不動産鑑定士の仕事内容

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ここでは、あまり良く知られていない「不動産鑑定士の仕事」を中心に、不動産鑑定士とは?について、お話しをしたいと思います。

目次

不動産鑑定士とは?

不動産鑑定士とは、土地や建物といった不動産の価格賃料を査定(これを「不動産鑑定評価」と言います。)することができる国家資格です。

不動産の価格イメージ

不動産系の資格には、宅地建物取引士、建築士、土地家屋調査士などの資格がありますが、不動産業界の中での最高峰の資格といったら、この不動産鑑定士になります。

税理士や社労士などのように、弁護士や公認会計士が登録をすればなることができる資格とは異なり、不動産鑑定士は試験に合格をしないとなることができません。

そのため、不動産鑑定士は弁護士や公認会計士、弁理士と並ぶ独立系資格の最高峰の資格として認知されています

独占業務

弁護士が裁判所で代理人になることができる唯一の資格であるように、不動産鑑定士にも、不動産鑑定士にしかできない仕事(これを独占業務と言います。)というものがあります。その仕事が「不動産鑑定評価業務」です。

ところで、不動産鑑定評価業務とは、不動産の価格や賃料を査定し、これを「不動産鑑定評価書」という公的な文書にしたためて依頼人に発行する仕事を言いますが、不動産の価格や賃料を算定すること自体はもちろん誰にでもできます。

しかしながら「不動産鑑定評価書」として発行することが認められているのは不動産鑑定士だけです。これが独占業務であるが所以の法律上の保護になります。

不動産鑑定評価書の効果

ここまで見ると「不動産鑑定評価書って言う名前で発行できるだけ?」と思うかもしれませんが「不動産鑑定評価書」という名称で発行をすることができることが、実はとても重要なことなのです。

例えば、相続が行われると、遺産を相続した人(相続人)は相続税を納める義務が生じます。(基礎控除などの影響が大きいため、全体の約7%位の人しか相続税を納めることがないので、あまり知られていないと思いますが。)

遺産相続イメージ

このとき、相続財産に土地やマンションなどの不動産がある場合には、その相続財産の価格は国税庁から出されている「財産評価基準」という決まり事に基づいて評価を行うことになります。(実質的にこれが原則的な取り扱いになります。)

これは、

「土地やマンションを相続したときは時価評価してね。」

「でも、その時価の算定は国がやるとお金かかるから、各自、財産評価基準を見ながらやってね。」

という考えが背景にあります。

つまり「税金を徴収したいのに、徴収をするためにお金かけて不動産の価格を評価したら、税収が少なくなってしまった」なんてことにならないように、「納税者が自らで納税額を計算してくださいね」ということなのです。

したがって、たくさんの人(しかも不動産のことをあまり知らない人達)が、不動産の価格を自分で算出しなければならないので、財産評価基準は日本中どこでも、誰にでもできるように作られています

当然、そのような画一的に作られたものに基づいて、個別性の高い不動産(特に土地)を評価した場合には、実情と違う高い価格が算出されることもあります。(逆に低い価格が算出されることもあります。)

この時、財産評価基準で算出をされる価格に対して一番強く抗弁をすることができるのがこの「不動産鑑定評価書」になります。(不動産仲介業者の算定したものや税理士の独自調査によるものでも抗弁をすることはできますが、不動産鑑定評価書の方が圧倒的に効力が強いです。)

ここに「不動産鑑定評価書」の需要があるというわけです。

これはほんの一例に過ぎず、これ以外にも様々なケースで、法律によって独占業務が認められています。

仕事の種類・内容

不動産鑑定士の仕事は「不動産鑑定評価業務」、すなわち、土地や建物、マンションなどの価格や賃料の評価を行うことですが、その場面は多種多様です。

資格取得を考えている方も多く見ていると思いますので、代表的なものをいくつかご紹介しましょう。

公的評価

公的評価とは、国や地方自治体(都道府県や市区町村など)から依頼をされる不動産鑑定評価業務の総称です。

不動産鑑定士の公的評価

代表的なものには次のものがあります。

地価公示・・・国から毎年1月1日時点の土地の価格を査定するために依頼をされる業務
地価調査・・・都道府県から毎年7月1日時点の土地の価格を査定するために依頼をされる業務
固定資産税評価・・・市区町村から3年に1度、固定資産税の査定根拠となる土地の価格を算出するため業務

これ以外にも、国や地方自治体が公共事業として「道路」や「橋」などを新しく建設する時にも、不動産鑑定士に鑑定評価の依頼があります。

例えば、新しく高速道路を建設する場合には個人や法人から土地を譲ってもらう必要があります。

この時に、土地収用法等の規定に基づいて、公共事業施行者(国や地方自治体など)は土地所有者に対して、お金を払い土地を譲り受けます。

この時に支払うお金を対価補償金と言い、この金額の算定の基礎となるのが、土地であれば鑑定評価額になるというわけです。

一般鑑定

民間企業から依頼される鑑定評価を、俗に「一般鑑定」と言います。

一般鑑定のイメージ

この一般鑑定は企業が「不動産の購入や売却」「企業の買収」などの場面でよくある依頼です。

例えば、企業が事業によって利益を確保したとき、事務所や店舗などの収益用不動産の購入をすることがあります。

当然、購入をした後に「高く買い過ぎた」「当初の想定より稼働が悪い」「修繕費用がかさむ」「法令順守に問題があり営業停止処分を受けた」などの問題が生ずることもあります。(これを投資リスクと言います。)

