中小企業診断士とは?

概要 難易度・合格率 科目と免除 予備校と独学 私の診断士試験

ここでは、日本で唯一の経営コンサルタントの国家資格に位置付けられている「中小企業診断士」についてお話をします。

本記事にある年収などのデータは「データで見る中小企業診断士2016年版|中小企業診断協会HP」の公表データに基づきます。

– 目次 –
  1. 中小企業診断士とは?
  2. 売上・年収
  3. 中小企業診断士試験
  4. データで見る中小企業診断士
  5. ダブルライセンス
  6. 将来性と価値

中小企業診断士とは?

1. 資格の概要

中小企業診断士とは、中小企業支援法を根拠法とし「中小企業の経営診断の業務に従事する者」として定められた国家資格です。平成31年4月1日現在において、約27,000人の中小企業診断士がいます。

中小企業診断士は、日本で唯一経営コンサルタントとして認められた国家資格ですが、資格に基づく独占業務はありません。いわゆる「名称独占資格」です。

そのため、資格業界の中では中小企業診断士の存在意義がやや薄いのが実情です。

他方で、近年は、AIに代替されにくい資格として一般的には知名度が急上昇しており、受験者・合格者共に増えています。

2. 資格の登録と更新

中小企業診断士は、資格を維持するために、とにかく「時間」と「お金」がかかります(ここら辺はCFPに似ています。)特に、他に主たる事業がある人(例えば、弁護士や税理士など)がダブルライセンスとして取得をしようとするときは、この点を初めに理解しておく必要があるでしょう。

ちなみに、この点を初めに教えてくれないサイトが多いのが、筆者的には問題に感じます。

(1) 登録時

中小企業診断士として登録をするためには、1次試験に合格をした後、次の3通りのうち、いずれかのルートを辿る必要があります。

どのルートを通るとしても、「時間」と「お金」がかかりますが、多くの人が辿る「ルート①」であれば、15日間の拘束と15万円の出費が必要となります。

  • ① 2次試験合格 → 実務補習登録(主要ルート)
  • ② 2次試験合格 → 診断実務従事登録
  • ③ 登録養成機関が実施する養成課程を修了 → 登録
2次試験の受験料

2次試験の受験費用は、17,000円です。他の国家資格の受験料と比較してもかなり高額な受験料になっています。

実務補習

実務補習とは、2次試験合格者が「中小企業診断士として登録をするために必要な修習」です。2次試験合格から3年以内に修了する必要があります。

この実務補習は「15日間コース」と「5日間コース×3回」の2通りの受講ができ、両者ともに15万円ほどします。

(2) 更新

3. 就職先と業務内容

(1) 就職先

現状日本において、中小企業診断士の資格が直接生きるような「経営コンサルティング業務」を中核事業とする会社は存在していません

あっても小さな会社や派遣社員や契約社員として登録をするような企業ばかりです。

したがって、中小企業診断士として安定的に働くのであれば、次の3択になると思います。

  • ① 地銀や信用金庫、日本政策金融公庫などの金融機関に就職する
  • ② 商工会議所や地域振興課といった自治体職員として働く
  • 独立開業(又は副業)をする

しかしながら、①と②については、診断士資格を取得してから始めるものではありませんので、基本的に③が主要選択肢となります。

(2) 業務内容

中小企業診断士の業務は大きく分けて、①診断業務、②経営指導、③調査研究業務、④セミナー業、⑤執筆業の5つですが、ほとんどの診断士にとって、このうち「診断業務」と「経営指導業務」と「セミナー業」の3つが中心的な業務となっています。

① 診断業務

診断業務とは、文字通り企業の経営状態を診断し、診断結果をまとめた報告書(診断書)を作成・説明する業務です。「与信審査業務」に近いものです。

目的は依頼者や依頼内容により様々ですが、診断対象となる企業を財務、事業内容、法務、労務などの面から多面的に分析をします。

② 経営指導(経営コンサルティング業務)

経営指導とは、企業の経営戦略(事業戦略)を立案し、又は、改善提案をする業務です。

基本的には、小企業や零細企業が対象で、今後の経営戦略や改善計画を提案する業務であり、自分が中心メンバーとして参加することもあるでしょう。

③ 調査研究(マーケティング業務)

