不動産鑑定士の働き方

概要 予備校 難易度 年収 仕事内容 働き方 魅力

現在の制度では、不動産鑑定士になるためには実務修習を受け、修了考査に合格をすれば「有資格者」として登録をすることができ、名刺に記載することができます。

そのため、必ずしも不動産鑑定士事務所で実務経験を積むことは必須ではありません(昔は2年間の実務経験が求められました。)

しかしながら、試験合格者の多くは不動産鑑定事務所で働き始めることを選択します。なぜなら、資格業はどこでもそうですが、実務経験あってなんぼの世界だからです。

したがって、この記事を見ている人は将来「不動産鑑定士事務所」に就職をすることを考えていると思いますが、一口に「不動産鑑定士事務所」と言っても、会社によって力を入れている業務は異なります。

特に不動産鑑定士業界では、事務所の規模が違うと、その業務内容も大きく異なります。そこで次からは、事務所の規模ごとに、その業務内容や働き方(残業の有無)などをお伝えしたいと思います。(最初にざっくりとしたイメージを下に示しておきます。)

規模 通常の鑑定評価業務 証券化評価業務 システム評価業務 その他の業務

目次

大規模事務所の場合

仕事内容

大規模の事務所では「通常の鑑定評価業務」を中心に、証券化評価業務、システム評価業務、コンサルティング業務、調査研究業務などがあります。

以前は国や地方自治体から依頼される「いわゆる公的評価」が収益の柱でしたが、不動産証券化市場(J-REIT)の拡大に伴い、大手の収益の柱は「証券化評価業務」にシフトしてきています。

また近年は、企業の大規模化、国際化、IT化に伴い、今までにない業務も行われるようになってきています。例えば「国外支店」の出店や「Web事業」への着手などがあります。

このような業務は基本的に資金的に余裕のある大規模事務所でしか経験をすることはできません。

なお、大規模事務所では新聞で目にするような注目度の高いもの、誰でも1度は訪れたことがあるような有名な建物など、スケールの大きな案件を担当する機会がちょこちょこあります。

大手以外ではこのような経験をすることができないため、不動産鑑定評価を極めたい、色々な物件を担当してみたいと思う人は大手を目指すのが良いでしょう。

勤務時間・残業

不動産鑑定業界全体として、企業や地方自治体の決算期(2月~3月)にかけて繁忙期に入ります。

繁忙期になると月当たりの残業時間は50~100時間になり、土日に出勤をして対応するということも多くなります。

逆にそれ以外の時期は、突発的な残業を除けば、月当たりの残業時間は10~30時間程度と少なく、プライベートとの両立も十分に可能です。

なお、大手不動産鑑定士事務所には、①日本不動産研究所、②谷澤総合研究所、③大和不動産鑑定の3つがあります。

日本不動産研究所は、母体が国の研究機関であるため「公務員」的な雰囲気があります。谷澤総合研究所と大和不動産鑑定は民間の不動産鑑定士事務所の雄で、前者は「少数精鋭」、後者は「チームプレイ」といった社風で知られています。

大手に採用されやすい人の特徴

不動産鑑定士試験に合格をした人から人気があるのは、上で紹介をした3つの大手不動産鑑定士事務所です。理由は、経験値、給与、福利厚生、業務内容など、基本的に大手は中小より優れていることが多いからです。

大手に入る場合に有利な要素をたまに聞かれますが、代表的なものに次のものがあります。

  1. 年齢が若い
  2. ITスキルが高い
  3. 語学力がある
  4. 社会人経験がある
  5. 性格が明るい
  6. 清潔感がある
  7. 不動産鑑定士試験に合格をしている
  8. 学歴が良い

年齢が若い

「年齢が若い」という要素はどこの世界でも重要で、今も昔も変わりません。

20代中盤までなら大きなアドバンテージ、30代前半までなら他にスキルがあれば採用されやすいでしょう。30代後半になると、時期(好況時など)や会社の求めるポジションと上手くマッチングすれば、採用されることもありまが、少し難しくなってきます。

