大手税理士法人・BIG4への転職事情

20代 30代 40代 有利なスキル エージェント BIG4

ここでは主にBIG4と呼ばれる税理士業界の雄である大手税理士法人への転職事情についてお話をします。

ちなみに大手税理士法人(BIG4)とは次の税理士法人を指します。

まずは簡単に現在の税理士業界について説明をしますと、近年は人口減少・国際競争の激化・企業の大規模化の影響により、安定的に利益を出し続ける中小企業の絶対数が少なくなっています

一方で、税務申告業務をする側の税理士の数、つまり供給の数は減っておらず、10年ほど前と比較をすればむしろ増えているという状況にあります。

なぜ税理士試験が難しいのに、こんなにも税理士の数が多いのか?

結論から言えば、税理士試験合格者以外からの税理士登録組が異常に多いからです。

ご存知かと思いますが、税理士への登録は税理士試験の官報合格者以外にも「税務署のOB」「公認会計士」「弁護士」「大学院修了による試験免除者」による資格登録が認められています。

その数は実に税理士の総数の5割強にまで上ります。

当然需要より供給が多ければ市場は飽和します。特に業務の差別化が難しい(実質的にほぼできていない)法人税の申告業務や所得税の確定申告業務についてはことさらで、熾烈な価格競争にさらされています

したがって、現在の税理士業界は、相続税業務事業承継業務国際税務移転価格などの業務を除けば「利益率の低いレッドオーシャン」な業界と言えるのです。

そのため、中堅以下の税理士法人で働いた場合には「激務の割に、給料が安い」といった劣悪な職場環境・雇用条件になる可能性が高いのです。(法人税の申告業務がメインなところはまず間違いなくブラックです。)

そのような中でも、大手の税理士法人では、激務ではあるにせよ、給与水準は相対的に高く福利厚生も充実していて、社会的なステータスも高く、リーダークラスともなれば、他の事業会社からのヘッドハンティングもあったりと、入社を目指すメリットが多分にあります

実際に、アメリカの学生の就職したい企業ランキングでは、EYやKPMG、トーマツ、PWCなどは常に上位にランクインしています。

専攻 ビジネス 工学 情報処理 人文学・教育 理学
EY 7位 42位 95位
Deloitte 8位 41位 38位 57位 64位
PwC 10位 61位 99位
KPMG 13位 78位

出典元:The results for our 2018 US Most Attractive Employer Rankings

そんな夢のある、誰もが憧れるBIG4について、①仕事内容、②年収相場、③転職に当たって有利に働くもの、④BIG4を目指す場合の転職エージェント、の4つの切り口からお話しをしたいと思います。

– 目次 –

  1. 仕事内容(種類)
  2. 年収相場
  3. 転職に当たって有利に働くもの
  4. 転職エージェント

BIG4の仕事内容

一口に「BIG4に行きたい」と言っても「どこに行くのか?」という問題があります。実際に就職活動を進めていくと、同じ税理士法人の中にいくつもの募集職種があることが分かります。

どのような業務があるのかを具体的に知りたい人はBIG4が定期的に開催をしている「会社セミナー」に参加すると良いと思いますが、本格的な就職活動の前にざっくりと知りたいという人も多いと思いますので、代表的な業務についてその概要をお話しします。

● 国際税務

国際税務は、主に次の2つの業務から構成されています。

  • 海外進出をしている(する予定の)日本企業に対する税務コンサルティング
  • 日本へ進出している(する予定の)海外企業に対する税務コンサルティング

例えば、日本企業に対する税務コンサルティングであれば、日本企業が海外の子会社を買収した場合に、「その日本企業の法人税に対する影響はどのようになるのか?」「その子会社が存在する海外の税制はどのようになっているのか?」などの税務に関するアドバイザリー業務があります。

