この記事では、FP1級の①概要、②受験資格、③受験の流れ、④試験の難易度、⑤合格率、⑥勉強方法、⑦予備校について解説をします。なお、筆者の勉強方法や勉強時間、受験回数などをまとめると次の通りです。
受験コース | きんざい学科 → きんざい実技 |
勉強時間 | 学科試験:1日2時間×6ヶ月 実技試験:1日1時間~2時間×2ヶ月 |
受験回数 | 2回 |
勉強方法 | 市販の過去問集+過去問サイト |
難易度 | 宅建や応用情報処理よりは上、税理士1科目より下 |
価値 | ・FP2級(AFP)を取っている人が多いなか、FP1級はそれなりに目立つこと。 ・一般的な知識を整理できたこと。 ・社会保険関係の知識を横断的に理解できたこと。 |
FP1級はそれなりに難しく、FP2級やFP3級よりぐっと難しくなります。FP2級やFP3級の場合は、択一式の問題のため、なんとなく知っているレベルで合格できますが、FP1級の場合は自分で年金や税金を計算できる必要があるため、その試験の風合いは少し違います。
一方で、FP1級の試験は、税理士試験のような1ミス=即OUTといったシビアさはありません。普通に勉強をすれば、毎年同じような問題が6割~7割ほど出題されていることに気づきますので、特に対策などしなくても合格をすることができます。
なお、FP1級と同じような資格に「CFP」という資格がありますが、FP1級がきんざいで実施される技能検定資格であるのに対し、CFPはFP協会で実施される技能検定資格である点が異なるだけで、実質的に同じです。よく、資格欄にFP1級技能士、CFPと併記している人がいますが、簿記1級、全経上級と書いているのと同じレベルなので、よほどアピールする資格が無いのかと心配になります。
目次
1. FP1級とは?
FP1級とは、正式名称で「ファイナンシャル・プランニング技能検定1級」といい、個人の年金や不動産、税金、金融資産の運用などのお金周りについてプランニングする技能が高レベルにあることを証する国家資格です。
合格率は約11%と低く、1級まで取得している人は少ない、比較的難易度の高い資格です。
FP1級の試験に合格すると「FP1級技能士」と名乗ることができ、名刺などに記載するとなかなか光ります。ただし、英検などと同じ技能検定にカテゴライズされる資格のため独占業務はありません。
2. FP1級の受験料
FP1級の受験料はなかなか高いです。
(1) きんざい
- 学科試験
受験手数料 8,900円(非課税)+事務手数料 119円(課税) - 実技試験
受験手数料 25,000円(非課税)
(2) FP協会
① CFP資格審査試験
受験出願課目数 | 1課目 | 2課目 | 3課目 | 4課目 | 5課目 | 6課目 |
---|---|---|---|---|---|---|
受験料(税込) | 5,500円 | 9,900円 | 14,300円 | 18,700円 | 23,100円 | 27,500円 |
② 実技試験
受験手数料 20,000円(非課税)
3. FP1級の受験資格
FP1級は「学科試験」と「実技試験」から構成されていますが、それぞれに受験資格が必要になります。
(1) 学科試験の受験資格
FP1級の学科試験は「一般社団法人金融財政事情研究会(通称:きんざい)」で実施される試験です。(FP協会では実施されません。)
この学科試験の受験資格には次の3つがあり、いずれも実務経験が必要となります。
- FP2級の合格者 + 1年以上のFP業務の実務経験
- 5年以上のFP業務の実務経験
- 厚生労働省認定金融渉外技能審査2級の合格者 + 1年以上のFP業務の実務経験
試験を申し込む時に、どこで何年FP業務を経験したかを申告することとなります。
(2) 実技試験の受験資格
FP1級の実技試験の受験資格には、次の4つがあります。王道はFP1級学科試験の合格からですが、CFP資格審査試験の6科目合格者もそれなりにいます。
- FP1級の学科試験の合格者※
