この記事は、私の7年間にわたる税理士試験の体験記です。
当時私は不動産鑑定士として働いていた頃でした。ひょんなことから税理士試験を始めたわけですが、滑り出しは上々で、初年度に数ヵ月ほどしか勉強もしていないのに、いきなり固定資産税に合格しました。その時は3年で官報合格か?とも思いしましたが、ふたを開けてみれば7年間の激闘でした。
H25 | H26 | H27 | H28 | H29 | H30 | R1 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
簿記論 | A | B | 合格 | ||||
財務諸表論 | B | 合格 | |||||
法人税法 | 合格 | ||||||
相続税法 | A | ||||||
消費税法 | A | 合格 | |||||
固定資産税 | 合格 |
平成28年と平成29年は本当にしんどく、結果を見た後に「もうやめようかな」とぼやいていました。
目次
1. 平成25年:固定資産税→合格
平成24年の12月に税理士試験の受験を決意し勉強を開始。当時は簿記1級と並行して勉強を始めました。
本試験では、計算に90分かけた事もあり満点を取りました。その反動で理論は30分しか解答時間がなかったため、条文のベタ書きは不可能と判断し、ポイントを絞ってかなり端的に記述しました。(事例問題の回答は全て1文で終えました。)
そのため予備校の模範解答とは随分と異なり、予備校の合格ボーダーラインから▲15点という強烈なリサーチ結果となり、絶対落ちたと思っていました。しかしながら、予想に反して12月に「合格25」の印字が。
この頃から「予備校の理論の模範解答は当てにならない」「税理士試験は計算が重要だ」と思うようになりました。
2. 平成26年:相続税法→不合格A
平成26年は相続税法を選びました。不動産鑑定評価士との相乗効果を考えた結果です。
本試験前の大手予備校の模擬試験では上位30%〜平均くらいの水準にいました。また、本試験では理論はそこそこ、計算はいまいちで「不合格」となりました。
3. 平成27年:法人税法→未受験
平成27年は法人税法を勉強しました。当時の思いとしては、最も難易度の高い法人税法が合格できれば転職しようと考えていたためです。
この年は当時在籍していた会社で社内ベンチャーをし、プロジェクトリーダーとして働き始めていた頃で仕事が多忙でした。また私生活では結婚もあり、結婚式や新婚旅行と、とても法人税法を受けるような環境にはありませんでした。
そのため、直前期に入った時点でこのままでは全然間に合わないと考え、この年は試験を受けないこととしました。
4. 平成28年:簿記論→不合格A・財務諸表論→不合格B
この頃になると、新規プロジェクトの将来性が怪しいと感じ始めた事もあり、税理士試験を再開することにしました。とは言え、法人税法をやるほどモチベーションが高くなかったため、簿財をダブル合格し、次の年に法人税法と考えていました。
ところが結果は最悪のダブル不合格でした。会社も試験もうまくいかず、この年の合格発表は相当堪えました。
5. 平成29年:簿記論→不合格B・財務諸表論→合格・消費税法→不合格A
平成29年に入ると、もはや新規プロジェクトは成功しないと確信していたので、3科目同時合格を目指しました。
にもかかわらず、結果は「財務諸表論のみ合格」という虚しい結果でした。この年の合格発表前に長女が生まれたのですが、合格発表の結果を見た瞬間お祝いムードは吹き飛び、5年で2科目という不甲斐ない結果を受け止めきれず、奥さんと子供たちと一緒に近くの公園を無言で1時間近く散歩しました。
本当にこの年の結果はきついものでしたが、この挫折のおかげで、勉強方法や生活リズムを一から見直し、2年で法人税法を含めた3科目合格という快挙を成し遂げたと思います。
6. 平成30年:簿記論→合格・法人税法→合格
平成30年は育休を取った事もあり、この際に最難関の「法人税法」を合格しようと決意しました。また、簿記論も後少しと思っていましたので同時受験しました。
この時期から生活リズムを完全に朝型にシフトし、勉強をやる前は5分間の瞑想=セルフメディーケションを日課とし、また、自分ノートの作成も始めました。学習の勉強記録についても、それ以前は勉強時間を記録し、アメブロなどで公開していましたが、記録した勉強時間の多さに満足してしまっている自分がいると気付き、日々の目標を「単元単位の目標」に変えました。
