消費税法の計算の解き方

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消費税法は、簿記論と同じく戦略が活きる科目です。

仮計の有無、解き方はTAC式か大原式か、など色々とありますが、ここでは、私が2回の受験の末、最終的にとった私の計算の解答方法をご紹介します。

もし、まだ解答方法を模索中という方は、どうぞ参考にしてください。

  1. 仮計を使うべきか否か?
  2. 原則計算のテクニック
  3. TAC式 or 大原式?
  4. 本試験での心得

なお、解答方法を自分のものにするためには、少なくとも2~3週間はかかりますので、本試験直前に解き方を変えるのはお勧めしません。

仮計を使うべきか否か?

昔から消費税法の計算の解き方で議論になるのが、この「仮計を使うか否か」というものですが、個人的な見解はコレ↓です。

  • 簡易課税仮計を使う
  • 原則課税仮計を使わない

以下に理由を説明します。

① 簡易課税の場合

まず、簡易課税の場合は、そもそも転記する量が少ないため、仮計を使うことの最大のデメリットであるタイムロスの影響がほとんどありません。

逆に、仮計を使うことで、解答用紙に配置する解答内容を事前に整理できるため、次のようなメリットが生じます。

  1. 結果として解答時間が短縮される
  2. 解答用紙を綺麗に使える
  3. ケアレスミスが無くなる

したがって、簡易課税の場合は、仮計を使わない手はないということになります。

② 原則課税の場合

一方、原則課税の問題の場合は、仮計を使うデメリットが目立つようになり、逆にメリットが少なくなります。

そもそも、現在の仮計のルーツは消費税率3%又は5%時代に遡ります。

その頃の本試験問題と言えば、最近の本試験問題と比べて、問題量や解答量が少なかったため、正確な答案を作成し、できる限り最終値である「納付税額」まで合わせていく必要がありました。

また、今では当たり前の「修正テープの使用」も当時は認められていませんでしたので、解答内容をどのように解答用紙に配置していくか?ということを事前に把握しておくことが重要でした。

そのため、H25年以前の消費税法の計算スタイルは「仮計を作る派」が主流だったこともあり、その頃に合格をした人は決まって「仮計を作りましょう」と言います。

ちなみに、予備校の講師はほとんどがこの頃合格した人達だと思います。

しかしながら、近年の消費税法の本試験問題を分析してみると、到底、時間内には解き切れない量の問題が出題される傾向にあり、綺麗に答案構成をするよりも、解答時間を1分でも多く確保することが有効な試験へと変わってきているのです。

また、簿記論などと違って、消費税法は計算構造が単純であり、解答方法も問題文の数値を適宜解答用紙に転記するだけですので、仮計使うことによる集計ミス防止や計算ミス防止などのメリットがほとんど無く、一方で仮計を作ることによるタイムロスという大きなデメリットがあります。

したがって、貴重な5分~10分の解答時間を使ってまで仮計を作るメリットは、個人的には全く無いという結論に達しています。

原則課税の計算テクニック

では、何も対策をしないで原則課税の計算をそのまま解くのか?というとそうではありません。

仮計を使わず、テクニックを使わなければ、ケアレスミスが多くなったり、結果的に仮計を使った場合よりも解答時間が遅くなります。

したがって、計算の解答に当たっては、いくつかテクニックを覚えておく必要があります。

1. 問題用紙へのマーキング

仮計のマーキング方法の肝は

  • 分かりやすい=意味がある
  • 早く書ける=字画が少ない
  • 汎用性が高い=毎回同じように書ける
  • が充足されるものであるということです。

    (1) 過年度の納税義務の判定

    まずは計算問題の最初に行う「納税義務の判定」について使用する「マーキング」です。

    事業者 仕入税額控除の方法 マーク・記号
    課税 原則 個別 〇の中にi
    (individualの略)
    一括 〇の中にa
    (allの略)
    簡易 〇の中にE
    (Easyの略)
    免税

