不動産鑑定士の年収と給料

概要 予備校 難易度 年収 仕事内容 働き方 魅力

ここでは不動産鑑定士の年収・給料について、①不動産鑑定士事務所で働いた場合、②一般企業に転職した場合、③独立した場合に分けてお話しします。

目次

不動産鑑定士の年収

不動産鑑定士の年収は「働く業界」と「職場の規模」によって大きな差があります。

不動産鑑定士の職場についてあまりイメージができていない方もいると思いますので、簡単に不動産鑑定士が活躍するシーンをお伝えすると、不動産鑑定士は不動産鑑定士事務所以外にも、不動産業界や投資ファンド、金融機関など、比較的様々な業界から需要があります。

とは言え、<基本的に、不動産鑑定士試験に合格したほとんどの人は不動産鑑定士事務所で働きます。

なぜなら、資格は取得しただけでは価値がなく、実務経験があって初めて評価されるものだからです。

したがって、ほとんどの人は「不動産鑑定士事務所に勤務」→「定年まで勤務 or 独立 or 転職」という道をたどります。

以上のことを踏まえ、当記事では不動産鑑定士試験の合格者の多くが通る、代表的な就職先・転職先の年収や給与などをご紹介します。

■ 働き方による想定年収(目安)

働く場所 標準的な年収 最高
不動産鑑定士事務所で働く場合 200万~1,000万 1,200万~1,800万
一般企業に転職する場合 400万~1,500万 不明
独立・開業する場合 700万~1,500万 3,000万

目安としては表の通りですが、それぞれに年収に幅がありますので、次からもう少し詳しく説明をしていきます。

留意事項

このサイトにある情報は、筆者の経験や周りからのヒアリングに基づき作成しているため、とてもリアルな情報だと思いますが、雇用統計などのざっくりとした情報とは異なることもあります。

1. 不動産鑑定士事務所で働く場合

不動産鑑定士事務所で働く場合は、①事務所の規模②役職③勤続年数④資格の有無⑤景気などによって年収に差が出てきます。

ちなみに、不動産鑑定士の年収として「雇用統計調査データ」に公表されているものは下記の通りです。

事業規模 10人以上 100人以上
平均年齢 43.1歳 50歳
月給 335,900円 553,700円
年間賞与 3.7ヶ月分 3.9ヶ月
年収 530万円 880万円

出典:賃金構造基本統計調査

次に各要因がどの程度年収に影響をするのかを説明します。

要因① 事務所の規模

どこの業界でもそうですが、不動産鑑定業界も同様で、事務所規模が大きくなればなるほど給与水準は高くなり、福利厚生は良くなります

だいだいの目安としては、大手で年収600万円~900万円(景気が良いときで1,000万円前後)、中小で400万円~750万円くらいが相場だと思います。

逆に地方に行くと、雇われ鑑定士の場合は200万円~400万円くらいになるそうです。(だからこそ地方では鑑定士として登録後、即独立という人が多いというわけです。)

福利厚生については、不動産鑑定業界では「大手」くらいしかまともな福利厚生はないと考えて良いと思います。逆に大手の福利厚生は、上場企業と比べても遜色のない福利厚生が備わっています。

例えば「家賃補助」「家族手当」「有給取得率」など色々なものが完備されています。

なお、大手の給与水準に幅が大きいのは年収に占める賞与の割合が大きいためです。私のヒアリングの限りでは、大手では過去には10ヶ月以上の賞与もあったとのことでした。

規模 賞与 月収(初任給) 月収(10年後) 月収(最高)
3~10ヶ月分 20~35万 30~60万 60~100万
1~5ヶ月分 20~30万 25~40万 40~60万
0~2ヶ月分 20~30万 25~35万 30~40万

※ 給与には残業代も含まれます。

要因② 勤続年数・役職による違い

以前は長く務める人は稀でしたが、最近は勤続年数の長い人が多くなってきています。

大規模事務所や中規模事務所では、普通の企業と同じように、勤続年数が長くなったり、役職が上がると年収が上がっていきます。

一方、小規模事務所では「所長」と「その他」というカテゴライズしかないことがほとんどで、役職や勤続年数よりも独自に取ってくる仕事の量により給料に差が出る事務所が多いようです。