本試前の実力としては法人税法が上位30%付近、簿記論が上位5%以内という状況にあったのですが、本試験終了後の感触は法人税法の方がよくできたという感触でした。
予備校のリサーチ結果では、簿記論は合格確実ライン前後でしたので合格したと思っていました。一方、法人税法の方はというと、私の通っていた大原では未習だが、TACでは既習という論点が2つもあったため、理論がボーダー▲5点、計算がボーダー+5点、合計±0点というまさにオン・ザ・ボーダーという状況でした。
合格発表が近づくにつれ、不安から2科目ともダメかなと思うようになりました。法人税法に至っては不合格を受けれていた事もあり、勉強を再開していました。そのため、ダブル合格という結果は本当に嬉しく、人生の中でもベスト5に入るような嬉しい瞬間でした。
7. 令和元年:消費税法→官報合格
令和元年は社会人復帰が確定していたので、既習科目である「相続税法」か「消費税法」のどちらかと思っていました。その上で、ブラックな税理士業界に飛び込むことを決意していたため、学習分量の少ない消費税法を選ぶこととしました。
また、この年は、何故かわかりませんが、今年は絶対受かると確信していたため、謎に消費税法を教えるサイトも作りながら、さらには中小企業診断士の勉強をしながら、税理士試験の勉強をしていました。
本試験前の完成度は上位30%といったところでしたが、試験休みを利用し、ぐっと完成度を高めて本試験に挑みました。本試験は近年まれにみる難問が2問出ましたが、うち1問はダークホースのLECの公開模試と同じ問題であり、幸運にも私はその試験を受けて復習をしていたため、心の中でガッツポーズを作りながら試験問題を解きました。(LECは税理士試験の予備校の中では超マイナーな予備校であったため、公開模試を受けた人は受験生の2%ほどしかいませんでした。)
合格の確信を持ちながらも、合格発表のあった日は、8:30公開のインターネット官報を心臓をばくばくさせながら何度も更新ボタンを押して待っていました。自分の名前を見つけ、長き旅路が終わったことを知った時、まさに感無量の気持ちになりました。何よりも家族の嬉しい声、一生忘れられないでしょう。
8. 予備校のリサーチと本試験結果との相関性
毎年本試験が終わると、予備校では本試験リサーチを行います。合格者が出始める点数をボーダーライン、合格の確率が9割を超えるようなレベルを合格確実ラインとして発表をします。
個人的な見解になりますが、予備校のリサーチとして意味があるのは大手予備校である「TAC」と「大原」だけです。そして、この両校の出す「ボーダーライン」と「合格確実ライン」の組み合わせから、どの程度の確率で合格が可能性か、がわかります。
理論 計算 | 1校で ボーダー超 | 2校で ボーダー超 | 1校で 合格確実超 | 2校で 合格確実超 |
---|---|---|---|---|
1校で ボーダー超 | 30% | 40% | 50% | 60% |
2校で ボーダー超 | 50% | 60% | 70% | 80% |
1校で 合格確実超 | 70% | 80% | 90% | 95% |
2校で 合格確実超 | 90% | 95% | 97% | 99% |
基本的に、過去の色々な人のブログによる公開発表の情報や私・私の友人の感触に基づく結果から言えば、理論より計算の出来の方が圧倒的に大事です。なぜなら計算は満点に近い得点が可能ですが、理論はそうではないためです。理論の配点は採点者によってばらつきが大く、また、予備校の模範解答通り記載しても100点とはいかないでしょう。
理論はバッチリなのに計算でボーダーを下回るような人は結構落ちます。逆に理論は全然だったけど、計算はできたって人は意外と受かります。なので、計算ができたと思った人は自信を持って良いと思います。
9. 最後に
個人的に私は院免による税理士登録に対しては否定的な立場です。そもそも院免を認めるから税理士が飽和するのです。税務署OBを目の敵にして文句を言う人がいますが、それは違います。税務署OBの数なんて全体のたった数%です。
だからこそ、官報合格を目指す方には頑張って欲しいと思います。官報合格した時ほど嬉しいことはないですから。
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