私の税理士試験(官報合格までの体験記)

この記事は、私の7年間における税理士試験の体験記です。税理士試験を志した理由やその道のりなどをお話します。

1税理士試験を目指した理由

私が税理士試験を目指したきっかけは、当時付き合っていた彼女が税理士事務所の職員で、その影響を受けたからです。忙しいながらに責任感を持って仕事をする彼女の職業に惹かれて行きました。

一方当時の私はと言えば不動産鑑定士になってちょうど1年ほど経った頃でしたが、仕事のやりがいを感じられず、年収上限も低く、会社でも上手くいっておらず、独立をしても将来性がないことから、人生に希望を見い出せずにくすぶっていました。

特に、不動産鑑定士の①仕事のやりがいの無さ②年収上限の低さは私にとって致命的でした。

例えば不動産鑑定士の仕事「不動産鑑定業務」は、今の仕事(資産税)のようにお客様に喜ばれたり、頼りにされるような仕事ではありませんでした。(少なくとも私自身はそのように感じたことはあまりありませんんでした。)

また、不動産鑑定士は地価公示や固定資産税評価などの「公的」な仕事があるため、比較的不況に強く、独立後も安定しているのですが、一方で年収が600万円〜900万円が相場であり、競売人になったとしても年収1,500万円が関の山で、年収2,000万円を超える人はほとんどいないという現実がありました。

ところが、税理士では①人に頼りにされ、②年収も5,000万円超えの人もちらほらいるなど、私にとっては非常に魅力的な仕事に見えました。加えて、税理士は不動産鑑定士と相性が良いと言われていたため、不動産鑑定士としてこのまま悶々とした日々を送るよりも、一念発起し、もう一度がんばってみようと考えるようになりました。

そして、当時「固定資産税の路線価敷設業務」という仕事をやっていたため、試しに固定資産税でも受けてみるかと思い、税理士試験を開始することとなりました。

2官報合格までの試験体験記

私は2012年の12月に税理士試験を志し、2019年の12月に官報合格をしました。7年の道のりは今思い出しても長い旅路であったと思います。

科目 年数
1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目
H25 H26 H27 H28 H29 H30 R1
会計科目 簿記論 不合格A 不合格B 合格
財務諸表論 不合格B 合格
税法科目 法人税法 合格
相続税法 不合格A
消費税法 不合格A 合格
固定資産税 合格

滑り出しは上々で、固定資産税に合格をした時は3年で官報合格か?と考えていましたが、4年で1科目、5年で2科目という苦境に差し掛かりました。ただ、その後の6年目と7年目で法人税法を含めた3科目合格を果たし、税理士への道が開けました。

紆余曲折を経た7年間の税理士試験について簡単に振り返ってみます。

(1) H25:固定資産税

① 当時について

H24年の12月に税理士試験の受験を決意し、H25年の固定資産税を受験しました。この当時は簿記1級の勉強と並行をして勉強をしていたため、勉強時間は少なかったと記憶しています。

② 本試験後の手応え

本試験では、計算に90分かけた事もあり満点を取りました。その反動で理論は30分しか解答時間がなかったため、条文のベタ書きは不可能と判断し、ポイントを絞ってかなり端的に記述しました。(事例問題の回答は全て1文で終えました。)

そのため予備校の模範解答とは随分と異なり、予備校の合格ボーダーラインから▲15点という強烈なリサーチ結果となりました。

初めての受験、かつ、リサーチ結果がボーダー▲15点ということだったため、ほとんど期待せずに12月の合格発表を迎えました。すると「合格25」という印字を受け、喜びが爆発しました。

ちなみに、この時から「予備校の理論の模範解答は当てにならない」「税理士試験は計算が重要だ」と思うようになりました。

(2) H26:相続税法

① 当時について

H26年は相続税法を選びました。不動産鑑定評価の仕事でも相続対策のための鑑定評価や相続税路線価精通者意見という業務も携わっていたこともあり、他の税法科目より親近感があり、また興味もあったため、相続税法を選ぶことにしました。