    これを使った実際の解答例(令和1年における筆者の実際の記載例)が下の画像です。

    – 筆者のR1年本試験の計算用紙の記載例 –

    この方法であれば、分かりやすく、早く書けます。

    なお、調整対象固定資産や高額特定資産に該当するものがあれば、線表に「Reg①」又は「Ex①」と書き込みます。

    ちなみに、RegExは、Regulation(調整)とExpensive(高価)の略です。

    この他、課税期間が12月でない場合には「7月」といったように赤字で記入します。

    (2) 資産の譲渡等の分類

    資産の譲渡等の種類 マーク・記号
    課税対象 課税
    免税
    非課税
    法31 1項・2項 〇の中に31
    不課税 国外取引 〇の中に外
    それ以外 数字に取消線

    これを使った実際の解答例(令和1年における筆者の記載例)が下の画像です。

    課税取引の記載例

    課税取引の場合の記載例

    非課税取引の記載例

    非課税取引の場合の記載例

    法31の記載例

    法31条の場合の記載例

    国外取引の記載例

    国外取引の場合の記載例

    もし、売上返還等があった場合は、上記の記号の左上に△を記入します。

    また、問題文で土地建物一体で〇円、土地部分は△円といった記載であれば、引く側の金額(この例で言えば土地部分の金額)から、引かれる側の金額(この例で言えば土地建物一体の金額)に向かって線を描きます。(下記参照)

    差引表示の例

    このように記載しておくことで、後々課税仕入れの仕入区分を判定する際に、素早く正確に判定を行うことができるようになります。

    (3) 課税仕入れの分類

    課税仕入れについては記載しなくても良いと思いますが、記載するならTAC方式のA・B・Cが良いと思います。

    仕入区分 マーク・記号
    課税資産の譲渡等にのみ要するもの A
    その他の資産の譲渡等にのみ要するもの B
    共通して要するもの C

    これを使った実際の解答例(令和1年における筆者の記載例)が下の画像です。

    課税仕入れの仕入区分の記載例

    ちなみに、私は問題用紙から解答用紙にちゃんと転記したことをマークしておきたかったので、A・B・Cと記載するようにしていました。

    このように、仮計を使わず、問題文にマーキングをしながら数値を解答用紙に直接転記する方法をとれば、仮計を使う場合と比べて解答時間を最低でも5分は短縮できると思います。特に直前期の問題は転記する量が多いので、この影響が顕著に出ると思います。

    なお、一番大切なことは「自分の解き方に慣れきること」ですので、変更する場合は、遅くとも試験の3週間前までには自分なりの解き方を確立しましょう。

    計算の解き方はTAC式か大原式か?

    こちらもよく議論になる話です。それは、計算の解き方がTAC式か大原式かというものです。

    • TAC式:条文に沿った厳密な解答形式
    • 大原式:簡易的な解答形式又は附表に記載するような解答形式

    両者の特徴として、TAC式は、条文に沿った厳密な解答形式のため、減点されるリスクは少なく、採点者に良い心証を与えることができる、というメリットがありますが、大原式より計算式がごちゃごちゃするので、覚えにくく、解答時間が増えるというデメリットがあります。

    特に、簡易課税については、TAC式は無駄に記載量が増えるため、解答時間が多くなりやすいです。

    一方、大原式は、附表に記載するような簡易な解答方式のため、覚えやすく、書きやすいというメリットがありますが、条文通りの計算方法ではないため、採点者にあまり良い心証を与えることができず、また、減点されるリスクもある、というデメリットがあります。

    ただし、大原の予備校の講師は「大原方式で解いても減点は受けない」とおっしゃっていました。なぜなら、大原の解答方式で減点を受けているのであれば、大原の受験生の合格率がもっと明確に下がっているはずだから、とのことでした。

    なお、個人的には、本試験まで半年以上あるようであれば、条文に忠実なTAC方式を覚えるのが無難だと思います。なぜなら大原式が減点を受けない保証がないからです。(あくまで大原が上のように解釈しているだけです。)