なお、事務所の規模別に勤続年数と年収との関係を示すと次のようなイメージです。

大手以外は基本的に、年収上限の打ち止めが早いため、5~10年の勤続の後、だいたい独立をしています。

要因③ 資格の有無による違い

資格業は概ねどこでもそうですが、基本的に「資格者」と「資格者」とでは、給与水準に大きな差があります。

有資格者の場合、「資格手当」が付いたり、無資格者よりも昇格しやすいといった優位性があるため、給料が高いことが多いです。

不動産鑑定士に限らず、士業の場合は「資格に基づく仕事」がメインのため、そうなるのはやむを得ないでしょう。

補助者の給料について

補助者とは有資格者のアシスタントのことを言い、一般的に資格を保有していません。不動産鑑定士試験に合格したばかりの人は通常、この「補助者」として働き始めます。

補助者の期間中は、有資格者から「不動産鑑定評価」のやり方を教えてもらい、一部の作業を手伝いながら、少しずつ実務経験を積んでいきます。

また、実務経験とは別に、不動産鑑定士協会が実施する「実務修習」という研修を受け、さらに「修了考査」とういう諮問試験に合格して、初めて不動産鑑定士として登録をすることができます。

この「補助者」として働く期間は、通常、有資格者の給与水準より低いのが一般的です。多くの事務所で、実務研修を受けるまでに最低1年間の実務経験を積むことを要件にしているため、2~3年は丁稚奉公をすることを覚悟しておく必要があるでしょう。


実務修習費用の負担について

不動産鑑定士試験に合格をすると、実務経験を1~2年積んだ後に「実務修習」を受けることになりますが、実はこの実務修習は有料でお金がかかります

では、どのくらいお金がかかるか?と言うと、ざっくり100万円超は必要になります。

「え、合格した後もお金が必要なの?」と思うかもしれませんが、いるのです。しかも100万円超です。高すぎですよね?

そして、この実務修習費用の負担についても、事務所の規模により差があります。事務所によって条件は様々ですが、概ね次のように考えてもらうと良いと思います。

規模 学科(30万ほど) 演習(90万ほど)
事務所 事務所
事務所 or 個人負担 事務所
個人負担 事務所
大学 個人負担 個人負担

要因④ 景気による違い

不動産鑑定業界は比較的不況に強い業界だと思いますが、全体としては、不景気になると不動産取引が少なくなるため、利益が減り、当然賞与も減ります

もともと賞与が給与に与えるインパクトが大きいため、不景気になると年収が大きく下がります。

不動産鑑定業界は不況に強い?

不動産鑑定業界はよく「不況に強い業界」と言われますが、これは「不況になっても、不動産鑑定評価が必要とされる場面がある」または「不況の場合でもなくならない仕事がある」ことに起因します。

例えば、不況時には企業の倒産や個人の破産が多くなりますが、この場合には会社再生法や民事再生法などによる資産の評価・評定が行われ、このときに不動産鑑定評価の需要があります。

ただし、大手や中堅の不動産鑑定士事務所は証券化評価業務に大きく依存しているため、不況時には給与が大きく下がります。

したがって、必ずしも不況に強いとは言えないようにも思います。

2. 一般企業に転職する場合

不動産鑑定士として資格を登録をした人の多くは、他の一般企業へ転職をします。

理由は人によって様々ですが「年収を上げたい」か「不動産鑑定評価に飽きた(不動産鑑定評価以外のことをやりたい)」がその大半を占めます。

では、どのくらい転職により年収が変わるのかと言えば、私の知る限りでは次のような感じです。

1. 転職先として多い業種

転職先 想定年収 最近の募集状況
外資系投資銀行 1,000万~ 最近は少ない
メガバンク 900万~ 最近増えてきた
投資法人 900万~ 多い
デベロッパー 900万~ 最近は少ない
監査法人 900万~ 最近増えてきた
信託銀行 800万~ 少ない
不動産会社 600万~ 多い
都市銀行 600万~ 比較的多い
その他 600万~ 増えてきた