② 本試験後の手応え

本試験前の大手予備校の模擬試験では上位30%〜平均くらいの水準にいました。

本試験では理論はそこそこでしたが、計算の精度が低く、後もう少しというところで不合格となりました。ただ、この頃から相続税法は仕事で使うだろうと漠然と思っていたため、2回目の受験はしませんでした。

(3) H27:法人税法→未受験

① 当時について

H27年は法人税法を勉強しました。当時の思いとしては、最も難易度の高い法人税法が合格できれば転職しようと考えていたため、法人税法の優先順位を上げました。

② 受験について

この年は当時在籍していた会社で社内ベンチャーをし、プロジェクトリーダーとして働き始めていたため、仕事が多忙でした。また私生活では結婚もあり、結婚式や新婚旅行と、とても法人税法を受けるような環境にはありませんでした。

そのため、直前期に入った時点でこのままでは全然間に合わないと考え、この年は試験を受けないこととしました。

(4) H28:簿記論・財務諸表論

① 当時について

この頃になると、新規プロジェクトの将来性が怪しいと感じ始めた事もあり、税理士試験を再開することにしました。

ただ、法人税法をやるほどモチベーションが高くなかったため、簿財をダブル合格し、次の年に法人税法が合格した際に転職しようと考えていました。

② 受験について

結果は最悪のダブル不合格でした。会社も試験もうまくいかず、この年の合格発表は相当堪えました。

(5) H29:簿記論・財務諸表論・消費税法

① 当時について

H29年はもはや新規プロジェクトは成功しないと思うようになっており、会社にも居場所を感じられていなかったため、一刻も早く退職をしたいと思うようになっていました。

そのため、1度に3科目合格をし、翌年は官報合格だと息巻いて試験を受けました。

② 本試験後の手応え

にもかかわらず、結果は「財務諸表論1科目合格」という虚しい結果でした。この年の合格発表の1ヶ月前に長女が生まれたのですが、合格発表の結果を見た瞬間お祝いムードは吹き飛びました。

5年で2科目という不甲斐ない結果を受け止められず、奥さんと子供たちと一緒に近くの公園を無言で1時間近く散歩しました。本当にこの結果は堪えましたが、このおかげで、勉強方法や生活リズムを一から見直し、2年で法人税法を含めた3科目合格という快挙を導けたと思います。

(6) H30:簿記論・法人税法

① 当時について

H30年は育休を取った事もあり、この際に最難関の「法人税法」を合格しようと決意しました。また、簿記論も後少しと思っていましたので同時受験をしました。

ただ、消費税法までやると過去の年のように中途半端な結果になると思い、同時受験は2科目に留めました。

この時期から生活リズムを完全に朝型にシフトし、勉強をやる前は5分間の瞑想=セルフメディーケションをし、自分ノートを作成して勉強を始めました。また、以前は勉強時間を記録していましたが、記録した勉強時間に満足している自分がいると気付き、日々の目標を「単元単位」に変えました。

② 本試験後の手応え

本試前の実力としては法人税法が上位30%付近、簿記論が上位5%以内という状況にあったのですが、本試験終了後の感触は法人税法の方がよくできたという感触でした。

予備校のリサーチ結果では、簿記論は合格確実ライン前後でしたので合格したと思っていました。一方、法人税法の方はというと、私の通っていた大原では未習だが、TACでは既習という論点が2つもあったため、理論がボーダー▲5点、計算がボーダー+5点、合計±0点というまさにオン・ザ・ボーダーという予想となりました。

合格発表が近づくにつれ不安から2科目ともダメかなと思うようになりました。法人税法に至っては不合格を受けれていた事もあり、勉強を再開していました。そのため、ダブル合格という結果は本当に嬉しく、人生の中でもベスト5に入るような嬉しい瞬間でした。

(6) R1:消費税法

① 当時について

R1年は社会人復帰が確定していたので、既習科目である「相続税法」か「消費税法」のどちらかと思っていました。その上で、ブラックな税理士業界に飛び込むことを決意していたため、学習分量の少ない消費税法を選ぶこととしました。