    一方、本試験までに、あまり時間の無い人の場合は、大原方式でやるのが良いと思います。なぜなら、覚えやすく、解答方法の時間効率が良いからです。

    ただし、一番良いと思うのは、両校のミックスです。採点官が比較的じっくり見るであろう「納税義務者」の判定や「課税売上割合」の計算はTAC方式で厳密に解答し、点数が来るのか来ないのか分からない「個別対応方式の計算方法」や「一括比例配分方式の計算方法」は簡易な大原方式で回答するのが良いと思っています。

    なお、私は両校のミックス方式で解き合格をしています。興味のある方は下記のサイトでまとめていますので見てください。(消費税法を独学で、直前期まで学習できるサイトです。)

    本試験での心得(こころえ)

    どんなに勉強をしていても、たとえ予備校で上位であったとしても、本試験は全く別物です。

    税理士試験では、既習の問題が少ないときに、下位者が上位者を逆転する「どんでん返し」が起こりやすくなります。令和元年の本試験はまさにそのような試験でした。

    では、そんな魔物がいる本試験に対して、どのような気持ちで向かうべきか?この重要な心構えを、筆者の経験談からお伝えしたいと思います。

    1. 計算問題は全部解こうとしない

    テクニック的な事で言えば、これが一番重要です。最近の消費税法の本試験問題は、はっきり言って、初見でフル完答は無理です。

    解答を見た後に「時間内でここまでできるじゃん」とか言う人が必ず出てきますが、それは残念ながらただの勘違いです。

    本試験問題というのは、解ける問題なのか?はたまた解けない問題なのか?それが分からずに、暗中模索をしながら解答をしていくものであるため、普段の模擬試験よりもずっと時間がかかるものなのです。

    だからこそ、初めから、ある程度「どこかで切るんだ」という思考を持っておかないと、全部解こうとしてしまうので、解けない問題に遭遇したときにパニックになってしまいます。逆に、30秒考えて分からなければ即切り、という心得があると、無駄に考え込みません。

    とかく消費税法は未知の問題に出会いにくい科目です。直前期の問題であっても、初見の問題オンパレードなんてことはありません。

    したがって「どこかのタイミングで切るという意識」が本試験では重要になります。

    2. 計算に当てる時間を決めておく

    ある程度勉強が進んでくると、計算問題を解く場合、どの部分にどの程度の時間がかかるのか?が感覚的に分かるようになります。例えば、私の場合は下記のような感覚でした。

    仕入区分 マーク・記号
    前提文の読み込みと納税義務判定 15分~25分
    課税売上割合と課税仕入れの分類 20分~25分
    売上返還、貸倒れ、中間納付税額 5分~10分
    ここまでの全ての集計 10分~15分
    調整対象固定資産の判定 5分~10分
    転用調整 5分
    変動調整 10分~15分

    単純な問題で50分、変動調整までの問題なら70分~90分という感覚でした。そのため、変動調整までガッツリ聞かれる問題の場合は、納税義務まで書くと、だいたい時間がオーバーします。

    最近の消費税法の理論問題は、考えさせられる問題やボリュームのある条文を書かされるので、40分の解答時間では、だいたいの場合、足りませんです。最低でも45分、できれば55分は確保しておくべきだと思います。

    したがって、計算に充てられる時間は、65分~75分ということになりますので、そのためには、どの部分を書いて、どの部分は時間の関係で捨てていくのか、というのを予め決めておくと良いです。

    例えば、私の場合は、簡単な問題を除いて「控除対象仕入税額」や「変動調整に係る調整税額」、「納付税額」に配点は無い(あったとしても合否には影響がない)と思っていましたので、調整対象固定資産の判定まで終わったら、転用調整と中間納付税額を計算して、いったん終わりにしていました。

