不動産鑑定士の難易度と合格率

概要 予備校 難易度 年収 仕事内容 働き方 魅力

ここでは、不動産鑑定士の試験の難易度、合格率の推移、合格者の属性、勉強時間などをお話しします。

なお、合格率や合格者の属性に関するデータは、不動産鑑定士試験 試験結果情報|国土交通省HPの掲載データに基づきます。

目次

試験の難易度

お洒落トット

1. 試験の概要

不動産鑑定士試験は国土交通省が実施する国家試験で、例年5月中旬と8月の初旬にそれぞれ短答式試験論文式試験があります。

短答式試験では行政法規鑑定評価理論の2科目の試験が行われ、論文式試験では民法経済学会計学鑑定評価理論及び鑑定評価演習の5科目の試験が行われます。

受験資格については、以前は「短大卒以上」などの受験資格がありましたが、現在は受験資格はありません。そのため、受験料13,000円を払えば誰でも受験をすることができます。

2. 難易度の分類

超難 激難 やや難 普通

肝心の試験の難易度ですが、不動産鑑定士試験は数多ある資格試験の中でも難易度が高く資格くらぶの中の分類としては、上から2番目の激難に分類されます。

好景気などの影響もあり、最近は受験者数が大きく減少をし、年々合格率が上がっています。しかしながら、受験科目数や学習時間、最終合格率を考えると、なおも難関の試験と言えるでしょう。

3. 難易度の理由

不動産鑑定士試験の難易度の理由は下記の通りです。

試験科目 試験科目の習得難易度が非常に高い
最終合格率 約5%と低い
勉強時間 最低2,500時間と長い
試験形式 マークシート式+論文式の2段階形式
試験実施回数 年に1度きり
最近 合格率が上昇傾向

個人的に、不動産鑑定士の難易度が高いのは、合格者予備軍に到達するのが困難だからというのが一番の大きな要因だと思います。

不動産鑑定士の論述試験では、一般教養科目として「民法」「経済学」「会計学」を勉強しますが、これらの科目は学問として非常に奥が深く、さらに論述式試験ということもあって、試験で戦えるレベルに持っていくのが大変です。

さらに、不動産鑑定士試験の最重要科目である「不動産鑑定評価理論」に至っては、税理士試験を受験している筆者からしても、常軌を逸しているような量の暗記が求められるため、それを暗記し、理解をするレベルまでもっていくのは並大抵のことではありません。

極めつけは、これらの試験が同年度に3日間で一気に行われるという点です。5科目満遍なく勉強をするのは想像以上に困難なことなのです。

4. 同じような難易度の資格

同じような難易度の資格試験には次の資格があります。

昨今の合格率を考えると、この資格の中では、不動産鑑定士試験が一番簡単な試験と言って良いでしょう。

合格率の推移

平成22年から令和1年までの10年間の不動産鑑定士試験の「短答式試験」及び「論文式試験」の受験者数、合格者数及び合格率の推移は次の通りです。

1. 短答式試験の合格率の推移

リーマンショックのあった2008年頃から受験者数の減少が続いていましたが、最近は受験者数が増えてきています。

合格率については、ここ10年の間ほぼ毎年上昇を続けていて、直近の試験(2019年)の合格率も32.4%と高い水準でした。

2. 論文式試験の合格率の推移

以前は論文式の合格率は10%前後でしたが、2011年ころから合格率が上昇をし、ここ5年間の合格率は14%後半で安定的に推移しています。

受験者数が大きく増えない限りは、今後もこのくらいの合格率で推移するのではないかと予想をしています。

年度 短答式 論文式 短答×論文
H22-2010 27.1% 9.4% 2.5%
H23-2011 27.7% 11.3% 3.1%
H24-2012 30.8% 11.4% 3.5%
H25-2013 29.1% 12.1% 3.5%
H26-2014 30.2% 11.3% 3.4%
H27-2015 30.6% 14.2% 4.3%
H28-2016 32.6% 14.5% 4.7%
H29-2017 32.5% 14.5% 4.7%
H30-2018 33.4% 14.8% 4.9%
R1-2019 30.6% 14.9% 4.8%
平均 30.0% 12.8% 3.9%

前述の通り、最近は短答式試験は30%超、論文式試験は14%後半の合格率で安定をしています。

短答式試験も論文式試験も合格率は年々上昇しているため、最近の最終合格率は5%近くまで上昇をしています。

これは約10年前の合格率の2倍の水準であり、試験の相対的な難易度が年々下がっていることが分かります。

合格者の属性

不動産鑑定士試験の合格者の属性を分析してみます。

1. 短答式試験の合格率の推移

(1) 合格者の性別(2019年)

男性 女性
484人 100人
82% 18%

最近は女性の不動産鑑定士も多くなってきていますが、もともと男性色の強い業界のため、まだまだ女性の合格者は男性と比べて少ないようです。

2. 年齢別合格率

年齢による合格率の差が顕著で、若いほど合格率が高く、高齢のほど合格率が低いことが分かります。

特に45歳を超えたあたりから、合格率が極端に下がっています。

年齢 受験者数 合格者数 合格率
~29歳 365人 148人 40.5%
30~34歳 296人 108人 36.5%
35~39歳 256人 91人 35.5%
40~44歳 209人 74人 35.4%
45~49歳 203人 58人 28.6%
50~54歳 154人 43人 27.9%
55~59歳 133人 33人 24.8%
60歳~ 135人 29人 21.5%
3. 合格者の年齢分布

