ITパスポート | 情報セキュリティ | 基本情報技術者 | 応用情報技術者 | ITストラテジスト |
「基本情報技術者」は年間受験者が10万人超の人気のIT国家資格です。昔からプログラマーやSEの登竜的な資格として認知されています。
以前は「第二種情報処理技術者」として実施されていた試験ですが、2000年から現在の「基本情報技術者」として試験が実施されています。
試験ではプログラミングスキルが問われるため、基本情報技術者試験はITパスポート試験や情報セキュリティマネジメント試験のような利用者側の試験ではなく、開発者側の試験となっています。
この記事では、その基本情報技術者の試験の難易度や合格率、勉強スタイル(独学or予備校)、資格としての価値などをご紹介します。
なお、当記事の合格率のデータは全て下記のサイトデータに基づきます。
目次
– 目次 –
試験の難易度
超難 | 激難 | 難 | やや難 | 普通 | 易 |
基本情報技術者試験はIPA|独立行政法人-情報処理推進機構が実施する国家試験です。毎年、春(4月)と秋(10月)に試験が実施されています。
試験は「午前問」と「午後問」の2部構成となっています。午前問ではITに関する全般的な知識が問われ、午後問ではプログラミングスキルをはじめ、データベース、ネットワーク、情報セキュリティ、IT戦略、プロジェクト管理など、IT開発に携わる者として必要とされるテクニカルな知識が問われます。
なお、2019年4月からプログラミングスキルの範囲が変更され、C・Java・Python・アセンブラnew・表計算ソフトの5つが試験の対象となっています。
肝心の基本情報技術者試験の難易度ですが、資格くらぶの分類としては普通にカテゴライズされます。(理由は下記)
学習範囲 | → | やや広く + プログラミングスキルが必須 | |
合格率 | → | 約25%とやや低い | |
勉強時間 | → | 80時間~100時間とそれほど長くない | |
試験実施回数 | → | 年に2回ある | |
試験形式 | → | 択一式である |
ただし、プログラミング経験の無い人にとってはプログラミングスキルを習得する時間としてさらに100~200時間は必要となります。
また、初見の言葉もたくさん出てきて、はじから調べていく必要があるでしょうから、IT初学者の人にとっては「普通~やや難」くらいのレベルになると思います。
なお、IPAでは基本情報技術者試験の難易度を情報セキュリティマネジメント試験と同程度としていますが、当サイトでは、学習範囲や合格率などから、情報セキュリティマネジメント試験よりも難易度の高い試験と位置付けています。
ちなみに、基本情報技術者試験と同じような難易度の試験には「簿記2級」や「FP2級」などがあります。
試験の合格率
1. 合格率の推移
基本情報技術者試験の直近10回の合格率の推移は下記のグラフの通りです。
一時期は受験者の減少が続いていましたが、ここ2~3年は逆に受験者が増えています。
なお、直近10回における平均合格率は24.9%とITパスポート試験や情報セキュリティマネジメント試験と比べると低い合格率となっています。
2. 都道府県別の合格率
基本情報技術者試験は、他の情報処理技術者試験と同様に地域ごとの合格率に大きな差がある試験です。
基本的な傾向として、IT産業が集積する首都圏や中部圏、関西圏は合格率が高くなっています。
一方、それ以外の地域については地方ごとの差が大きく、東北地方と九州地方は合格率が低く、逆に北陸地方と中国地方は合格率が高いという傾向があります。
ITパスポート試験などもこれと同様の傾向にあり、地域ごとにITスキルに差があることが分かります。
例えば、行政が様々な後押しをして、IT関連企業の在宅勤務化やフリーランス化が進んでいる中国地方では、情報処理技術者試験の合格率が高くなっています。
3. 資格別の合格者の平均年齢
グラフからも分かりますが、基本情報技術者試験は他の情報処理技術者試験よりも若い人が合格をしています。
合格者の年齢のボリュームゾーンは25歳ですから、新卒1~3年目で取得するような試験と言えます。
勉強時間
基本情報技術者試験の合格に必要な勉強時間はプログラミングスキルの有無によって大きな差があります。
基本的に「午前問」と「プログラミング以外の午後問」は、プログラミングスキルの有無に関わらず、市販テキストを読み、過去問を3~5年分解き、しっかりと復習をすれば、合格をすることができる十分な実力が付きます。
一方、プログラミングスキルについては、言語にもよりますが、プログラミング初心者にとってはかなりハードルが高いものとなります。(だからこそ、プログラミング初学者にとっては難易度が「難」レベルになるということです。)