2. 転職先の部署

転職先の部署に多いのは、「用地取得」や「アセットマネジャー」、「不動産コンサルティング」などです。

当たり前と言えば当たり前ですが、不動産鑑定士としての経験値が活きる業種から需要があります。

逆に、金融や不動産業界以外からの需要はあまりありません。(次のものを除く。)

3. 最近のトレンド

ここ最近のトレンドとしては「メーカー」や「スーパー」などの「用地取得」や「出店企画」などの部署から需要が出てきています。

特に、店舗は立地が売上を大きく左右するため、店舗や商業施設の評価に強い不動産鑑定士に需要があるようです。

4. 不況時の転職事情

どの業界もそうかもしれませんが、不況時には転職先がとても少なくなります。

これは不動産鑑定士の転職先は「好況時」に儲かる業界が多いことが原因だと思います。

3. 不動産鑑定士として独立する

不動産鑑定士として資格を登録をした人のうち転職をしない人は、遅かれ早かれほとんどの人が独立をします。

公共からの仕事が減り、独立が難しくなっている昨今ですが、昔と比べてその割合は減ってきてはいるものの、個人事務所地方で働いている人の多くは今でも最終的に独立をしています。

独立したときの年収は、所属する「都道府県の不動産鑑定士協会」と「独立するまでの準備の量」によって差はありますが、だいたい400万円~600万円位からスタートし、1,000万円~1,500万円を目指すことになります。

なお、独立した場合の収入(売上)としては下記のようなものがあります。

■ 独立した場合の収入(目安)

業務内容 依頼者 報酬(万円) 頻度
公示・調査 国・都道府県 50~200 毎年1回
相続 国税局 10~60
固定 地方自治体 100~2,000 3年に1度
その他公的 地方自治体 ~500 営業力などによる
その他民間 民間企業 ~500
相続関連業務 個人・税理士 ~2,000
その他 弁護士など ~300
裁判所業務 裁判所 ~500 鑑定人

年収を伸ばす人の特徴

私が見渡す限り、独立・開業をして年収が1,500万円を越す人は次の3つのタイプに限られます。

  1. 鑑定人業務を担当している
  2. 固定資産評価業務で評価ポイントをたくさん持っている
  3. 相続案件をしている

1番目と2番目は昔から不動産鑑定士として成功するための2大要素として挙げられていたものです。ですが、この1番目と2番目の収入は実際のところ、以前と比べると下がっています。

一方3番目の要素はここ5年くらいの間に特に増加をしているように思います。それは、①高齢化が進んでいること、②相続税の基礎控除額が下がったこと、が大きな原因です。

とは言え、相続案件は一般的な評価よりもシビアです。国は多く徴税したいので、生半可は不動産鑑定評価書では採用される可能性は低いです。十分な調査と分析に基づく評価が必要となり、それだけに労力が何倍もかかります。

また、元来、国や地方自治体から仕事を貰うことに慣れた不動産鑑定士にとっては、資産家(または税理士など)に対して営業をするというのは簡単なことではありません。

しかしながら、自分次第では年収を増やす土壌ができたと言うのは、本来的な営業力、経営力、企画力、対人スキルなどがある人にとっては吉報ではないでしょうか。

最後に

私が資格取得を目指したころは、不動産鑑定士の平均年収は2,000万~3,000万円で、引き手あまたな資格と言われていました。(恐らくは過大広告だったと思いますが、学生の私はまんまとのせられました。)

3年間の受験勉強を経てようやく合格したのにも関わらず、私の合格をした年はちょうどリーマンショックのあった年でした。

求人はその年の前年の半分も無く、100人前後の合格者が就職難に直面した、まさに「就職氷河期」でした。

そのせいもあり、就職先の無い資格「不動産鑑定士」というイメージが付くようになり、その後受験生は年々減少をしていきました。実際に私が受験していたころと比べると、今の受験者数は1/2~1/3位まで減ったと思います。

そんな不動産鑑定業界ですが、ここ数年は不動産証券化ブームのおかげもあり、仕事も増え、完全に売り手市場に様変わりをしています。

良くも悪くも、景気は上下し、年収や売上も上下するのだなと思います。

概要 予備校 難易度 年収 仕事内容 魅力