調査研究とは、特定の地域や業界について多面的に分析をする業務です。感覚的にはマーケティングに近いでしょう。

調査研究業務は地道な業務ですが、中小企業診断士ならではの仕事でもあり、また、これらの経験をもとにセミナーを受託する機会もあるでしょう。

④ 講演・教育訓練業務(セミナー業)

講演・教育訓練業務とは、主に経営者に対して経営戦略や事業戦略について講義を行う業務です。

この業務は、主催会社や団体のキーマンとの人脈が特に重要であり、その上で、専門性や経験値を考慮して選ばれる傾向にあります。そのため、社会人経験の少ない人や、特定の領域に強みを持たない人は、依頼される可能性は低いでしょう。

⑤ 執筆活動(執筆業)

執筆活動とは、業務から得た専門知識を他へ還元するために行われる業務です。

この業務は売上よりも、知名度向上を目的に行われることが多いでしょう。

中小企業診断士の年収

1. 売上と年収相場

(1) 売上

中小企業診断協会HPによれば、中小企業診断士として経営コンサルティング業を営んでいる人の売上の分布は次のグラフの通りです。

売上が1千万円超の人の割合が全体の4割近くと多く、また、上位10%年収2,000万円超と、他の独占業務のある国家資格と比較しても引けを取らないほど高額報酬であることが分かります。

(2) 売上

とは言え、個人事業主として働く場合は、上記の売上から交通費、事務所経費などが必要となる上、事業税(5%程度)や消費税(売上が1,000万円超の人につき10%)の負担もあります。

そのため、年収が1,000万円超となるのは、上位20%と言うことになるでしょう。

2. 業務ごとの報酬相場

上記の売上に係るコンサルティング業務(診断業務・経営指導・調査研究)、セミナー・講師業(講演・教育訓練業務)、執筆業の1件当たりの平均的な売上高は次の通りです。

業務内容 公的業務がメインの人の場合 民間業務がメインの人の場合
大分類 細目
コンサルティング業務 診断業務 47,500円 105,200円
経営指導 37,900円 110,100円
調査研究 37,100円 64,800円
セミナー・講師業 講演・教育訓練 51,700円 125,000円
執筆業 原稿執筆 17円@1字 21円@1字

表を見てもらうと一目瞭然ですが、民間業務の方が公的業務よりも圧倒的に報酬が良いことが分かります。つまり、売上を伸ばすためには、民間企業からのセミナー依頼をどれだけ受けられるか?にかかっていると言えます。

とは言え、独立をしていきなり民間企業からオファーの声が届く人は、少数、というより、ほとんどいないでしょう。

中小企業診断士試験の概要

1. 試験の概要

中小企業診断士試験は経済産業省が管轄する国家試験で、次の日程で年に1回、3段階式の試験により実施されます。平均的な学習期間としては、1次試験が6ヶ月~1年、2次試験が2ヶ月〜半年といったところです。

  • 1段階(択一:1次)・・・ 8月初旬
  • 2段階(筆記:2次)・・・10月中旬
  • 3段階(口述:2次)・・・12月中旬

1次試験は7科目による択一試験であり、2次試験は4科目による筆記試験面談方式による口述試験から構成されています。

試験の流れとしては、1段階目の試験(1次択一)に合格をすると、2段階目の試験(2次筆記)を受験することができ、2段階目の試験に合格をすると、3段階目の試験(2次口述)を受験することができます。

2. 難易度

超難 激難 やや難 普通

肝心の中小企業診断士試験の難易度ですが、資格くらぶの中の分類としては、やや難に近いレベルに分類しています。(詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。)

中小企業診断士試験の難易度・合格率

3. 受験概要

(1) 受験資格

中小企業診断士試験は、受験資格はありません。ただし、受験料が一般の国家資格の試験と比べてかなり高い点に注意が必要です。

  • 1次試験:13,000円
  • 2次試験:17,200円

(2) 試験日程及び試験科目

1次試験

診断士試験の1次試験は、マークシート形式の試験で実施され、8月の初旬頃に、土日2日間に渡って実施されます。

日程 試験時間 配点 試験科目
1日目 AM 1 1時間 各100点 A 経済学・経済政策
AM 2 B 財務・会計
PM 1 1時間30分 C 企業経営理論
PM 2 D 運営管理
2日目 AM 1 1時間 E 経営法務
AM 2 F 経営情報システム
PM 1 1時間30分 G 中小企業経営・中小企業政策
2次試験