CやJava、アセンブラ、Pythonについては、そもそも言語を学ぶ環境「実行環境」を用意するのに2~3日、実行環境の使い方を理解するのに2~3日、つまり準備をするだけで1週間近くかかります。
表計算ソフトについては、エクセルがあれば直ぐに学ぶことができるので、Cなどと比べると初学のハードルは低いですが、一般的な動かし方などを理解するのに2~3日は必要になると思います。
その上で、プログラミングスキル(メソッドや型、関数、クラスやハンドラー、コンストラクター等の概念など)を学んでいくことになるので、感覚的にはCやJava、Pythonについては1~2ヶ月(100~200時間)、アセンブラと表計算ソフトで1ヶ月前後(100時間前後)が必要になってくると思います。
したがって、プログラミング経験者については、1日1~2時間の勉強を1~2ヶ月(40時間~80時間)で合格レベルに達すると思いますが、プログラミング初学者の人については、プログラミングスキルの習得から始まるので3ヵ月~半年くらい必要になってくると思います。
勉強スタイル
基本情報技術者試験の勉強スタイルには、大きく分けて次の3つの勉強スタイルがあります。
- 独学:1,700円
→ 市販テキスト + 過去問サイト - web予備校:7,980円
→ スタディング - 大手予備校:15,000円~25,000円
→ TAC or 大原 or LEC
● 基本は独学
基本的に、基本情報試験の勉強は「独学」で大丈夫ですし、そもそも独学が主流です。
なぜなら、基本情報試験は合格率が約50%と高く、内容も他の試験と比べると平易だからです。
● 無料サイトも充実
また、基本情報試験に出てくる用語については、インターネット上の色々なサイトで説明がされているので、たとえテキストで分からない言葉が出てきてもググればすぐに解決ができます。
過去問サイトに至っては、下にも紹介していますが「基本情報 過去問」と検索をすれば、いくつものサイトがヒットしてきます。
したがって、基本情報の勉強方法としては、独学で学習することが可能な環境が既に構築されていると思いますので、あえて受講料の高い予備校を選択する必要がないと思っています。
● 苦手意識のある人は予備校
ただし、ITに対して苦手意識のある人については、予備校の利用をお勧めします。
なぜかと言うと、独学は分からない所があれば、(当たり前ですが)全て自分で調べ、理解する必要があり、誰も教えてくれません。
一方、大手予備校の場合は、教室クラスで受講をすれば、講義終了後に講師に直接質問をすることができ、これによってITに苦手意識のある人でも、着実に学習を進めることができます。
したがって、ITに苦手意識があり、かつ、金銭的に余裕のある人は大手予備校という選択もありです。
1. 独学という選択
再掲になりますが、基本情報試験における勉強スタイルの主流は「独学」です。
この独学で必要なものはたった1つです。次のテキストを購入して終わりです。
ちなみに、基本情報試験対策のテキストはたくさんありますが、他のテキストは、分からないことを分からない言葉で説明をしていたり、内容が唐突過ぎたり、文章がたくさんあり過ぎたりと、初学者の人にはあまりお勧めできないものが多いと思います。
上記のテキストは、比較的分かりやすいと思いますし、テキストの中に丁度良い間隔で例題があったり、分量が丁度良かったりと、他のテキストと比べて使いやすいと思います。
なお、あえて言いますが問題集は不要だと思います。
なぜなら、基本情報試験の勉強は「テキスト → 過去問サイト」という勉強が一番効率的かつ効果的だと思うからです。
したがって、上記のテキストを購入したら、
① テキストを読み (サラっと読むだけ)
② テキスト中の例題を解き (しっかりと理解する)
③ 過去問サイトを解く (全選択肢を理解する)
という順で学習を進めます。
上記の通り学習を進めれば、自然と合格レベルに達すると思います。
なお、過去問サイトには下記の通り、たくさんのサイトがありますので、自分に合ったものを利用してください。(個人的には、一番上のサイトが一番使いやすいと思います。)
合格レベルについて
過去問サイトで最低3~5年分は解き、2年連続で8割以上取れているようであれば、合格レベルに達していると言えます。
● 問題集はなぜ不要か?
上の方で「問題集を不要」と言っているのはなぜか?というと、問題集を購入してまで例題を解く必要がないからです。
また、過去問サイトも充実しているため、アウトプット(演習)も過去問サイトで十分な量をこなせると思うからです。
過年度のテキストはOK?