名前からもお分かりの通り、国際税務では、海外のBIG4の担当者や海外の企業とも直接やり取りをする機会が多いので、英語力は必須です。

● 国内税務

国内税務は、主に「法人税申告書の作成業務」と「これに付随するアドバイザリー業務」から構成されています。

基本的に、国内税務は他の税理士法人が行う税務業務と変わりありませんが、BIG4の顧客は日本を代表する大企業がほとんどのため、規模や数が他と比べて圧倒的に多く、複雑です。

なお、BIG4では基本的に申告書の作成は行いません。何故かと言うと、大手税理士法人では、単純な申告書の作成は、沖縄などのオフショアの部署に社内発注しているためです。

したがって、大手の税理士法人のスタッフは、その申告書が正しく作成されているかなどをレビューをし、それを顧客に対して説明をする、というのが主たる業務になります。

なお、国内税務と言っても、日本企業の多くは海外に進出をしていますので、英語の資料を読んだり、海外の担当者とやり取りをする機会もあるため、英語力はあった方が良いでしょう。

● 移転価格税務

移転価格税務は、法人税法における「国外関連者との国外関連取引における独立企業間価格を査定する業務」です。

この業務は、独立企業間価格が妥当であることを証明するために、国外関連者が存する国の状況や情勢、取引の質や内容、取引量などを下に、定量的・定性的に分析する仕事です。

そのため、税理士の試験勉強で学んだ内容とはあまり関係のない内容であり、どちらかと言うと、「分析をする仕事」と言えます。

したがって、法人税の申告書の作成業務をしたいと思っている人には向かない仕事です。なお、海外への出張も多いため、英語力が必要になります。

● 組織再編税務

組織再編税務では、M&Aや組織再編などに対する税務アドバイザリーが主たる業務になります。

基本的に、業務内容が税制の一部分に特化しているため、将来的に独立をしたいと思っている人にとっては不向きの業務だと思います。

なお、最近では、日本国内の中での組織再編よりも、海外の子会社や企業などを含めた組織再編や海外の企業のM&Aが活発に行われているため、英語力も必要となります。

● 事業承継

事業承継は、中小企業のオーナーが事業を承継する場合のアドバイザリー業務です。

現在我が国の中小企業のオーナーの多くが60歳を超える高齢者のため、世代交代が必要となっていますが、適切な担い手がいないという実情があります。

以前であれば直系親族の誰かに事業を承継したのですが、現在は、人事的にも、税制面からもその承継方法が多様化しています。

そのため、どの承継方法が税制面では良いのか? それはオーナーの想いと合致した方法なのか?などを検討しながらアドバイザリー業務を行います。

対法人の業務と比べると、人や人の人生に密接した仕事であり、やり甲斐を感じる仕事でもあります。

なお、事業承継は基本的に日本の中小企業の経営者をターゲットとしているため、英語力は他の部署と比べると重要性が落ちます

● 個人税務

個人税務では、主に海外企業の役員に対する、所得税や贈与税、相続税などの税務アドバイザリーが主たる業務になります。

海外企業が日本へ進出した場合には、海外企業の役員が日本に駐在しますが、個人税務では、その駐在期間におけるその役員に対する税務コンサルティングを行います。

なお、この業務では顧客対応のほとんどが英語による対応のため、英語力が必須となります。

BIG4の年収相場

BIG4の年収は、年功序列ではなく、職能給でほぼ決まります。なお、職能ごとの年収相場は次の通りです。

職能 イメージ 標準的な年収
アソシエイト(スタッフ) 一般 500万~650万
シニアスタッフ 主任 700万~900万
マネージャー 課長 1,000万~1,200万
シニアマネージャー 部長 1,200万~1,800万
ディレクター 執行役員 1,800万~?

なお、BIG4を含めた税理士の年収相場については、下記の記事を見てください。

BIG4への転職に当たって有利に働くもの

前述の通りBIG4は年収や福利厚生が優れ、社会的なステータスも高いため、税理士を目指す人の多くが憧れる企業です。

では、BIG4へはいったいどんな人が就職するのでしょうか?また、どんなスキルがある人が採用されやすいのでしょうか?