また、この年は、今年は絶対受かると思っていたため、謎に消費税法を教えるサイトを作りながら勉強をしました。

ここで自分なりの理論を条文から作っていったため、条文の理解が深まるとともに、予備校ではカバーしていない条文も覚えることができ、本試験でも奏功したと思います。

思い返すとこの年の税理士試験はとても不思議な年で、模試では上位30%周辺だったにも関わらず、試験を受ける前から今年は俺は受かる、と確信していました。特に運命的なものを感じたのは、試験会場でこの税理士試験を志すきっかけとなった「当時の彼女」を偶然見かけたことです。

私も相手もお互いの存在に気付きましたが、挨拶も何も交わさずじまいでした。ただ、私はこの時「あぁ、なんでも始まりと終わりはあるんだな。」と思い、今年は最後の税理士試験になることを確信していました。

② 本試験後の手応え

本試験の理論問題では、受験生の1%しか受験をしていないLECの全国模試で出題された内容がそのまま出ました。他の予備校では全く触れられていない論点だったため、知らなければ何を書くべきか?が全くわからないような問題が出題されました。私は大原、TAC、LECの全国模試を全て受けていたため、なんとなくですが書けました。

また、本試験の計算問題も誰も解けないような未出題論点が出ましたが、上手に切り捨てられたため、無駄な思考時間もほとんどなく、スムーズな回答ができました。

そのため、消費税法の試験が終わった瞬間に「やっと税理士試験が終わった」と思うことができ、残暑の厳しい中、清々しい気持ちで一人帰路に立ちました。

合格発表のあった日は、8:30公開のインターネット官報を心臓をばくばくさせながら何度も更新ボタンを押していました。

そして自分の名前を見つけ、長き旅路が終わることとなりました。今は税理士受験生時代には味わうことのなかった「夏の楽しさ」を特別に感じることができます。これは効果不幸かわかりませんが、税理士試験を受けた人だけが感じるものではないでしょうか。

3予備校のリサーチと本試験結果との関係

毎年本試験が終わると、予備校では本試験のリサーチを行い、合格者が出始める点数である「ボーダーライン」と、合格の確率が9割くらいの点数である「合格確実ライン」というものが発表されます。

基本的に予備校のリサーチで意味があるのは「TAC」と「大原」だけですが、この両校の出す「ボーダーライン」と「合格確実ライン」の組み合わせから、どの程度の合格可能性があるか?がわかります。

理論の出来
2校でボーダー以下 1校でボーダー超え 2校でボーダー超え 1校で合格確実超え 2校で合格確実超え
計算の出来 2校でボーダー以下 0% 10% 20% 30% 40%
1校でボーダー超え 10% 30% 40% 50% 60%
2校でボーダー超え 30% 50% 60% 70% 80%
1校で合格確実超え 50% 70% 80% 90% 95%
2校で合格確実超え 70% 90% 95% 97% 99%

なお、私は税理士試験では計算の出来が圧倒的に重要だと思っています。なぜかと言えば、理論の配点は採点者によってばらつきが大きいため、予備校の教える理論の通り記載をしても満点はまずこないと思うからです。目安としては予備校の予想配点の大体6〜7掛けくらいになるんじゃないかと思います。

一方計算は数値が合っていればそのまま点数がきて、最終値まで合っていればおそらく満点も可能だと思います。そのため、計算を極めれば理論を極めている人よりも点数が高くなりやすく、合格しやすいということになります。

5さいごに

税理士試験の官報合格をしてからは、もっぱら実務経験を積むために税理士法人で仕事に明け暮れています。ただ、夏が近づけばあの頃は税理士試験の真っ只中だったなと思い、12月になれば合格発表のシーズンだな、なんて思い出します。

最近は大学院免除により税理士になるのが主流ですが、だからこそ5科目を合格した人はそうでない人と比べて頑張ったんだなぁと思う気持ちが強いです。

税理士になったらやること、考えることはたくさんありますが、とても充実した日々が待っていることは確かです。受験生はもう少しと思い、頑張ってください。