- CFPの審査試験6科目の合格者※
- CFP認定者であること
- FP養成コースの修了 + FP業務の実務経験1年以上
※ 一定の有効期限があります。
4. 受験の流れ
FP1級は受験の流れがやや分かりにくいため、図解します。
FP1級の流れは、FP2級→FP1級学科試験(CFP資格審査試験)→FP1級実技試験→FP1級という流れになりますが、分岐が色々ありますので、逆順で説明をします。
- 上の図の通り、FP1級技能士となるためには、最終的に「FP1級実技試験」に合格をする必要があります。
- FP1級の実技試験を受験するためには、「FP1級学科試験」又は「CFP資格審査試験」のいずれに合格をする必要があります。
- FP1級学科試験とCFP資格審査試験を受験するためには、「FP2級」に合格をする必要があります。
5. 試験の難易度
FP1級の難易度は、やや難程度だと思います。他の資格との相対評価をすると次のような感じかと思います。
分類 | 資格 |
---|---|
FP1級より難しい試験 | 行政書士、社労士 |
FP1級と同じくらいの試験 | 簿記1級、中小企業診断士、ITストラテジスト |
FP1級より簡単な試験 | 宅建士、応用情報技術者、マンション管理士 |
6. 合格率の推移
(1) FP1級学科試験の合格率の推移
FP1級学科試験の合格率は平均すると約11%と低い合格率となっています。
試験実施日 | 応募者 | 受験者(A) | 合格者(B) | 合格率(B/A) |
---|---|---|---|---|
2018年1月 | 11,313人 | 7,455人 | 1,083人 | 14.5% |
2018年5月 | 未実施 | – | – | – |
2018年9月 | 10,215人 | 7,172人 | 591人 | 8.2% |
2019年1月 | 11,117人 | 7,310人 | 618人 | 8.5% |
2019年5月 | 7,540人 | 4,893人 | 576人 | 11.8% |
2019年9月 | 8,601人 | 5,836人 | 592人 | 10.1% |
2020年1月 | 10,557人 | 7,049人 | 833人 | 11.8% |
2020年5月 | コロナのため未実施 | – | – | – |
2020年9月 | 12,978人 | 9,948人 | 1,494人 | 15.0% |
2021年1月 | 13,549人 | 8,884人 | 884人 | 10.0% |
(2) CFP資格審査試験の合格率の推移
CFP資格審査試験の合格率は高く、6科目ともだいたい35%~40%の水準にあります。
(3) FP1級実技試験の合格率の推移
FP1級の実技試験はきんざいとFP協会で実施されていますが、ほとんどの方がきんざいの方の試験を受けています。毎回80%~90%の高い合格率となっています。
7. 勉強方法
FP1級の学習範囲は広く、①年金、②保険、③金融資産、④税金、⑤不動産、⑥相続・事業承継と6つの分野から構成されています。範囲は膨大ですが、試験で問われることは決まっていますので、対策をすれば十分に合格できます。
(1) 勉強時間
FP1級の平均的な学習時間は、次の通り。
- 学科試験:1日2時間 × 6ヶ月=300~400時間
- 実技試験:1日1時間×2カ月=60時間
(2) 試験対策
FP1級試験はテキストを読み、過去問を解くといった適当な感じでは合格までに時間がかかり過ぎます。現実問題として、FP1級は試験範囲が広く、問題も難しいです。漠然とテキストを読んでいるだけでは、なかなか過去問までたどり着けず、勉強のモチベーションが保てません。
一方で、FP1級は過去問の類題が繰り返し問われていますので、過去問を対策するだけで十分に合格圏内に入ることができます。
したがって、FP1級の勉強は、とにかく大切なことを重点的に学習することです。とりあえず次の2つは頭に入れておきましょう。
