簿記2級の難易度と合格率と勉強方法

2019年3月11日
公認会計士 税理士 US-CPA 簿記1級 簿記2級 簿記3級

ここでは日商簿記2級の難易度、合格率、勉強方法、資格としての価値など、様々な視点から簿記2級を解説します。

目次

  1. 難易度
  2. 合格率の推移
  3. 勉強時間
  4. 勉強スタイル
  5. 試験の概要
  6. 資格の価値

試験の難易度

超難 激難 やや難 普通

簿記2級は日本商工会議所が主催する試験で、年に3回(2月・6月・11月)実施されています。試験では商業簿記工業簿記の基本的な知識理解を問う問題が出題されます。

簿記3級が「簿記のこと何となく知ってますよ」というレベルだとすれば、簿記2級は「会社で記帳処理できますよ」というレベルです。

なお、簿記2級の試験に受験資格は無いため、受験料4,630円(税込)を払えば誰でも受けることができます。

肝心の簿記2級の難易度ですが、資格くらぶの分類としては普通にカテゴライズされます。(理由は下記)

合格率 20%前後とやや低い
試験形式 記述式である
試験範囲 商業簿記工業簿記
勉強時間 150時間~200時間
試験実施回数 年に3回ある

同じような難易度の試験には「FP2級」や「基本情報処理技術者」などがあります。

[blogcard url=”https://licenser.club/fp2-all-about/”]
[blogcard url=”https://licenser.club/it-base/”]

合格率の推移

簿記2級の直近10回の合格率の推移は下記のグラフの通りです。

実施回によって合格率にやや差がありますが、直近10回の平均合格率は22.0%となっています。

合格率が異常に高い第146回の合格率を除けば、毎回15%~20%くらいの合格率で推移しています。

勉強時間

簿記2級の合格に必要な勉強時間は、簿記3級合格者のレベルを前提とすれば、だいたい150時間~200時間が目安になります。

これは1日1~2時間の勉強を3~4ヶ月続けるくらいの勉強量です。

簿記2級では商業簿記と工業簿記から出題されるため、両方の勉強をする必要がありますが、ほとんどの人が工業簿記の方が多く学習時間を確保する必要があるでしょう。

なぜなら、簿記2級の商業簿記は簿記3級と比べてそれほど大きな違いはありませんが、工業簿記は、初学の科目であり、分かりにくい科目だからです。

したがって、簿記2級の勉強に当たっては「工業簿記」から勉強を開始する方が効率的に勉強できると思います。

なお、スケジュール感としては、インプット基礎演習を工業簿記で1ヶ月半~2ヶ月、商業簿記で1ヶ月~1ヶ月半を目安として3ヵ月で完了し、残り1ヶ月は過去問に集中するといったイメージが良いと思います。

勉強スタイル

● 勉強スタイルの種類

簿記2級の勉強スタイルには、大きく分けて次の4つの勉強スタイルがあります。

  1. 独学
    → 市販テキスト・問題集:約7,000円
  2. web予備校
    → スタディング:17,980円
  3. 通信講座
    → ユーキャン:49,000円
  4. 大手予備校
    → TAC or 大原 or LEC:6~8万円

● 基本は独学

筆者の個人的な感想から言えば、簿記2級については「独学一択」で良いと思います。

理由は、簿記2級の場合、市販の教科書や問題集が充実した出来になっているからです。

特に大原から出版されているものは優秀です。

個人的には大原のものが一番解説が分かりやすいと思いますし、また、皆が悩むような論点については、動画による解説もあるため、質問のできない独学者の学習効率が高めてくれます

商業簿記
テキスト
工業簿記
テキスト
商業簿記
問題集
工業簿記
問題集
過去問

● 時間の無い人はスタディング

しかしながら、人によっては机の上でじっくり勉強をする時間がなく、通勤・通学中の隙間時間を使いたいという人もいると思います。(特に社会人はそう思う人が多いかもしれません。)

このような状況にある人であれば「スタディング」が一番良いと思います。

理由は、スタディングは受講生サイトが優秀で、他の予備校のものと比べて圧倒的に使いやすく、いつでも、どこでも学習ができるように作られているからです。

また、受講料も独学と比べると高いですが、大手予備校や通信講座のそれと比べると格段に安く、「講師による解説があること」「受講生サイトが使いやすいこと」などを考慮すれば、独学以外の選択肢として有効です。

興味があれば、サイトで会員登録をすることをお勧めします。無料でいくつか講座を受講できます。

● 大手予備校はどうか?

基本的に簿記の基礎知識(簿記2級くらいまでの知識)であれば、どこで学んでも一緒です。どの予備校も同じことを教えています。

もちろん、大手予備校はサービスが充実しているため、講師による説明があったり、質問ができたりと優れている点もあるため、お金に余裕があれば大手予備校という選択肢もありです。

