簿記3級の難易度と合格率と勉強方法

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日商簿記3級」は年間受験者数が25万人超というマンモス資格であり、簿記を始め、ビジネス資格の登竜門的な資格となっています。

この記事では、その簿記3級の難易度や合格率、勉強スタイル(独学or予備校)、資格としての価値などをご紹介します。

– 目次 –

  1. 難易度
  2. 合格率の推移
  3. 勉強時間
  4. 勉強方法
  5. 試験の概要
  6. 簿記の価値

試験の難易度

超難 激難 やや難 普通

簿記3級は日本商工会議所が主催する検定試験で、年に3回(2月・6月・11月)実施されています。試験では商業簿記の初歩的な知識理解を問う問題が出題されます。

なお、簿記3級の試験に受験資格は無いため、受験料2,800円(税込)を払えば誰でも受けることができます。

肝心の簿記3級の難易度ですが、資格くらぶの分類としては一番難易度が易しいにカテゴライズされます。(理由は下記)

試験形式 記述式である
試験範囲 狭い
勉強時間 40時間~80時間と短い
試験実施回数 年に3回ある
合格率 40%前後と高め

同じような難易度の試験には「FP3級」や「ITパスポート」などがあります。

合格率の推移

簿記3級の直近10回の合格率の推移は下記のグラフの通りです。

実施回によって合格率にやや差がありますが、直近10回の平均合格率は43.7%となっています。

ちなみに、以前は合格率が20%台のときもありましたが、ここ最近の合格率は40%~55%と上昇傾向にあり、直近の151回(2019年2月24日)ではここ最近では最高の55.1%という高い合格率でした。

合格率40%の意味

合格率40%が高いか、低いかを考える前に1つ質問です。

Q. 受験生の何割がちゃんと勉強をしてきていると思いますか?

筆者も長らく色々な試験を受けてきましたが、感覚的には5割前後が相場です。独占業務のある国家試験で5割から6割、検定資格であれば4割前後くらいです。(どの試験を受けに行っても、白紙答案の多さにいつも驚きます。)

したがって、簿記3級の試験会場に来ている半分以上の受験生がそもそも論として、合格するための勉強量が足りていません。(というかしていません)

そのため、合格率が40~50%の試験というのは、ちゃんと勉強をしてきた人はほぼ受かる試験と言えるのです。

勉強時間

簿記3級の合格に必要な勉強時間は、
① 学習スタート時の知識レベル
② 経理実務の経験の有無
によって多少異なりますが、簿記初学者の場合は、だいたい40時間~80時間を目安に考えてもらうと良いと思います。

また、経理実務の経験者の場合は、日常的に仕訳をしていると思いますので、インプットもアウトプットも大幅に減ると思いますので、20~40時間くらいで合格レベルに達すると思います。

したがって、初学者であれば1日1~2時間の勉強を1~2ヶ月ほどすることで合格レベルに達します。

同様に、経理実務経験者であれば1日1~2時間の勉強を1ヶ月前後することで合格レベルに達します。

なお、稀に数学に強い人会計的センスのある人会計の予備知識のある人だと、1週間くらいでマスターしてしまうこともあります。

勉強スタイル

簿記3級の勉強スタイルには、大きく分けて次の4つの勉強スタイルがあります。

  1. 独学0円~4,200円
    市販テキスト(無料サイト)・問題集
  2. web予備校2,980円
    スタディング
  3. 通信講座39,000円
    ユーキャン
  4. 大手予備校15,000円~20,000円
    TAC or 大原 or LEC

● 結局どれが良いのか?

