目次
1. 不動産鑑定士とは?
不動産鑑定士は、不動産に関する専門家であり、不動産関連の最高峰の資格として位置づけられています。
一方、不動産鑑定士として登録されている人数は全国でも1万人以下と少なく、他の国家資格と比較してもダントツに知名度は低く、金融機関や不動産会社以外の人からは、あまりその存在を知られていません。
(1) 不動産鑑定士の仕事
不動産鑑定士の仕事は「不動産の鑑定評価」を行うことです。具体的には、土地や建物の価格、地代又は賃料を評価し、不動産鑑定評価書や調査報告書などの名称の文書をもって表示する仕事をいいます。この不動産の鑑定評価は不動産鑑定士にのみ認められた独占業務業務となっています。
(定義)
不動産の鑑定評価に関する法律|e-Gov
第二条 この法律において「不動産の鑑定評価」とは、不動産(土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利をいう。以下同じ。)の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することをいう。
不動産の鑑定評価が必要となる場面としては、次のようなものがあります。
- 公示価格・基準価格の査定
- 証券化不動産の時価評価
- 公共用地買収のための評価
- 担保評価
- 親族間、同族会社間の適正な時価評価
- 訴訟における評価
(2) 資格業界における不動産鑑定士のポジション
不動産鑑定士は、税理士や弁護士と多少の関わりがあるのみで、基本的には他の侍業との関わりは薄く、やや孤立しています。
(3) 不動産鑑定士になる方法
不動産鑑定士となるためには、不動産鑑定士試験に合格し、その後実務修習を経て、口頭試問を合格することが必要となります。
(4) 不動産鑑定士の職場
不動産鑑定士の就職先には次のようなところがあります。
- 不動産鑑定士事務所
- 都市銀行、信託銀行、投資銀行
- 不動産リート法人、アセットマネジメント会社
- 不動産会社
- 物流施設、商業施設のある事業会社
(5) 不動産鑑定士の年収
不動産鑑定士の年収は、勤務鑑定士の場合で600万円~900万円がボリュームゾーン、独立した場合は、400万円~1,200万円程度です。
- (参考)不動産鑑定士の仕事と年収と将来性
2. 不動産鑑定士試験の概要
ここでは、不動産鑑定士試験の受験資格、スケジュール、合格難易度について解説しています。
(1) 不動産鑑定士試験の流れ
不動産鑑定士試験は、1次試験と2次試験から構成されます。前者はマークシート形式のため「短答式試験」といい、後者は記述式のため「論文式試験」といいます。
(2) 不動産鑑定士試験のスケジュール
不動産鑑定士試験は例年5月に1次試験が、8月に2次試験が実施されます。初学者の場合は、合格可能レベルまで到達するのに、専業でも最低1年程度かかるため、通常は本試験のある年の前年の4月頃から勉強をスタートします。
願書提出 | 2月中旬頃~3月上旬頃 |
---|---|
短答式試験の実施 | 5月の中旬 |
短答式試験の合格発表 | 6月の下旬 |
論文式試験の実施 | 8月の初旬(3日間) |
論文式試験の合格発表 | 10月の中旬 |
(3) 受験資格と受験料
- 受験資格
不動産鑑定士試験に受験資格はありません。 - 受験料
13,000円(非課税)
(4) 試験科目
- 短答式試験(1次)
- 不動産に関する行政法規
- 不動産鑑定評価理論
- 論文式試験(2次)
- 民法
- 経済
- 会計学
- 鑑定評価理論
- 鑑定評価演習
(5) 合格基準
合格基準点は下記の通り定められていますが、例年の合格率をみると相対評価が行われていると考えられます。
- 短答式試験・・・概ね7割
- 論文式試験・・・概ね6割
(6) 試験免除制度
不動産鑑定士試験には、短答式及び論文式につき試験免除制度が導入されています。
- 短答式試験
前年又は前々年の短答式試験の合格者 - 論文式試験
民法
・司法試験の合格者
・公認会計士試験の合格者(民法選択の場合)
・法学部の教授など
経済
・公認会計士試験の合格者(経済学選択の場合)
・経済学の教授など
会計学
・公認会計士試験の合格者
・会計学の教授など
(7) 勉強方法と予備校
不動産鑑定士試験の勉強方法は、完全に2択です。お金が無ければLECとう選択肢もあるかと思いますが、不動産鑑定士試験の合格者占有率を考えれば、実質的にTACの一択です。
現実問題として、上記2校以外に不動産鑑定士を取り扱う予備校がありません。
なお、独学による不動産鑑定士試験の合格を目指すのは無謀です。
(8) 不動産鑑定士試験の難易度
不動産鑑定士試験は国家試験の中でも難関の試験の1つです。平均的な勉強時間としては、初学者で2,500時間~4,000時間くらいになります。
分類 | 資格 |
---|---|
不動産鑑定士試験より難しい試験 | 弁護士、税理士、司法書士 |
不動産鑑定士試験と同じくらいの試験 | 公認会計士、弁理士、不動産鑑定士 |
不動産鑑定士試験より簡単な試験 | 社労士、FP1級技能士、ITストラテジスト |
(9) 不動産鑑定士試験の合格率の推移
不動産鑑定士試験の短答式と論文式の合格率の推移は次の通りです。短答式・論文式ともに合格率が上昇傾向にあります。
3. 最後に
不動産鑑定士は有資格者が少なく、また、一般の人にも馴染みのない資格です。他方、その仕事内容は専門性があり、弁護士や税理士のような高収入は期待できないものの、安定した収入が見込める資格です。
勉強に費やす時間はなかなか多いですが、一応目指す価値のある資格ではないかと思います。