とは言え、簿記2級は「絶対評価の試験」であるため、合格基準点(70点)が取れれば良く、それは独学でもweb予備校でも十分に可能です。

したがって、簿記2級程度であれば、大手予備校を利用する必要はあまりないと思います。

ちなみに税理士や会計士などの相対評価の試験であれば、予備校の選択が試験の合否に大きく影響することもあります。

● 学習のポイント

簿記2級の学習のポイントは、2点あります。概念的なことですが、重要ですので一読してみてください。

商業簿記について

商業簿記で重要なのが「書いて覚える」ということです。

簿記2級になると、簿記3級と比べて勘定科目の数がドンと増えます

この勘定科目はそれぞれにしっかりと意味があるため、しっかりと区別をして覚える必要があります。

ところが、Webサイトなどで「ふむふむ」と理解をしたつもりでいても、実際に手を使って仕訳を切ると、なかなか思うように勘定科目が出てこないということが出てきます。

そんな風にならないためにも、基本的に簿記は「書いて学ぶ学問」であるため、問題演習ではできるだけ手を動かして学ぶようにしましょう

工業簿記について

工業簿記については「各原価計算の意味をしっかりと区別して覚える」ことが重要です。

そもそも、工業簿記の内容自体は至極単純です。ただ、多くの受験生が工業簿記を苦手としています。

原因はたった一つ。それは、多くの受験生が原価計算や差異分析で出てくる「同じような言葉」を混同して覚えているからです。

例えば、原価計算の種類には「標準原価計算」と「実際原価計算」と「直接原価計算」の3つがあります。

さらに、実際原価計算については、「個別原価計算」と「総合原価計算」の2つがあり、総合原価計算には「単純」もあれば「工程別」もあるなど、何種類もの原価計算があります。

この原価計算の種類が工業簿記の難易度を上げていると言って過言ではありません。

したがって、工業簿記の勉強に当たっては、各原価計算の目的を理解し、その上で、それぞれがどう違うのか?を学ぶようにすると良いと思います。

試験の概要

● 受験資格

無し

● 受験料

4,630円(税込)

● 受験申込み

商工会議所を通じて申し込み(インターネットでの申込みが主流)

● 試験科目

商業簿記・工業簿記

● 合格基準

70%以上

● 試験時間

120分

● 試験の日程

毎年3回試験があります。

申込み 実施 合格発表
前年12月中旬から1ヶ月 2月下旬 3月中旬頃
3月下旬から1ヶ月 6月中旬 6月下旬
9月上旬から1ヶ月 11月中旬 12月中旬

● 参考

簿記2級|商工会議所HP

簿記2級の価値

簿記2級の価値は、あなたが何歳なのか?どんな仕事をしているのか?今後何を目指しているのか?によって異なります。

そのため、いくつかの立場に分けて「簿記2級の有用性」についてお話をしたいと思います。

● 大学への進学を考えている人

あなたが高校生で、大学へ推薦入学で進学をしようと考えているようであれば、簿記2級は非常に力になります。「経済学部」や「経営学部」へ進学を考えているような場合はより価値があるでしょう。

理由は次の3点です。

  • 資格を取得するための努力ができるという人間性が評価されるため
  • 高校生にとって簿記2級はレベルが高いため、他の受験生と差別化が図れるため
  • 経済学部や経営学部を目指す志望理由と合致するため

面接では「何故この学部を選んだのか?」が聞かれますが、この問いかけに対する返答はとても重要です。(なぜなら目的がしっかりしている人は、前向きで真面目に授業に参加する人が多いからです。)

この時に、簿記2級を受験した経験を含めたストーリーによる返答は面接官が納得しやすく、好印象を与えることができます。

また、高校生にとっては難易度の高い簿記2級の合格は、他の受験生と大きく差をつけることができます。

● 新卒で就職活動をしている人

経理スタッフとして新卒で働きたいと思っている場合は簿記2級はかなり強い味方になります。

もし大学生で、有名企業に総合職で就職をしたいと思っている場合にも簿記2級はそれなりにアピールポイントになります。(1級まで持っていればかなり強力な武器になります。)

● 経理スタッフとして転職を考えている人

経理スタッフとして転職活動をする場合には、簿記2級に合格をしている場合は、年齢にもよりますが、30代中盤までであれば、会計事務所や企業の経理部門で働くことができると思います。

基本的に、会計事務所や企業の経理部門では、若い人が重宝される傾向がありますので、経理スタッフとして働く希望があれば、20代のうちに1~2年ほど働いておくことをお勧めします。

経理スタッフとしての勤務経験が1~2年(欲を言えば3年)あると、40代になっても(事務所によっては50代でも)会計士事務所や税理士事務所で働くことができます。

なお、20代で関東圏または関西圏であれば、下記のサイトで登録をすれば、どこかしらの会計事務所で就職をすることができると思いますので、興味のある方はチェックしてみてください。



● 家計に役立たせたいと思ている人

簿記2級の知識が家計に役立つかと言えば「NO」です。(たとえ1級でもNOです。)

基本的に簿記というのは「複式簿記で取引を記帳する行為」なので、家計のような単純な会計に活かすような代物ではありません。

家計に活きる資格というのは、FP技能士だったり、宅建士といった知識です。

[blogcard url=”https://licenser.club/fp3-all-about/”]

● 他の資格の足掛かりにと思ている人

他の資格を取得するに当たって、手始めに何か資格を取ろうと考えている人にとって、簿記2級はかなり有効です。

例えば、簿記2級まで取得していれば「不動産鑑定士」や「中小企業診断士」などの高難易度資格の試験でも、かなり優位性をもって学習をスタートすることができます。

さいごに

簿記2級は簿記3級と違って、大きく「実務の世界」や「高難易度試験」に近づく資格と言えます。

前述の通り、簿記2級を取ると中小企業診断士不動産鑑定士などの難関試験では有利になりますし、会計事務所や税理士事務所での「税務スタッフ」としての就業機会にも恵まれるようになります。

ただし、簿記2級は3級よりも勉強時間もぐっと長くなり、また、難易度も4~5倍くらい難しくなりますので、心してトライすると良いと思います。

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