昔から簿記3級の勉強スタイルの王道は「独学」です。なぜなら、簿記3級は難易度の低い資格のため、わざわざ高い受講料を払うまでもないからです。

一方で、独学で学習をしたことが無い人に多いのが途中リタイヤです。独学の場合は、(当たり前ですが)自分でテキストを読み、理解をし、学習を進めることになります。

分からないところが出てきても、誰も教えてくれませんので、講義を聞きながら学ぶ予備校で学習する場合と比べて、途中挫折が多くなる傾向にあります。

そうは言っても、大手予備校通信教育の受講料は高過ぎるため、選択しようがありません。

ところが、最近になって「スタディング」という格安の受講料web予備校が出現したおかげで、簿記3級の勉強方法の選択肢として「独学」以外に「web予備校」という選択肢ができました。

したがって、以降は「独学」と「web予備校」を中心にそれぞれの勉強方法をお話します。

1. 独学という選択

再掲になりますが、簿記3級の勉強スタイルの主流は「独学」です。したがって、会計事務所に就職するなどの特別な事情が無ければ基本的に「独学一択」で間違いありません。

また、最近はインターネット上の簿記3級の無料サイトも充実しているため、下記のようなサイトを利用すれば、最悪0円でも学習をすることができます。

しかしながら、筆者の個人的意見としては、結局、次の市販テキスト問題集を購入して学習をするのが簿記の確実な合格簿記力アップには有効であると感じています。

テキスト 問題集 過去問
約1,200円 約1,300円 約1,700円

ちなみに、簿記3級に関するテキストと問題集は色々なところから出版されていますが、個人的には大原のものが優れていると思っています。

理由は2点あり、1点目は税理士試験の簿記論でもそうですが、内容が一番分かりやすいと思うからです。

2点目は、これが意外と良く「つまづきやすい論点について、大原のHPに解説動画が置いてある」という点です。

この2点により、独学であっても、予備校並みの環境下で勉強をすることができるため、大原の市販テキストを利用するのが一番良いと思っています。

過年度の問題集はOK?

基本的に簿記3級に出題される論点は基礎中の基礎であり、その内容は不変のため、過年度のものであっても多くの場合利用することができます。

しかしながら、2019年4月から出題範囲が大きく改訂されるため、それ以前のテキストや問題集は使えなくなると思ってもらった方が良いと思います。

具体的には、今までは「個人事業主」を対象とした商業簿記の問題が出題されていましたが、2019年の6月以降の試験では「株式会社」を対象とした問題になります。

また、IT技術の発展・普及により、今では使われなくなった会計処理を範囲から除外するとともに、逆に利用頻度の高まった会計処理を簿記2級から簿記3級へ出題範囲を変更するなど、ここ最近では最も大きな出題範囲の改訂がされました。

なお、詳しい改正点の説明については、下記の商工会議所のHPから確認をしてください。

出題範囲の改正について – 商工会議所HP

● なぜ市販問題集を利用するのが良いのか?

なぜ市販のテキストと問題集を利用して学習することを勧めるのか?と言うと、私は簿記は実際に手を動かしながら「書いて学ぶ学問だと思っているからです。

そもそも、資格試験の中には大きく分けて2種類の学問があります。1つは簿記のような書いて学ぶ学問。そして、もう1つは情報処理技術者試験のような読んで学ぶ学問です。

この2つの大きな違いは、理解するだけで解けるかどうか?です。

もっと具体的に言えば、試験の形式が「記述式」と「択一式」のどちらなのか?ということです。

例えば、ITパスポート試験のような択一式の試験では、内容を理解していれば正解を導き出せるため、web上の無料サイトを利用した学習と相性が良い試験と言えます。

一方、簿記のような記述式の試験では、例えば勘定科目名を覚えたり、仕訳処理を覚えたりする必要がありますが、これらは実際に書きながら学習をする方が記憶の定着に繋がり、学習効率が高い勉強ができます。

また、金銭面についても、市販テキストと問題集を購入しても総額で4,000円位ですし、無料サイトにはないメリットもたくさんあるため、あえて無料にこだわる必要はないと思います。