また、不動産の価格は刻々と変化をするもので、少子高齢化、外国人居住者の増加、地震の発生など様々影響を受けます。

企業の内部に着目をしても、担当者(または部長など)が「○○億円なら妥当です」と言っても、経営者からすると素直に受け入れられないこともあります。

そこで、利害関係のない第三者(すわなち不動産鑑定士)が、その不動産の価格の妥当性を証明する必要があるというわけです。そこに鑑定評価の需要があります。

証券化評価業務

証券化評価業務とは、不動産投資信託(J-REIT)が取得したとき、または保有する資産につき定期的に、不動産の評価をする業務です。

不動産投資信託は、ここ10年ほどの間に随分とポピュラーな投資スタイルとなりました。

低金利の時代には、銀行へ預金をするよりリターンが多く、株へ投資するよりもリスクが少ないということで、多くの投資家が不動産投資信託へ投資をしています。結果として不動産証券化市場は活況を迎えています。

当然、不動産の素人である一般人が実質的に不動産に投資をすることになるため、その購入される証券は適正な不動産価格に基づき評価をされたものでなければなりません。

しかし、公認会計士は企業の監査をするプロではありますが、不動産のプロではありません。そこで、不動産のプロである不動産鑑定士が不動産投資信託の保有する不動産の適正な価格を査定することになります。(これが証券化評価業務です。)

なお、証券化評価業務で取り扱う不動産は、一般的に数億円以上の高額な物件が多く、そのほとんどが大手と中堅の不動産鑑定事務所で評価をされています。

不動産鑑定士の1日

働き方に興味を持つ方も大勢いらっしゃるでしょうから、不動産鑑定士の1日をご紹介します。

7:00

先日依頼されたマンションの現地調査のため、新大阪から新幹線に乗って岡山へ向かいます。

コンプライアンス違反になるため、電車の中では資料を確認しません。

9:00

マンションの管理人(案内人)との待ち合わせは14:00からなので、先に役所調査を行います。

まずは法務局に向かい、土地と建物の権利関係を登記簿で確認するとともに、公図や地積測量図などを取得します。

現在はインターネットでも登記簿の内容を確認できますが、閉鎖登記簿などは法務局でしか開示されていないことが多いため、過去の利用状況を確認したいことからも、法務局へ向かいます。

マンションのような大規模な土地は過去に工場として利用されているケースが多くあるため地歴調査は大切です。

9:30

次は市役所に行きます。事前に役所のHPで確認した通りに、道路や上下水道の図面を取得し、建物の建築確認資料なども取得するとともに、埋蔵文化財の有無や土壌汚染関連の指定も確認します。

特に問題がなければ30分~1時間で終わりますが、色々確認をすることがあるとそれ以上時間がかかることもあるため、時間に余裕を持たせます。

11:30

前もって調べておいた岡山のご当地料理「ひるぜん焼きそば」を食べに行きます。

14:00

対象不動産であるマンションに向かいます。案内者と会う前に、周辺の環境を実際に歩いて雰囲気を感じます。

現在はインターネットが普及しているため、口コミを見たり、google mapのストリートビューを見たりすることで、現地調査を行く前にだいたいの情報を知ることはできますが、実際に現地で歩いたりしないと分からないことは意外と多いものです。

異臭や騒音、町並み、雰囲気などは現地調査でしか感じ取れませんし、その現地調査で感じたことを話すのが、依頼者に一番喜ばれます。

15:00

無事現地調査も終わりましたので、今度は比較対象となるマンション(代替競争不動産と言います。)を見に行きます。多い時だと10件以上回ります。

17:00

日も暮れてきましたので、本日は上司に報告の上、自宅に直帰をします。

遠方に出張した場合はそのまま直帰することもあります。

最後に

私が受験をしたころの不動産鑑定士のイメージと言えば「堅苦しい、おじさん」といったものでした。

そんな私も、今は不動産鑑定業界に入ってからもう10年も経ちました。確かに「堅苦しい人」や「おじさん」もいますが、どちらかと言うと「明るい人」「社交的な人」「ひょうきんな人」が多い業界のように思います。

また、周りには20~30代の鑑定士や女性の鑑定士も多くいますし、不動産鑑定士協会のトップにも「女性」が多くいます。

まだまだ一般の人には知られていない「不動産鑑定業界」ですが、これから少しでも多くの人に知ってもらえたら嬉しいなと思います。

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