次からはBIG4に就職・転職をするに当たって有利になるものを1つずご紹介していきます。

● 転職で有利に働くもの一覧

有利に働くもの 書類・面接 重要度
年齢 両方
人柄・性格 面接
学歴・学部 書類
居住地域 書類
英語力 書類
試験の科目合格 書類
日商簿記 書類
他の資格 書類
社会人経験 両方
経理の実務経験 両方
税務の実務経験 両方

1. 年齢

BIG4で働く場合、この「年齢」は極論を言えば応募資格みたいなものです。

採用される人の年齢のボリュームゾーン20代前半から20代後半です。

BIG4のHPでは「年齢不問」と書いてあったりもしますが、税務未経験であれば30代前半まで、経験のある税理士であっても30代後半までが限界です。

これは、どんな転職エージェントに聞いてもそう答えると思いますし、実際にBIG4で働いていた人達に聞いてもそう言われました。

したがって、BIG4を目指すなら、基本的には20代後半までと考えてください。

もし他と比べて群を抜く資格や社会人経験がある場合に限り30代前半までであれば可能性が出てくると考えてもらって良いと思います。

2. 人柄・性格

女性の社会進出

結局のところ面接で最後に重要になるのは、人柄や性格です。特にBIG4では「清潔感」や「誠実さ」、「成長意欲の高い人」、「元気な人」が評価をされる傾向にあります。

性格や人柄は変えることはそもそもできませんが、与える印象は準備と努力で十分に改善できます。

このあたりのテクニックは一般の企業に応募する場合と比べても、それほど変わりはありませんので、市販の面接本などを1~2冊読んでおくと良いと思います。

3. 学歴・学部

BIG4で働く場合、意外と「学歴」と「学部」は重要です。(年齢が若い場合や新卒の場合は特に。)

とは言え、学歴については旧帝国大学であったり、早慶以上といったものが必要と言うわけではありません。4大卒であれば基本的には門戸は開かれていると考えてもらって大丈夫です。

一方、新卒の場合、学部は重要で法学部や経済学部、経営学部が採用されやすい傾向にあります。もし、他の学部である場合には簿記1級などを取得しておくと良いと思います。

4. 居住地域

基本的にBIG4で就職を考えているなら、東京在住が前提条件になります。

なぜならBIG4の募集のほとんどが「東京採用」だからです。一部で「大阪採用」もありますが、絶対数は東京と比べると圧倒的に少なく、また東京以外は税務経験者などが求められる傾向にあるからです。

したがって、BIG4への転職を考えているようであれば、東京に住んでいること(または転勤可であること)が必要です。

5. 英語力

BIG4を目指すなら英語力は必須です。「事業承継」などは、それほど英語が必要とされませんが、基本的にBIG4では英語力が無いと仕事になりませんし、取り扱える業務に制限がかかってきます。

逆に言えば、英語力が高い人は採用されやすい傾向にあり、年齢が20代後半であっても、税理士試験の科目合格や金融機関での社会人経験などがあれば採用される可能性が高くなります。

なお、英語力が評価される基準としては、TOEICで900点以上(最低でも850点以上)が目安です。

あるBIG4のセミナーでは、ある部署の人達のTOEICの平均点が900点と言われたくらいです。

もちろん、英語を使った実務経験があれば大きなアドバンテージになると思います。

6. 税理士試験の科目合格

BIG4への就職・転職活動では、1番有効なアピールポイントがこの「税理士試験の科目合格」かもしれません。

簿財2科目の合格でも有利ですし、もし法人税を含めて3科目以上に合格をしているようであれば、相当のアドバンテージになります。

7. 日商簿記

簿記担当者

新卒であれば日商簿記2級(できれば1級)を取得しているようであれば、それなりのアドバンテージになります。

8. 他の国家資格

20代前半であれば「USCPA」は公認会計士や税理士に次ぐ優良な資格になりえます

なぜなら、大手税理士法人の顧客のほとんどが海外に子会社や支店を有し、グローバルな事業活動を行っているため、IFRS(国際会計基準)の知識を持つ人やUSCPAライセンスを持つ人が優遇されるためです。