合格者の大半が20代から30代の受験生です。

● 論文式試験

1. 合格者の性別
男性 女性
107人 10人
91% 9%

短答式と比べてさらに、論文式試験では女性の合格者の割合が少なくなっています。

2. 年齢別合格率
年齢 受験者数 合格者数 合格率
~29歳 138人 37人 26.8%
30~34歳 142人 26人 18.3%
35~39歳 131人 18人 13.7%
40~44歳 105人 12人 11.4%
45~49歳 87人 11人 12.6%
50~54歳 73人 4人 5.5%
55~59歳 59人 5人 8.5%
60歳~ 54人 4人 7.4%

論文式試験も短答式試験と同様に、若い人の方が合格率が高く、特に20代の合格率が突出して高くなっています。

逆に、50歳を超えると合格率がガクッと落ちます。

3. 合格者の年齢分布

論文式試験では20代から30代の合格者の割合は全体の7割近くを占めています。

● 年齢ごとの最終合格率

年齢ごとの最終合格率の推移は下記の通りです。なお最終合格率は「短答式の合格率 × 論文式の合格率」として算出しています。

20代では最終合格率が10%を超えますが、50代以降は2.5%を下回ります。

受験科目と難易度

不動産鑑定士の試験は先の通り、短答式試験と論文式試験の2つから構成されていて、それぞれの試験で出題される科目とその重要度は次の表の通りとなります。

● 試験科目
科目 短答式 論文式 重要度
行政法規
民法
経済学
会計学
鑑定評価 理論
鑑定評価 演習

短答式試験では「行政法規」と「鑑定評価理論」の2科目から出題されます。マークシート形式の試験のため、暗記をベースに過去問を何度も解く事で比較的簡単に合格レベルに達します。

毎年の合格率が30%を超えることからも、簡単な部類の試験と言えます。

なお、この短答式試験の合格は、論文式試験の受験資格となっていて、短答式試験に合格をした年を含めて以降3年間の短答式試験が免除されます。(下記参照)

1次試験合格の効果

一方、論文式試験では、①民法、②経済学、③会計学、④鑑定評価理論、⑤鑑定評価演習の5科目から出題されますが、それぞれの科目は専門性が高く、また学問的奥行きも深いため、これら受験科目が不動産鑑定士試験の難易度を高めていると言っても過言ではありません。

最近は合格率が15%近くまで上昇をしているため、以前と比べると難易度は下がっていますが、そもそも不動産鑑定士試験の論文式試験は、合格者予備軍に入るまでが大変です。

民法や経済学、会計学については、基礎知識のない人にとって学習当初は「何を言ってるの?」というような感覚でしょうし、実際に試験で戦えるレベルに達するまでにはかなりの勉強時間が必要です。

また、この試験の最重要科目である鑑定評価理論に至っては、「暗記の量」と「独特の学問性」を原因として、毎年多くの人が途中で挫折をしています。

つまり不動産鑑定士試験は、学ぶべき科目の難易度が高く、また、学ぶべき量も多いため、試験で戦うレベルに達するまでの道のりがひどく険しいということなのです。

勉強時間

不動産鑑定士試験の合格に必要な大まかな勉強時間はだいたい2,500時間~4,000時間くらいです。(この勉強時間には予備校での受講時間も含まれています。)

なお、これは一発で合格した場合の勉強時間ですので、次年度ということになればもっと時間がかかることになります。

1. 科目ごとの勉強時間
科目 総勉強時間 1日当たりの時間 勉強期間
行政法規 300~400時間 2~3時間 6~9ヶ月
民法 300~600時間 0~3時間 12~18ヶ月
経済学 300~600時間 0~3時間 12~18ヶ月
会計学 400~700時間 1~3時間 12~18ヶ月
鑑定評価 理論 1200~1500時間 2~3時間 12~18ヶ月
鑑定評価 演習 200~400時間 1~2時間 4~6ヶ月

基本的に「不動産鑑定評価理論」へ割く時間が圧倒的に多くなります。一方、鑑定評価演習については、不動産鑑定評価理論の知識があれば、論文式試験の半年から2日に1問というペースで問題を解いても十分に合格レベルに達することができます。

一般教養科目については、経済学は比較的短期間で得点になる科目ですが、民法は時間をかけても得点源になることはほぼありませんから、最小限の勉強にとどめます。

もし、余裕があれば会計学を勉強しましょう。会計学は勉強時間に比例して得点に繋がる科目です。

2. 学習開始時期

いつから不動産鑑定士の勉強を始めるべきか?ということに悩むと思いますが、学生などで1日10時間以上勉強に集中できるような環境であれば、目標とする論文式試験の1年前からやり始めても間に合います。ただ、理想は目標とする論文式試験の前年の4月からです。

一方、社会人の場合は目標とする論文式試験の前年の1月からスタートをするのが良いと思います。1年目は短答式の合格だけを目指し、短答式を終了してから論文式試験に向けて本腰を入れます。

恐らく、これが一発合格に一番近い学習開始時期になると思います。

さいごに

不動産鑑定士試験の難易度は実際のところ、受験者が少なくなってきたこともあり年々下がってきています。

一方で、不動産鑑定士の仕事は証券化市場の拡大のおかげもあり、確実に増えてきています。近年は、もともとの不動産鑑定評価の仕事以外にも、不動産鑑定評価の知識を活かした、いわゆる「コンサルティング業務」も増えてきています。

確かに、1度に何科目も勉強をし、やっとのことで合格者予備軍に入るわけですが、その母集団に入ってしまえば、合格まではあともう少しと言えます。

いかに効率良く勉強をし、そして最重要項目である「不動産鑑定評価理論・演習」を得意科目としていくかが、この試験の合否に直結します。

筆者の周りにも10年越しで合格をした人などもいますし、統計的にも60歳以上で合格をしている人もいますので、最後まで諦めずに、努力をし続けた人が合格を勝ち取るのだと信じています。

概要 予備校 難易度 年収 仕事内容 魅力