税理士試験の難易度と合格率

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2018年12月14日に税理士試験の合格発表がありました。全体的に例年並の合格率でしたが、最難関科目の法人税法と所得税法についてはやや厳しい年となりました。やはり難易度の高い国家試験であるということなのでしょうか。

本記事では、この税理士試験の「難易度」と「合格率」についてお話をします。

  1. 試験の難易度
  2. 合格率の推移
  3. 合格者の属性
  4. 合格までの所要年数
  5. 科目別難易度

試験の難易度

超難 激難 やや難 普通

税理士試験の難易度は、数多ある資格試験の中でも指折りに難しい試験の1つで、取得難易度が非常に高く資格くらぶの中の分類としては、上から2番目の激難に分類されます。

難易度の理由を列挙すれば次の通りです。

合格までの期間 平均10年と長期に渡る
合格率 各科目とも約10%と低い
試験科目 5科目の合格が必要で各科目とも学習量が多い
勉強時間 4,000~5,000時間と非常に長い
試験形式 論文式である
試験実施回数 年に1度きり

なお、同じような難易度の試験には「不動産鑑定士」や「公認会計士」、「司法書士」などがあります。

近年は受験者数が減少していて、一部の科目で合格率が上がっているものもありますが、受験科目数や最終合格までの受験期間、合格率を考えると「難関試験」の筆頭格と言えます。

合格率の推移

直近10年間の各科目の合格率の推移は次の通りです。

1.会計科目(簿記論・財務諸表論)

簿記論と財務諸表論は、税理士試験の中でも比較的合格率の高い科目となっています。2017年の財務諸表論の合格率に至っては、驚異の29.6%と、まさに当たり年でした。

それでも、例年の合格率は簿記論・財務諸表論ともに10%~20%の水準で推移しています。

基本的には簿記論の方が財務諸表論より合格率が低い年が多いですが、何年かに1度は財務諸表論の方が合格率が低い年があり、2018年はそのような年でした。

2.必須税法科目(法人税・所得税)

法人税法と所得税法は、税理士試験の最難関科目であり、毎年10%~15%の低い合格率で推移しています。特に最近の法人税法の合格率は12%に満たない厳しい年が続いています。

他の税法科目と比べて、この2つの税法科目は年度による合格率の差は小さく、当たり年のようなものはありません(逆に厳しい年があります。)

なお、この法人税法と所得税法は、税法科目としてどちらか1つを合格する必要がありますが、暗記量が膨大であり、計算も深堀りすればいくらでもできる科目のため、税理士試験の最難関科目として位置づけられています。

筆者の周りには科目免除を受けるために、大学院へ行く人がいるほどです。もし、金銭的・時間的余裕があれば大学院卒という選択肢も考えてみても良いかもしれません。

3.ミニ税法(相続・消費・固定)

相続税と消費税の合格率は、毎年安定して推移をしていてだいたい12%~14%の合格率で推移をしています。

固定資産税については、計算の出来不出来が合格率に影響しやく、年によって合格率に差が出ています。合格率の高い年では15%を超える年がある一方で、低い年では10%近くまで下がります。

4.ミニ税法(酒税・国徴・事業・住民)

酒税法、国税徴収法、事業税は毎年12%~13%前後で比較的、安定的に推移をしています。

一方住民税は、年度によって合格率の差が大きく、高い年と低い年とでは10%近くも差が出ます。以前は「住民税はおいしい科目」と言われていましたが、最近はそうでもなくなってきています。

合格者の属性

国税庁HPが公表をしている税理士試験の合格者の属性を見ると、若い人ほど合格しやすいということが分かります。

1. 学歴別合格率

学歴の違いとしては、在学中の大学生の合格率が突出して高く、次いで高卒 > 大卒 > 専門卒 > 短大卒という順番となっています。

年度 大学生 高校卒 専門卒 短大卒 大学卒
H30年
2018年
21.4% 17.9% 15.1% 9.6% 14.7%
H29年
2017年
29.7% 21.4% 17.2% 15.6% 19.8%
H28年
2016年
22.0% 18.1% 13.7% 10.0% 15.5%
H27年
2015年
29.8% 21.9% 15.0% 13.3% 17.3%
H26年
2014年
26.1% 17.9% 14.5% 11.2% 16.4%

2. 年齢別合格率

年齢の違いによる合格率は顕著で、年齢が若いほど合格しやすく、年齢が高くなるほど合格率が低くなります。25歳以下と41歳以上とでは実に2倍~3倍の合格率の差があります。

