」のことを言います。

現状このAIと言えば「ディープラーニング」により①大量のデータ②それに対する解答(結果)を渡すことで、自動的にデータと解答の因果関係を解析し、最適解を出してくれる機能をもったものと考えられています。

AIの仕組み

もし不動産鑑定士の仕事が「不動産の正しい価格の算出」にあるとすれば、不動産鑑定士の仕事は将来的にはAIにとって代わられる可能性もあります(もっとも、前述の通り不動産取引の情報をデーターベース化するのは極めて困難なのですが。)

ですが、根本的に考え方が違っていると私は思っています。

それは「不動産鑑定士の仕事に求められること」と「AIのできること」が実は全く一致していないからです。

そもそも不動産鑑定士に求められているものは何か?と言うと、それは不動産の正しい価格を算出することではありません。

不動産鑑定士に求められているのは「価格の算出根拠(理由)を説明すること」にあります。

一方、現在のAIは正しい価格を算出できても、それがどういった理由で算出したのかということを全く説明することができません。

3. ただし国の対応によっては仕事は減少する

前述の通り、AIによって適正な価格の算出には不動産情報のデータベース化という高いハードルがあり、また、その価格がたとえ正しかったとしても、その価格を算出するに至った理由が必要となる場面では全く使い物にならないという話をしました。

しかしながら、現在不動産鑑定士が関わる地価公示や地価調査、固定資産税評価などの評価業務は、実際のところ単純な作業になっています(本来的には単純ではないはずですが、年々報酬単価が下がってきているため、作業を単純化せざるを得ない状況になっています。)

これらの価格は、本来的には客観性があり、価格が妥当でさえあれば良いわけです。したがって、色々な事情はあれど、

AIによって算出した価格を持って固定資産税や相続税など課税業務を行うし、公共用地買収のための土地の価格もAIの算出価格でやるよ。

と国に言われてしまえば、その時点で我々不動産鑑定士への公的評価の依頼はほとんどなくなるでしょう。

これは、今現在の大手・中堅の不動産鑑定士事務所の大きな収益の柱である「不動産証券化評価業務」でもそうです。むしろ不動産証券化評価業務に至っては、ほとんどの場合が収益価格から算出されるものであり、問題のない(まともな)不動産のみを対象としているため、AIによる価格算定は親和性が高いと言えます。

このように、国の対応次第では不動産鑑定士の仕事が大幅に減る可能性を全く否定することはできません。むしろ、政治力の無い不動産鑑定業界としては、そのようなことがあっても抗うすべはありませんので、国としてもなたを振りやすいようにも思います。

4. 結局のところ

最後に「国次第でなくなる可能性がある」とは言いつつも、データ化の困難性、算出根拠を知りたいところに需要があるなどに問題があることからも、AIにとって代わられることは、ここ10年~20年という単位ではないと思っています。

今の50歳以上の人が「理由は良く分かりませんが、この価格はAIによって算出された価格だから適正です。」なんて言われても素直に「うん、そうだね!」と思える人は少ないでしょう。

これが30~40年経った後、今の小学生が40歳とか50歳になる頃にでもなれば「なんで鑑定士の価格が必要なの?」という議論が出てきても不思議には思いませんが。

つまるところ、AIを受け入れことができるジェネレーションが大多数になるまでは、不動産鑑定士の仕事はAIに取って代わられないのではないかと思います。

さいごに

PCの導入初期の頃、今と同じく10年後に消えてなくなる職業として「税理士」などがありました。

実際問題として、記帳業務をする人など単純作業をする人の仕事は無くなりましたが、一方でパソコンを使ってする仕事も生まれ、結果として働く内容が変わるだけだったと言われています。

今回のAIの場合も同じで、仕事のやり方は変われど、仕事自体は無くならないのではないか?というのが私の考えであり、多くの人の考えなのではないかと思います。

特に、不動産鑑定士の仕事は機械的な仕事ではなく、人や人の気持ちと相対することも多いため、AIとの適合性は低いのではないかと思っています。

概要 予備校 難易度 年収 仕事内容 働き方 魅力