    このように、ある程度「どの問題にはどのくらいの時間を使うのか?」ということを事前に決めておくと、本試験でも心に余裕を持ちながら解答をすることができます。

    3. 分からない問題が出たときの対策

    分からない問題が出てきたら、30秒ペンを止めて考えましょう。なんだったら、腕を組んで「うーん」と考えます。

    この時重要なのは、ペンを走らせながら考えないということです。

    人の脳はマルチタスク処理がひどく苦手です。したがって、ペンを走らせながら(持ちながら)考えると、深く考えることができません。

    そして、30秒深く考えて分からないときは、潔く飛ばします。(これができるかできないかで、合否に影響が出ます。)

    では、時間に余裕ができ、考える時間ができたらどうするか?ですが、この時は、次のことを意識して問題を解いてみましょう。

    • まずはじめに、解答時間を決める←重要
    • 図解にして、状況を分かりやすくする
    • 作問者の意図を考えてみる又は理論の知識や条文の趣旨から考えてみる

    これを実際に私が受験をした令和1年の本試験問題、第二問について例えると、

    • とりあえず15分だけあてよう
    • 親族図表を書いてみよう。→結果、試験員の出題意図がなんとなく分かった気がした。
    • 三者とも特殊関係法人になることはないな。同一生計親族に100%支配されている場合だけ特殊関係法人になると言い切って解こう

    といった感じで解きました。

    結果として、考え方は間違っていましたが、部分点はもらえる程度には書けました。なによりも、当初の目論見通り、15分以内に切り上げることができたので、結果として、理論問題に55分あてられました。

    ここで重要なのは、分からない問題を深追いしない、ということです。(どのレベルかにもよりますが、少なくとも直前の模試で計算が上位30%前後にいるようであれば)あなたが分からない問題は、それは未習の問題です。他の誰も分かりません。

    そこは「切る」という考えが、一番有効だということです。

    4. ケアレスを防ぐ

    消費税法で計算が得意な人は、ケアレスミスがとても少ないという特徴があります。

    私の知人やブログを通じて知る限りでは、上位5%に入ってくるようなレベルの人は、ほぼミスしません。模試でも50点満点を取ります。

    私も本試験に近づくにつれ、ケアレスミスがどんどん少なくなっていきました。

    このケアレスミスを無くすポイントは、

    • 問題文を早合点しない
    • 自分のミスの特徴を把握する
    • 言い回しに慣れる
    • 自分なりの解答方法(マーキング方法や解答時間など)を確立する

    です。

    特に、はじめの2つが重要です。

    まず1つ目の「早合点しない」ですが、問題をたくさん解いていると、この問い方はこうだなとか、これはこういうことなど早合点するようになります。

    ですが、知っているような問題も1字1句しっかり読み込むようにするのが大切です。

    次の2つ目は、間違いノートです。消費税法では間違いやすいポイントがいくつかあります。例えば、納税義務者の判定で使う過年度の売上が税抜なのか、税込なのか?などです。

    これを間違いノートに簡単に書き込み、ケアレスミスの具体化をします。これによって、本試験問題で、どこに意識を持っていくかを予め脳内インプットし、ケアレスミスを防ぎます。

    5. 最後まで諦めない

    結局これが一番重要です。どの科目でも、どの試験でも、共通して言えるのはこれです。

    結局どこに、どれくらい配点されるのかは採点者以外知りません。予備校の模範解答もはっきり言って、90点前後くらいの内容だと思います。

    なので、自分なりに、1点でももぎ取りに行くというスタンスが、合否を分ける1点に変わったりするものだと思います。

    終わりの合図があるまでは、絶対に諦めてはいけません。

    最後に

    消費税法、そして税法は、計算の完成度で決まります。

    はっきり言って、予備校の模擬試験とは異なり、本試験で理論が満点になることはまずありません。

    ですが、計算は納付税額まで合っていたら、満点になる可能性があります。知合いの合格者の中にも、計算は納付税額まで合わせれたという人がちょこちょこいます。

    したがって、計算はケアレスを防ぎ、知っているものは全て完答してくるという気概をもって臨みましょう。

    合格率UP 計算の解き方 勉強方法 私の税理士試験 独学と予備校