年度 25歳以下 26-30歳 31-35歳 36-40歳 41歳以上
H30年
2018年
27.0% 18.1% 16.8% 14.3% 10.0%
H29年
2017年
34.0% 24.5% 21.6% 18.2% 13.3%
H28年
2016年
26.5% 17.3% 17.1% 15.1% 10.5%
H27年
2015年
32.4% 21.8% 19.2% 16.0% 10.4%
H26年
2014年
28.9% 20.7% 17.1% 14.1% 9.9%

合格までの所要年数

下記のチャートは平成29年度官報合格者(795人)が「初めて科目合格をした年から官報合格までにかかった期間」をグラフ化したものになります。

出典元:税理士試験の合格まで何年かかるのか?-資格Hack

期間 1~3年 4~6年 7~9年 10~12年 13~15年 16~18年 19~21年 22~24年 25~27年 28~30年 31~33年 34~36年 37~39年
人数 47人 215人 179人 124人 83人 58人 30人 29人 8人 10人 8人 2人 2人
割合 5.9% 27.0% 22.5% 15.6% 10.4% 7.3% 3.8% 3.6% 1.0% 1.3% 1.0% 0.3% 0.3%

合格までにかかった期間として、一番多いのが4年~6年で全体の3割弱います。次いで、7年~9年10年~12年と続きます。

なお、5年以内の合格率は約25%、10年以内の合格率が約60%となっています。

もちろん、途中休憩をしたり、学生時代に簿財を取っておいて、社会人になってから勉強を再開したりという人もいると思いますので、一概にこの期間が合格必要期間とは言いませんが、一般的には合格までには10年くらいかかるということを理解しておく必要があります。

科目別難易度

科目別の難易度を示すと下記の通りです。

科目 合格レベルへの到達難易度 合格の難易度
簿記 ★★ ★★★
財表 ★★★ ★★
法人 ★★★★★ ★★★★★
所得 ★★★★ ★★★★
消費 ★★★
相続 ★★★★ ★★★
固定 ★★★

なお、科目の選び方や標準的な勉強時間などは次の記事を参考にしてください。

1.簿記論

簿記論の難易度は単独の試験であれば、やや難の難易度になります。

税理士試験の簿記論の範囲は、商業簿記のみのため範囲はそれほど広くありませんので、合格レベル(合格可能性のある母集団)に達するのはそれほど大変ではありません。

ですが、試験問題では細かい内容の知識や計算パズル的な問題も多く出題されるため、ハマり易い科目です。最後の1科目が簿記論と言う人もいるくらいです。

● 日商簿記1級との比較

税理士試験の簿記論と日商簿記1級の難易度はよく比較の対象となります。個人的には、どちらも難しいと思いますが、どちらが難しいか?と聞かれれば簿記論の方が難しいと答えます。

理由は「問題の難易度」と「受験生のレベル」が違うからです。

簿記1級は簿記論には無い「原価計算」がありますが、原価計算自体はワンパターンな問題と言えます。一方、両方で出題される商業簿記については、簿記1級の問題は税理士試験の簿記論のものと比べると簡単です。

次に受験生のレベルですが、税理士試験の簿記論の受験生は、簿記2級合格者から簿記1級合格者が、1年に1度の試験に向けて勉強をしてきた人達です。

一方、簿記1級の受験生は、簿記2級合格者が半年ほどの間、集中をして勉強をしてきた人達です。したがって、受験生のレベルにはそれなりの差があります。

以上を踏まえると、両者の合格率は同じくらいですが、税理士試験の簿記論の方が簿記1級よりは難しいと言えます。

なお、税理士試験の簿記論と日商簿記1級について、いくつかの項目を比較すれば下記の通りとなります。

簿記論 比較項目 簿記1級
商業簿記のみ 範囲 商業簿記・工業簿記
出題無し 理論 出題あり
普通~難しい 設問の難易度 優しい~やや難しい
14.1% 平均合格率 9.6%
簿記2級~簿記1級 受験生のレベル 簿記2級
1回 1年の開催回数 2回

※ 平均合格率は直近10回の平均合格率です。

2.財務諸表論

財務諸表論の難易度は単独の試験であれば、やや難の難易度になります。

税理士試験の財務諸表論の範囲は、公認会計士試験にある会計学のような「学術的なもの」ではなく、「実務寄りのもの」が出題されます。

そのため、会計学であれば各会計処理に対する複数の考え方を理解する必要がありますが、財務諸表論では、なぜその会計処理を制度会計が採用しているのか?という1つの考え方を理解するだけで十分のため、理論的難易度はやや低めです。