過年度のテキストを使ってOKかと言うと、全然OKだと思います。
なぜなら、基本情報試験に出題される内容は基礎中の基礎の内容であるため、その内容はほとんど不変なものだからです。
ただし、IT関連資格の書籍は驚くほど誤植が多いため、最新版の方がその誤植が訂正されている可能性が高いということだけは、お伝えしておきます。
2. 予備校という選択
基本情報試験を取り扱う予備校としてはいくつかありますが、値段と学習効率を考えるのであれば「スタディング」が良いと思います。
● スタディング – web予備校
スタディングは格安の受講料として知られるweb予備校ですが、個人的にスタディングの売りは「受講生サイトの作りの良さ」だと思っています。
正直スタディングのテキストは文字メインの説明のため分かりにくく、テキストだけで言えば市販のテキストを買った方が良いです。
一方で、スタディングは自分の学習の進捗状況が一目で分かる機能が付いており、また、問題集が間違えたものだけを抽出する機能など、学習効率を高める工夫がされているため、その点において他に比べて秀でていると思います。
ただし、スタディングでは、有料による質問しかできず、また、対面や電話などによる質問もないため、質問をしたいと思っている人には向いていません。
試験の概要
● 受験資格
無し
● 受験料
5,700円(税込)
● 受験申込み
下記の基本情報試験HPより申込み
・受験申込み – 基本情報試験
● 試験科目
- ストラテジ系・・・35問前後
法律、財務、企業ガバナンスなど
- マネジメント系・・・20問前後
プロジェクトの工程管理、テスト、マネジメント方法など
- テクノロジ系・・・45問前後
ネットワーク、SQLなど
● 合格基準(①と②を同時に満たす場合)
- ① 総得点が60%以上である
- ② 30%未満の科目が1つもない
● 試験時間
120分
基本情報の価値
基本情報の価値は、①学生、②社会人、③職種によって異なります。下記では、いくつかの立場に分けて「基本情報の有用性」についてお話をしたいと思います。
● 大学への進学を考えている人
あなたが高校生で、大学へ推薦入学で進学をしようと考えているようであれば、基本情報は力になります。特に情報処理関連の学部へ進学を考えているような場合はよりその価値があります。
理由は次の2点です。
- 資格を取得するための努力ができるという人間性が評価されるため
- 情報処理関連の学部を目指す志望理由と合致するため
したがって、推薦入試で進学を考えているようであれば、基本情報試験を合格している価値は高いでしょう。
● 就職・転職活動中の人
基本的に基本情報だけで採用されることないと言っていいと思います。
ただし、ITとは関係の無い事業会社ではITリテラシーの低い人が多い一方で、経営者(若い経営者は特に)はITリテラシーの高い人を好む人が多い傾向にあります。
したがって、基本情報試験に合格をしていることが採用の決め手になることも十分にあり得ます。(実際に、私の周りの人事担当の友人に聞いても、同じ難易度の「簿記3級」や「FP3級」よりも高く評価している、と答えています。)
● 自己啓発のために取得を考えている人
これは個人的な見解になりますが、これから少なくとも数十年という単位では、ITスキルがある人の方が重宝されることは間違いないと思います。
例えば、2010年以降に上場した企業のほとんどが「ITを利用した企業」であることからも、ITの重要性が高いことが分かります。
仕事柄、経営者や富裕層とお話をする機会が多い筆者ですが、そこで思うのは、企業が求めてるITスキルの高い人材とはプログラミングスキルのある人というわけではないということです。
企業が求めているのは、ITリテラシー(ITに対する理解力)の高い人を求めているということです。
このITリテラシーを高めるためには、ITの基本的な特性や情報を理解しておく必要がありますが、そのとっかかりとして丁度良いのがこの「基本情報試験」だと思います。
自己啓発のために何らかの資格を取ろうと考えているようであれば、筆者は積極的に基本情報をお勧めします。
さいごに
基本情報は情報処理試験の中では一番基礎の資格です。
一方で、基本情報試験で問われる問題は、プログラミングスキルを問う問題ではなく、財務やマネジメント、IT戦略、ネットワークなど、ITに関する多様な知識を問うものです。
そのため、基本情報試験を通じて学ぶ知識は、IT全盛の昨今においては、その有用性は計り知れず、ある意味、今後の世の中の「パスポート」と言える資格だと思います。
FPよりも、簿記よりも、何よりもこの基本情報が汎用性が高く、かつ、今後の世の中で求められている資格だと、筆者は思います。
ITパスポート | 情報セキュリティ | 基本情報技術者 | 応用情報技術者 | ITストラテジスト |