そのため、USCPAを利用した実務経験(例えば商社などで海外企業の財務諸表を分析した経験など)があれば、30代前半であってもアドバンテージが出てきます。

一方、実務経験が無ければ30代以降はUSCPAの資格のみではBIG4に入るのは難しいのが現状です。

なお、USCPA以外にも、不動産鑑定士中所企業診断士などの国家資格も実務経験があればプラスの評価になります。

8. 社会人経験

税務未経験者でBIG4に入る人の多くが外資系金融機関政府系金融機関の出身者又は海外取引を経験したメガバンク総合商社の出身者です。

これらの会社で経験がある場合は、20代であればいつでも転職の可能性がありますし、30代前半であっても、税理士試験の科目合格がいくつかあれば可能性があります。

8. 経理の実務経験

大手事業会社の経理実務の経験はプラスに働きますが、他の税理士法人と比較すると、それほど強いインパクトはないように思います。

と言うのも、BIG4は他の税理士事務所よりも「ポテンシャル」の要素を強く見られる傾向にあるため、税務の経験よりも、「金融」や「語学」などのスキルが重視される傾向にあるからです。

9. 税務の実務経験

一般の税理士法人への転職活動で最も強いのが、この税務の実務経験ですが、BIG4への転職の場合はこれだけでは難しいのが正直なところです。

また、税務の実務経験と言ってもその内容が問われますので、比較的規模の大きな企業の決算業務を3年以上経験した、といった経験がなければそこまで評価はされないことが多いです。

BIG4への転職に当たって登録をすべき転職エージェント

まず、個人で企業のHPから直接応募をするのは、辞めた方が良いと思います。

理由は、転職エージェントを利用すると「推薦文」というものを作ってもらえるため、若干ですが書類選考が通りやすくなるためです。

また、転職エージェントから自分の経験やスキルにあった募集職種を勧めてもらえるので、「個人で応募をする」明確な理由がなければ、転職エージェントを利用するのが無難だと思います。

とは言え、基本的にBIG4の転職活動では、転職エージェントによって採用の是非に影響が出ることはほとんどありませんので、税務業務の求人案件を取り扱っている転職エージェントであれば、どこでも大丈夫です。

ただし、BIG4は書類選考の通過率が2~3割、1~2次面接の通過率が3~4割、最終面接の通過率が4~5割と狭き門ですので、BIG4がダメだったときのことも考えて、税務業務の案件を多く取り扱っている転職エージェントに登録をすることをお勧めします。

私個人の就職活動の経験から言えば、関東と関西に住んでいる人であれば、MS-Japanが案件数、情報量などを含めて一番良いと思います。

もし、税理士業界以外の転職も視野に入れているようであれば、パーソナルキャリアが良いと思います。

さいごに

筆者も最初はBIG4を目指して転職活動をしましたが、年齢がネックで書類選考という壁を突破できませんでした。

転職エージェントの方にも「あと5歳若ければいけましたよ」と言われ、悔しい思いをしたことを覚えています。

そんな時から月日が経ち、現在は中堅の税理士法人で働いていますが、BIG4について真剣に分析をしたことがきっかけで、税理士業界のことをとことん調べた結果、当たり前の話ですが、BIG4以外にもたくさん良い税理士法人があるということが分かりました。

BIG4は憧れの職場であり、目指すべき価値が大いにある会社ですが、当然そこには高い壁があります。

もしBIG4に行けなくとも、大きな気持ちで前に進めば、今思い描いていない未来が必ず見えてきますので、腐らずに前を向いて歩いてください。

20代 30代 40代 有利なスキル エージェント BIG4