ITスキル、語学力

最近はITスキルと語学力がある人が重宝されています。

どのくらいあればアドバンテージになるかと言われると、ITスキルであれば3年~5年位の実務経験、TOEICで言えば850~900以上だと確実にアドバンテージになるでしょう。また、最近は中国語を話せる人も採用されているように思います。

社会人経験

社会人経験は、3年以上あると有利なところが多いでしょう。金融や不動産業界にいた人が多いように思いますが、実際のところ、どこの業界にいたかは最近はあまり関係がないように思います。

性格・印象

性格や印象は、明るくて、清潔感がある人が好まれます。これは面接のときに重要なファクターになっているのは間違いありません。

試験合格者

やはり試験合格者の方が採用されやすい傾向にあります。ただし、最近は年齢が20代であり、他の業界で新卒から働いてきた人であれば、試験に合格をしていなくても採用されている人がちらほらいます。

学歴

学歴は無いよりはあった方が良いですが、最近はあまり重視されていなくなってきているように思います。旧帝国大学、早慶以上は評価されているように思います。

中規模事務所の場合

仕事内容

中規模の事務所(不動産鑑定士が5~20人位の事務所)では「通常の鑑定評価」を軸に、事務所ごとに特化した業務がある場合が多いように思います。

筆者の知る限りでは「証券化評価業務」をメインとしている事務所が多い印象ですが、「再開発事業」や「固定資産税路線価業務」をメインとしているところもあります。(逆に一般の不動産鑑定評価業務をメインとしている中規模事務所はとても少ないです。)

勤務時間・残業

大規模事務所と同様に繁忙期は残業が多くなります

繁忙期以外も、中規模事務所の場合は慢性的な人員不足のところが多いため、大規模事務所よりも勤務時間が長くなる傾向にあります

小規模事務所の場合

仕事内容

小規模事務所の場合はほとんどが国や地方自治体から依頼される「公的評価」が中心になります。

事務所によっては、所長の個人的な繋がりから「個人」や「民間企業」などから仕事を依頼されることもありますが、証券化評価業務はまず経験することはないでしょう。

勤務時間・残業

小規模の事務所では、公的評価の提出前(例えば地価公示の締め切り前の年末や地価調査の締め切りの夏前など)に忙しくなりますが、それ以外はプライベートの都合はかなり効くところ多いです。

むしろ、勤務時間が少なくて収入が少なくなることを気にする人もいるくらいです。

さいごに

私は縁あって大手不動産鑑定士事務所に勤めています。

不動産鑑定業界に入って早10年が経ちますが、その10年の間に変わってきたことと言えば「大手への業務の寡占が進んでいる」ということです。これは何も不動産鑑定業界に限った話ではありませんが。

20年以上前であれば、不動産鑑定業の仕事と言えば、もっぱら「公的評価」すなわち公示価格や地価調査、用地買収、固定資産税評価などが収益の柱でした。

ところが、公的評価は人口減少などを背景に依頼の数が毎年減っており、以前は随意契約で取っていた仕事も競争入札などのおかげで報酬額もかなり下がりました。

一方、その間に不動産投資信託(J-REIT)が誕生し、低金利時代とも相まって、現在は過去に例がないほどの活況が続いています。

ところが、この恩恵をあずかることができるのは、ある程度の規模のある不動産鑑定業者に限られます。

なぜなら、不動産投資信託(正確には運用会社)も個人に1件1件依頼をするのは手間であり、また、公的評価しか経験をしていない人は証券化評価に疎い人が多いこともあり、評価依頼を自然と大手または中堅どころに流れていきます。

昔は独立をするために資格を取るといったスタイルも、今はそれが少しずつ変わってきています。個人として独立をする場合は、昔よりもずっと厳しい時代に突入しているのだなと、改めて感じる最近であります。

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