- 学科試験と実技試験
FP1級は学科試験と実技試験から構成されていますが、実技試験の合格率が80%を超えていることからすれば、合格率10%の学科試験が一番の山と言えます。したがって、FP1級は学科試験対策を重点的にやることになります。 - 学科試験の午前問と午後問
FP1級の学科試験でキーになるのは「午後問(応用編)」です。午後問の得点が合否を分けます。この点がFP3級やFP2級と決定的に違います。
なぜなら、FP2級やFP3級では午前問も午後問もあまり問題の内容やレベルに変わりがありません。しかしながら、FP1級の午前問は毎回相当マニアックな問題が出題される一方、午後問は繰り返し同じような問題が問われています。
また、午前問はたとえ過去問を5年分繰り返し解いたとしても、毎年法改正があるため、あまり意味がなく、本試験でも高得点を取るのが難しいです。一方、午後問は対策をしないと全然得点になりませんが、しっかりと勉強をしておけば、安定して高得点が狙えます。
したがって、FP1級の勉強に当たっては、とにかく学科試験の午後問を重点的に勉強します。
(3) 具体的な勉強方法
FP1級の基本勉強スタイルは「独学」ですので、独学の場合の勉強方法を簡単に解説します。
① 学科試験の勉強方法
学科試験は、きんざいのHPにある過去問を解きながら、分からないことをWEBで検索しながら、勉強を進めるだけで十分です。
目標としては、最初の3ヶ月で基礎編を5年分とりあえず解きます。その後の2ヶ月で応用編を徹底的にやります。応用編をやることで、基礎編の勉強にもなります。最後の1ヶ月で基礎編を3年分~5年分ほどやって完成させます。
独学の場合は、おすすめは「過去問道場」です。こちらでどんどん勉強を進めたら勝手に実力がつきます。解説も簡潔で分かりやすく、会員登録すると、PCとタブレットを同期できるため便利です。
ただし、誤植がそれなりにあり、また、解説が無い問題もあります。したがって、次の過去問集も用意しておくことをお勧めします。
応用編について
応用編は毎回5つのカテゴリーにつき同じような問題が繰り返し出題されているため、パターン問題をマスターしましょう。
カテゴリー | パターン問題の例 | 目標点 |
---|---|---|
年金 | 老齢年金、障害年金、遺族年金の計算 | 60% |
金融資産 | 財務分析、金融資産と税金、投資理論 | 90% |
税金 | 所得税と法人税の計算(毎回交互に出題されます。) | 80% |
不動産 | 建ぺい率・容積率(特に特定道路による容積緩和)、不動産の譲渡所得の計算 | 60% |
相続・事業承継 | 非上場株式の計算、相続税額の計算、民法の固定・除外合意 | 80% |
② 実技試験
学科試験で得た知識を総動員し、次のテキストを購入して自分なりの回答をまとめて言えるように準備しておけば十分です。
ただし、上記の本は更新頻度が低いため、直近の改正はネットで検索をして理解しておきましょう。
8. 予備校について(独学でいけるか?)
FP1級は、あえて言えば「独学で十分」な試験です。なぜかといえば、過去問サイトが良くできているのもありますが、試験の内容としてマークシートが基本であるためです。
もし先生の話についていく方が合っているのであれば、次のいずれかの選択肢になるかと思います。
9. 最後に
FP1級は、FP2級やFP3級のように、ちょっと勉強すれば合格できるというレベルの試験ではありません。ですが、しっかりと対策をして勉強をすれば普通に合格できる試験です。
FP1級を学ぶことで、年金・金融資産・不動産・税金・相続という幅広い分野について、なんとなく知っているというレベルから、自分で計算ができるというレベルまで理解が進みます。独占業務はありませんが、FP1級から学ぶことができる知識は非常に有用です。
銀行員や証券会社・保険会社の営業担当者、弁護士、税理士、行政書士、社労士、診断士など幅広い職種の方の営業ツール、戦略的ツールとして働きます。