どうしても無料サイトにこだわるのであれば、インプットは無料サイトで学び、過去問演習のようなアウトプットは市販問題集で学ぶのが良いと思います。

● 市販テキストと無料サイトを比較

市販テキストと無料サイトのそれぞれのメリット&デメリットを列挙すると下記のようになると思います。

市販テキスト等 無料サイト
メリット
  • パッと開けばすぐ勉強ができる
  • 書いて学ぶ簿記には最適
  • 情報が見開き2ページに収まるように配置されているため、情報を追いやすい
  • 完全無料
  • 仕事中に学習できる
デメリット
  • お金がかかる
  • 広告が多い→集中力が散漫になる
  • 読んだだけでは実力にならない
  • 勉強をするたびにスマホなどをOnする必要がある
  • スマホだと画面が小さいため見にくい
● 財務・経理スタッフとして転職したい場合

なお、会計事務所や税理士事務所の財務・経理スタッフとして働きたいと思っている人は、簿記2級まで一気に取ることをお勧めします

なぜなら、税務・経理スタッフとして働くためには、簿記2級を要件とする事務所が多く、実際に簿記2級くらいの知識が無いと仕事にならないからです。

簿記2級についても、主流は「独学」ですが、最短で取りたいようであればweb予備校を選択するのが良いと思います。

● 簿記の勉強ステップ

簿記3級の勉強に当っては次の学習ステップを意識して学ぶと、学習スピードの向上理解力の向上につながると思います。

STEP①:簿記を知る

簿記を知らない人は、まずは簿記とは?を学びます。例えば「貸方・借方」の意味や、「複式簿記」の意味、「仕訳」の意味などがそうです。

STEP②:簿記の流れ(簿記一巡)を知る

簿記が伸びる人伸びない人との差はこの「簿記一巡を理解しているか否か」で決まると言っていいと思います。

– 簿記一巡 –
流れ 手続き 内容 簿記3級の出題
期首振替 振替仕訳
期中取引 仕訳帳への記入
総勘定元帳への記入
決算整理 TB作成
決算整理・修正仕訳
TBの作成
決算振替 帳簿のしめ切
財務諸表の作成 BSやPLの作成

簿記3級では、この簿記一巡の理解が乏しくても合格をすることができますが、簿記2級や1級、税理士試験の簿記論に早く合格をする人は、この簿記一巡をしっかり理解している人が多いです。

STEP③:勘定科目を覚える

簿記の世界では、日常生活でいう「お金」を現金預金、現金、定期預金、普通預金、当座預金、当座など、様々な勘定科目で表示されます。

そして、それぞれの勘定科目が持つ意味も異なります。

したがって、それぞれの勘定科目名称とそれぞれの意味を理解しましょう。

STEP④:仕訳のルールを覚える

次に、商取引を帳簿に記帳する処理のルールを覚えます。例えば固定資産の減価償却であれば、次のような感じです。

(借方) 減価償却費 100   (貸方) 建物100

この仕訳のルールを覚えるときは、都度、簿記一巡のどの部分を学習しているのかを振り返りながらすると、簿記力がぐっと上がります。(ちなみに上記の減価償却の仕訳であれば決算整理・修正仕訳で行われます。)

STEP⑤:集計するルールを覚える

最後に仕訳帳から試算表へ集計するルールを覚えます。

家計で言えば、仕訳帳に記入した状態というのは、家計簿に「野菜を100円で購入した」と記入しただけの状態ですので、一定期間ごとに集計をする必要があります。

この集計したものを「試算表」と言い、この試算表から外部に報告するために作成したものを「財務諸表」と言います。


ざっくりとしたイメージですが、このような流れで勉強することをイメージしておくと、学習効率が高くなると思います。

試験の概要

● 受験資格

無し

● 受験料

2,800円(税込)

● 受験申込み

商工会議所を通じて申し込み(インターネットでの申込みが主流)