診断士試験の2次試験は筆記試験口述試験から構成されていますが、筆記試験に合格できた人だけ、口述試験を受けることができます。

なお、筆記試験では、1次試験の知識を基に、4つの事例問題(①経営理論、②マーケティング、③生産管理、④財務診断)についての診断テストが行われます。

日程 試験時間 配点 試験科目
AM 1 1時間20分 100点 A 組織(人事を含む)を中心とした経営の戦略および管理に関する事例
AM 2 B マーケティング・流通を中心とした経営の戦略および管理に関する事例
PM 1 C 生産・技術を中心とした経営の戦略および管理に関する事例
PM 2 D 財務・会計を中心とした経営の戦略および管理に関する事例

また、口述試験は筆記試験の内容を基に、面談形式で口頭試問が行われますが、合格率がぼ100%なので、形式的な試験と言えるでしょう。

(3) 合格基準

1次試験及び2次試験(筆記)ともに、①総点数基準②最低得点基準の両方を満たすことが必要です。

  • 総得点基準:全7科目の合計得点が、総得点の60%以上(420点以上)であること
  • 最低得点基準:7科目のうち、1科目も40%未満でないこと
科目合格者の合否判定

1次試験の不合格者については、科目合格の判定が行われます。

具体的には、1次試験に不合格だった人につき、各科目で60%以上の得点をした人が科目合格者として、「翌年度」及び「翌々年度」において科目免除の申請をすることができます。

有資格者による科目免除制度

1次試験では、各科目につき、他の国家資格を有することによる科目免除制度があります。科目免除となる資格は下記の通りです。

A 経済学

経済政策
  1. 経済学の教授等
  2. 経済学博士
  3. 一定の公認会計士
  4. 不動産鑑定士等
B 財務

会計
  1. 公認会計士等
  2. 弁護士等
  3. 税理士等
C 企業経営理論 無し
D 運営管理 無し
E 経営法務 弁護士等
F 経営情報
システム
  1. 技術士等
  2. ITストラテジスト
    システムアナリスト
  3. 応用情報技術者
    ソフトウェア開発技術者
    第一種情報処理技術者
  4. システム監査
    情報処理システム監査
  5. プロジェクトマネージャ
  6. システムアーキテクト
    アプリケーションエンジニア
    特種情報処理技術者
G 中小企業経営

中小企業政策
無し
科目免除をした場合の取り扱い

前期の通り、一定の国家資格の有資格者と前年・前々年の科目合格者については、受験申し込みの際に、科目免除を申請をすることができます。

科目免除が申請されると、その科目についてはその年の1次試験では、その科目につき60%の得点をしたものとして取り扱われます。

(4) 試験の日程

1次試験 申込み 5月初旬~
試験の実施 8月の初旬
合格発表 9月の初旬
2次試験 申込み 8月の下旬~
筆記試験の実施 10月の中旬
筆記試験の結果発表 12月の初旬
口述試験の実施 12月の中旬
合格発表 12月の下旬

データで見る中小企業診断士

中小企業基盤整備機構HPには、中小企業診断士についての様々なデータが公表されていますが、トピックなものを抽出してみました。

他にも知りたいものがあるようであれば、「データで見る中小企業診断士2016年版|中小企業診断協会HP」から調べてみると良いでしょう。

1. 年齢構成

中小企業診断士の年齢分布としては、40代~60代が多いことが分かります。

多くの現役の中小企業診断士は、5年~10年程度の社会人経験をもとに経営コンサルティングをしていることが分かります。

2. 診断士以外の保有資格

中小企業診断士以外の保有資格としては、FP技能士が最も多く、次いで情報処理技術者販売士社会保険労務士と続いています。

他に資格を保有していない人も、全体の13.0%います。

3. 診断士登録後の経過年数

登録後5年以内が33.1%と最も多く、その内訳も2年以内がその半分を占めており、資格登録者が急増していることが伺えます。

4. 経営コンサルタントとしての活動状況

経営コンサルタント業務(副業などを含む)の活動状況の割合ですが、半数以上の資格取得者が何らかの「経営コンサルタント業務」を行っているようです。

5. 経営コンサルタントとして活動をしていない理由

経営コンサルタントとして活動をしていない理由(副業をしていない理由を含む。)としては、会社との雇用契約上、副業が禁止されているからというのが最も多い回答でした。

その他には、忙しいから機会がないからという理由も多く見られます。

6. 公的・民間の業務割合

公的業務が高い人と民間業務が高い人とで、完全に二極化しています。

7. 今後のコンサルティング業の予想

6割以上の人が今後のコンサルティング業についてポジティブに捉えています

中小企業診断士とダブルライセンス

相乗効果のある資格 相乗効果の無い資格
  • 弁護士
  • 税理士
  • 社労士
  • 行政書士
  • 不動産鑑定士
  • ITストラテジスト
  • 弁理士
  • 会計士
  • USCPA