また、計算は税理士試験の中で1番パターン化された問題が出題されるため、簿記論よりも高得点を取るのが安定します。

とは言え、理論ボリュームも多く(簿記1級のそれとは比較になりません)、計算にもそれなりの勉強時間が必要になります。

3.法人税法

法人税法の難易度は単独の試験であれば、になり、税理士試験で一番の難易度を誇ります。

法人税法は、理論と計算ともに学習量が多く、そもそも合格レベルに達するのが非常に困難です。

特に理論については、暗記する分量が300ページ近くあり、理解も必要となるため、初学の受験生の何割かは1年で合格レベルに達することができません。

4.所得税法

所得税法の難易度は単独の試験であれば、になり、法人税法に次いで難易度の高い科目です。

所得税法は、法人税法に次いで理論のボリュームが多く、計算も初めはとても理解し辛く、覚えるべきことも多いため、法人税法と同じく合格レベルに達するのが困難です。

5.消費税

消費税法の難易度は単独の試験であれば、普通になります。レベル的には簿記1級よりも劣ります。

消費税は覚えるべき理論の範囲が狭く、計算もパターンはいくつかありますが、比較的あっさりしていて、時間とやる気があれば3ヶ月で合格レベルに達します。

ただし、消費税は「納税義務者の判定」や「簡易課税制度の適用の判定」「課税売上割合」などの計算の序盤で判定・算出する内容が重要で、これを間違えると、芋づる式に以降の問題を間違えてしまうため、ギャンブル的要素の高い科目です。

また消費税法の本試験問題は、他の科目と比べて判断に迷うような問題が出題される傾向にあるため、たとえ成績上位者であっても取りこぼす人が多い科目でもあります。

6.相続税

相続税の難易度は単独の試験であれば、やや難~難になり、所得税法に次いで難易度の高い科目です。

相続税は、いわゆるミニ税法(法人税法と所得税法以外の税法科目の通称)の中では一番、理論ボリュームが多く、計算も覚えるべき項目が多いため、合格レベルに達するのがなかなか困難です。

ただし、相続税法は比較的ベタな問題が出題される傾向にあるので、成績上位者が安定して合格をしやすい科目です。

7.固定資産税

固定資産税の難易度は単独の試験であれば、普通であり、この7科目の中では一番難易度の低い科目です。

なぜなら、固定資産税は、消費税法と同じく理論の範囲が狭く、計算については税理士試験の中で一番単純で簡単だからです。

ただし、固定資産税の計算は、税理士試験の中では珍しく満点が狙える試験であり、逆に言うと、満点に近い点数でなければ、合格には届きません。

したがって、序盤のワンミスが即アウトに繋がる怖い科目でもあります。

最後に

税理士試験は、資格的には公認会計士試験からは劣後の関係にあります。なぜなら、公認会計士は登録をすることで税理士になれますが、逆はできないからです。

ですが、試験自体の難易度は同じくらいか、税理士試験の方が少しハードだと思います。

そのため、2~3年という単位で1日当たり8時間以上の勉強時間を確保することができる人(特に学生)の場合は、短期集中型の公認会計士試験を受験することをお勧めします。

一方、社会人の場合はほとんどの場合、それほどの時間を確保できる人はいないでしょうから、税理士試験を選択することになりますが、やはり合格率10%前後の試験を5科目突破するというのは、想像以上に大変なものです。

正直、1科目1科目の試験のレベルはそこまで難易度が高いものではありません。

しかし、だからこそ、多くの受験者がそれなりに仕上がっていることになり、その中で10%前後の合格率というのは見かけ以上に難易度の高い試験になっていると言えるのです。

税理士試験を目指すと、大手予備校を利用した場合は全ての科目を1発合格したとしても、だいたい100万円近くの予備校代がかかります。

また、最低でも3年間は自由な時間がなくなるため、社会人で家族がいる方は家族にはとても迷惑をかけますし、会社にも多少なりとも迷惑をかけるでしょう。

たまに2年で合格する社会人もいますが、そういった人は非常に稀で、人一倍努力をして、かつ、運が良かった人です。100人の社会人合格者がいてもそんな人は1人いるかどうかです。

そのような、難易度の高い資格を目指すというのであれば、いかに短期合格を目指すか、そして、もし不合格であってもモチベーションをどれだけ維持できるかがとても重要なことになります。

長丁場になり、精神力も試される試験ですが、弁護士や公認会計士などの才能や運が大きく作用する試験とは違って、努力が実を結びやすい試験でもあります。諦めないという気持ちが大切である、と最後にお伝えして終わります。

概要 科目選び 予備校 勉強方法 難易度 年収