● 試験科目

商業簿記

● 合格基準

70%以上

● 試験時間

120分

● 試験の日程

毎年3回試験があります。

申込み 実施 合格発表
前年12月中旬から1ヶ月 2月下旬 3月中旬頃
3月下旬から1ヶ月 6月中旬 6月下旬
9月上旬から1ヶ月 11月中旬 12月中旬

● 参考

簿記3級|商工会議所HP

簿記3級の価値

簿記3級の価値は、あなたが何歳なのか?どんな仕事をしているのか?今後何を目指しているのか?によって異なります。

そのため、いくつかの立場に分けて「簿記3級の有用性」についてお話をしたいと思います。

● 大学への進学を考えている人

あなたが高校生で、大学へ推薦入学で進学をしようと考えているようであれば、簿記3級は力になります。「経済学部」や「経営学部」へ進学を考えているような場合はより価値があります。

理由は次の2点です。

  • 資格を取得するための努力ができるという人間性が評価されるため
  • 経済学部や経営学部を目指す志望理由と合致するため

面接では「何故この学部を選んだのか?」が聞かれますが、この問いかけに対する返答はとても重要です。(なぜなら目的がしっかりしている人は、前向きで真面目に授業に参加する人が多いからです。)

この時に、簿記3級を受験した経験を含めたストーリーによる返答は面接官が納得しやすく、好印象を与えることができます。

例えば「ニュースを通じてもともと好きだった経済ですが、簿記3級を勉強してからは、さらに経済が身近に感じるようになり、将来は経済に携わる仕事に就きたいと思うようになりました。」といった返答はどうでしょう?

納得感のある回答ですし、真面目に将来のことを考えているんだな、という印象を受けませんか?

● 新卒で就職活動をしている人

新卒で経理スタッフとして働きたいと思っている場合には簿記3級は有効です。できれば簿記2級は欲しいところですが、新卒であれば3級であっても評価をされるでしょう。

一方、あなたが大学生で、有名企業に総合職で就職をしたいと思っている場合には簿記3級は非力です。

なぜなら、大学生の場合、簿記1級まで取得している人もいますし、人によっては公認会計士試験に合格をしている人もいるからです。

● 経理スタッフとして転職を考えている人

経理スタッフや税務スタッフとして転職活動をする場合には、簿記3級は非力です。

事業会社の経理スタッフや税理士事務所や会計士事務所の税務スタッフとして働く場合は、ほとんどの事務所が簿記2級以上またはその同等レベルのスキルを求めています。

したがって、20代の前半でもない限り、簿記3級が評価されて採用に至るということはほとんどないと思います。

● 家計に役立たせたいと思ている人

簿記3級の知識が家計に役立つかと言えば答えは「NO」です。

基本的に簿記というのは「複式簿記で取引を記帳する行為」なので、家計のような単純な会計に活かすような代物ではありません。

家計に活きる資格というのは、FP技能士だったり、宅建士といった資格の知識です。

● 他の資格の足掛かりにと思っている人

他の資格を取得するに当たって、手始めに何か資格を取ろうと考えている人にとって、簿記3級は有効です。

例えば、簿記の知識が生きる国家資格には税理士や公認会計士のほか、不動産鑑定士や中小企業診断士などがあります。

したがって、簿記3級をとりあえず学んでおくということは、将来の高難易度資格の取得に当たって有効になります。

ただし、高難易度資格の場合は、簿記2級以上の知識がないとほとんどアドバンテージにならないため、これらの高難易度資格を目指す場合は簿記2級まで取得することを視野にいれておくと良いと思います。

さいごに

簿記3級は会計の基本であり、税理士や公認会計士といった会計系の資格以外にも活かすことができるビジネス資格の登竜門的な資格となっています。

実際に簿記3級を取ると、中小企業診断士税理士会計士不動産鑑定士ITストラテジストなど、様々な高難易度資格の学習の際に、学習アドバンテージを感じることでしょう。

また、簿記3級を取得し、簿記2級まで取得すれば、会計事務所や税理士事務所で「税務スタッフ」として働くチャンスにも恵まれると思います。

資格の中では簡単な資格ですが、より難易度の高い資格を目指す場合の基本となる資格ですので、単なる合格を目指すのではなく、満点合格を目指して学習に励むことをお勧めします。

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