1. 相乗効果を発揮する資格

中小企業診断士は独占業務はありませんが、「商工会議所」や「中小企業診断協会」、「ミラサポ」などの中小企業の支援団体や支援機関に登録をすると、その団体に登録をしている会社や店舗、工場などと接点を持つことができます

そのため、中小企業診断士の資格を持つ場合は、持たない場合と比べて営業力が強化されます。

特に、侍業の場合、営業や顧客募集のためのセミナーは手弁当で行われるのが通常ですが、診断士として専門派遣を受けたり、診断業務を受託したり、セミナー業をする場合は、有償で営業ができます。

したがって、中小零細企業が顧客となる場合は、中小企業診断士はダブルライセンスとして、相乗効果の高い資格と言えます。

2. 相乗効果を発揮しない資格

一方、「中規模企業」や「個人」が顧客となる場合は、中小企業診断士の資格が活きることは少ないでしょう。

なぜなら、中規模企業の場合は、税理士が顧問になっていることが多く、診断士が入る余地はないからです。

また、個人については、そもそも診断士ができる業務は皆無です。(法務や税務、労務などの個別相談を行うと「非弁行為」や「税理士法違反」になります。)

中小企業診断士の将来性と価値

1. 将来性

ちまたではAIに代替されにくい資格中小企業診断士」としてスポットライトを浴びていますが、個人的に以下の理由からそれほど将来が明るいとは思いません。

  • 独占業務が無い
  • 専門性が低い
  • 市場が供給過剰

(1) 独占業務が無い

先の通り、中小企業診断士には独占業務がありません。

独占業務が無いということは食えなくなる可能性が高いのです。なぜなら、独占業務が無いということは、業務の参入障壁が低い又は無いということなので、価格競争にさらされやすいためです。

例えば、中小企業診断士の仕事は、商工会議所やミラサポなどの団体から依頼される「診断業務」や「セミナー業」、「調査業務」が中心ですが、実はこれらの団体への登録は税理士や行政書士などの他の資格の有資格起業家など、様々な人が登録をすることができます。

したがって、独占資格が無いということは、将来他に市場を食われる可能性が高いということになります。

(2) 専門性が低い

試験勉強をしてみると分かりますが、診断士試験で学習する内容は、専門性が低いのです。そのため、中小企業診断士試験を通じて学ぶ知識だけでは、実務では使いものにならないのが現実です。

法務や税務、労務、知的財産権、不動産などの専門性が高い内容は「弁護士」や「税理士」、「社労士」、「宅建士」には敵いません。

また、中小企業診断士の売りでもある「経営コンサルティング」については、企業家やMBA取得者には敵いません。

そのため、中小企業診断士の資格だけでは弱く、他に強みを持たなければ、資格の旨味を享受できないでしょう。

(3) 市場が供給過剰

これは中小企業診断士に限ったことではありませんが、現在の日本ではかなりの数の中小企業が、廃業や合併等により減少をしています。

そのため、中小企業を顧客とする業種・業界は等しく「過当競争の時代」に突入をしており、独占業務のない中小企業診断士の場合はその影響は顕著に出てくると思われます。

最後に

ここ数年、中小企業診断士は代替されにくい資格として脚光を浴びていますが、一方で、資格としての弱さから将来の不透明性は存在します。

しかしながら、一方で、ここ数年の間、国は中小企業の「競争力強化」や「事業承継の促進」に国庫を投入しており、この流れはまだまだ続くように思います。

また、他の資格保有者や専門分野がある人にとっては、中小企業診断士の資格は「顧客との接点を作り出すツール」とも言えるため価値の高い資格です。

いずれにせよ、試験難易度の割に高額報酬であり、30代の取得割合が低い状況からすれば、狙い目の資格とも言えるかもしれません。

概要 難易度・合格率 科目と免除 予備校と独学 私の診断士試験